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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。

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母の最後の79日間。
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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(01)

11月15日、母、老健から退所。
バスで迎えに行き、介護タクシーで車椅子のまま
自宅まで運んでもらう。

老健のリハ担当の話では、
階段もなんとか自力でのぼれるという話だったが、
数段のぼった段階で無理、とのことで、
介護タクシーの方に車椅子に移してもらい、
上まで運んでもらった。

母は今年3月末に尿路感染症で発熱して
ふらついて転倒してから、
もう独居は心配という主に弟の判断で、
老健に入所し

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(02)

11月16日。
デイサービスに行く予定だったが、
36.9度とやや体温が高く、
座ることも難しい状態。
デイサービスに電話を入れて、行けない旨を伝え、
私自身も、この日はミーティングの予定を
入れていたけれど、キャンセルする。

パン粥やヨーグルトなど、食欲は旺盛。
だが、目を閉じてスプーンでかき込むような感じで、
もうお箸はすっかり使えない状態になっていた。

施設に入ることは、安全とひきかえに

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(03)

11月17日。
母の体温は36℃台に下がって、
からだも昨日よりは少し動くようだ。

好評のパン粥と栄養ドリンク、
ヨーグルトの朝食を自分で食べる。
が、目を閉じて食事をする習慣は、
そうかんたんには直らないようだ。

午前10時に訪問看護の看護師さんが到着。
熱が上がっていて心配に。
昼食は先日スーパーで買いだめしておいた、
キューピーのレトルトやわらか食とお粥、
そしてやわらかく煮ておいた大根

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(04)

11月18日。
朝から母の体温が高い。37.2℃くらい。
パン粥、柿とバナナとヨーグルトのスムージー、
栄養ドリンクをもりもり。食欲はあるようだ。

正午に訪問看護の看護師さんが到着。
少し横になって寝たら?と言われるも
「寝たきりになりそうで怖いから」
と頑なに横にならない母。
たぶん、ほんとうに
ギリギリの土俵際だったんだろうな、
と振り返ると思う。

看護師さんに「医者に診せたほうがいい」と

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(05)

11月19日。
感覚的には11月18日の夜中の2時半ごろ。
「頭が痛い。割れるように痛い」という
母の大声で目がさめる。
お互いのために、深夜から朝5時までは呼ばない、
という約束なっていたのに!と思わず怒ってしまう。
「ヤブ」が出してくれた薬だって飲んだのに、
なんで??と思ったが、本当に痛そうにしている。

本当はいけないのだろうけれど、
市販で買った、からだにやさしいとされている
鎮痛剤を飲

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(06)

11月20日。
入院中に必要なパジャマ、肌着、タオルなどを
かばんにつめて、病院に持っていく。

オムツと言われて、母が買いだめしていた
パンツタイプのものを持っていったら、
横をテープでとめられるものでないと、
介護するのに不便なので、と言われ、
総合病院内のコンビニに買いに走る。
あまりの値段の高さに卒倒するも、やむなし。

母が「私のはオムツじゃなくてパンツだもの」
と、やけに強調していた意

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(07)

11月24日。
経過の報告を、ということで、
母の主治医から電話が入る。

点滴による肺炎の治療は、今日で一旦終了し、
おしゃべりもはっきりしてきたとのこと。
今後の治療の方針としては、
明日からエンジョイゼリーという
ゼリー食に切り替えていくと同時に、
リハビリも入ってくるという。

本人に携帯をもたせているので、
通話することは可能ですか? とたずねると、
病室での携帯電話の使用は禁止されてお

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(08)

11月29日。
母の主治医より電話。
先日からゼリー食で
嚥下の状態を見ると同時に、
造影剤を入れて、どのくらい食道に、
どのくらい気管に入っているかを
検査したとのこと。
結果としては、飲み込めているように見えて、
ぜんぜん食道のほうに入っていっていない、
との報告を受ける。

実際のところ、一旦治った肺炎が、
口から食べる練習を始めてから、再び再発し、
再度、治療が必要になってしまったという。

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(09)

12月1日。
仕事の打ち合わせで不在にしている間に、
母の主治医から弟のほうに電話があったらしい。

帰宅後すぐに主治医に電話。
口から食べることは、もうできないという話を
母にしたところ、落ち込んでしまい、
「死にたい」と言っているので、
一度面会してほしいとのことだった。

翌々日の12月3日の夕方、
弟と一緒に母の面会をする。

弟とは、あらかじめ打ち合わせをして、
いまは口からは食べられな

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(10)

12月7日。
昨日、主治医から電話があり、
現在の病状の報告を受けた。

現在でも「死にたい」発言はあるものの、
よくある、85歳のボヤキ
(年はとるもんじゃないよ的な)に
変化しており、思いつめている感じではない
とのこと。
再発していた、肺炎は治ったので、
抗生物質は一旦終了したが、
これからも、唾液の誤嚥などで、
発熱する可能性は充分にあるらしい。
それでも、このタイミングで
療養型病院への

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(11)

12月10日。
前回病院に行ったときに、母の補聴器を
持ち帰ってきた。
本来なら、補聴器の担当者さんに来てもらい
母が装着した状態で、
聞こえ方の調整をしてもらうのだが、
今年は本人抜きで、
念のための点検だけしてもらう。

病院では、看護師さんがちゃんと
母に補聴器をつけてくれているようだが、
ふと見ると、充電がゼロになっている。

どうやら、電池式と勘違いして
夜間もつけっぱなしにしている?

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さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(12)

12月13日。
介護用品の業者さんがきて、
母が寝ていたレンタルの介護ベッドに、
家用と外用の2台の車椅子を
回収していった。
部屋が急にがらんとしてしまった。

夕方に病院へ。
今日は北風が強くて、
帰りの自転車が辛かった。
特に病院脇の坂。

寒くて、風が強くて、ペダルが重くて、
の三重苦はいただけない。
それだけで悲しくなる。

さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。 (13)

12月16日。
看護師さんから電話があり、
またおむつとパッドを持ってきて欲しい、
とのこと。
すごい消費量のような気がするが、
言われるままに購入して、
いつものように自転車で持っていく。

療養型病院への転院の手配については、
病院の患者支援室にお願いしてあるので、
いまは、とにかく、待つしかないのだが、
話が進んでいるのかどうか、どうにも気になる。

患者支援室の相談員さんによると、
療養型

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さよならだけが人生か。でもさよならにもい言い方がある。(14)

12月20日。
いつものように洗濯物の引き上げと、
洗ったものを渡すために病院へ。

この日は、6年前に母が入院したときに
担当してくれた看護師さんが、対応してくれた。
6年前はパンデミックとは無縁だったので、
ロンドンに帰るまでの3週間ほど、
私は、毎日昼前から夕食まで、
病院で母に付き添っていたので、
病棟のほとんどの看護師さんと
顔見知りになった。

彼女が言うには、母は私の名前を出して、

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