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長谷川等伯 氏作 「松林図屏風」

新年 明けましておめでとうございます。
皆様にとって笑顔が溢れる充実した一年となりますように。

さて正月といえば、私は東京国立博物館を訪れるのを恒例としています。
お目当ては長谷川等伯 氏作の「松林図屏風」。毎年、この絵を心静かに愛でてその年の始まりを整えています。
写真などでは全く伝わらない、漂う霧の静寂な空間。彼方に見える白き頂。
絵の描かれた場所は特定されておらず、三保ノ松原から見える富士と言う説もありますが、私は等伯さんの故郷である能登から望む白山と想像して作品の空間に没入しています。
私は長谷川等伯氏の作品が全て好きと言う訳では無く、御殿を飾るような絢爛豪華なものはどちらかと言うと苦手なのですが、この「松林図屏風」だけは特別です。

今年は今日から1月15日までの展示。今年は例年の国宝室ではなく、同じく2階の第7室に展示されています。
ご覧になるのでしたら、朝一番の人の少ない時がお薦め。今日も最初の鑑賞した後に館内を一巡りし、10時過ぎに再度訪れたら、記者会見会場のような人だかりとなっていました。大きな図屏風ですので少し離れて佇みつつ愛でるのが良いのですが、多勢の方々がガラスの前に張り付いてらっしゃると作品空間への没入は難しい。
そうそう、能登からの白山との想像を膨らませる一助ともなるのが、安部龍太郎 氏著 「等伯」。お薦めです。

今年のチケットは残念ながら松林図屏風ではありませんでした。
過去のチケットはスタンプ部分を切り落として栞にしています。

安部氏の「等伯」は、もちろん実話を題材とした創作ではあるのですが、読んで絵の作品空間への没入感が増す装置となりますので、積極的に取り入れたい。

そう言えば、今は長谷川等伯氏作の巨大な襖絵がサントリー美術館に来ていますね。元々は豊臣秀吉の早逝した息子鶴松の菩提を弔う為に建てられた巨大寺院 祥雲禅寺を飾る為に描かれた作品。
豊臣滅亡後は徳川家康によって鶴松の菩提寺は廃され、秀吉に滅ぼされた根来寺の智積院に与えられて現在に至っています。
私は何度も智積院で鑑賞しており、且つ、久蔵氏の描いた桜は残念ながら傷みも激しいので、サントリー美術館を訪れようとは思っていません。しかし、まだご覧になっていない方は、一度この松林図屏風をご覧になった後で、サントリー美術館も訪れてみられては如何でしょう。そうすると、この松林図屏風の特異性と素晴らしさがさらに際立つと思います。
その際は、安部氏の作品を読んでから訪れられると、桜図の傷みが補完され、想いを深くすることができるかもしれません。狩野派ではなく長谷川一門が請け負うことになったこと、狩野派に入門していた息子 長谷川久蔵氏が描いた桜図。

穏やかで充実した正月となりました。


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