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佐久間マリさん

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佐久間マリさんの作品が大好きです。 特に男子がとても魅力的で、物語は大きな出来事がドカンと起こるわけではないですが、心が切なくギュッとなります。 沢山の方にこの切なさを。。。
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#恋愛

4.堂道、次長!③

4.堂道、次長!③

 ひととおり食事を終えると、酒を片手に場所をソファに移した。
 たわいもない話をしながら、しつこくシャンパンをちびちび飲んでいた糸に、前触れもなく堂道が身体を覆いかぶせて来た。

「ん、課長……」

糸の意向にかまわず、どんどん舌を進めてくる。

「ま……って……」

唇は、会話にキスにシャンパンにと忙しい。

「……だめ、こぼれちゃう」

「ん」

キスをしながら器用に、糸の手からフルートグラス

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4.堂道、次長!②

4.堂道、次長!②

 ショッピングモールを出て、歩いて帰る。
 昼間は新しい街並みも、夜になれば暗さが目立つ。
 オレンジ色の外灯に照らされ、おもちゃのような家がテーマパークさながらに立ち並ぶ中は、堂道にはあまりにつかわしくないかわいらしい風景だったが、そのなかを買い物袋を片手に、二人で並んで手を繋いだ。

「でも、やっぱり聞きたいです」

「なにを?」

「雷春さんと何があったか」

「だからー、ないって言ってんだ

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3.堂道、鉄パンツ!③

3.堂道、鉄パンツ!③

「……ひーん! やっぱり来てましたぁ……」

「あ、そう」

 リビングに戻ると、堂道が紅茶を入れてくれていた。
 ティーバッグの紐がマグカップから所在なさげに垂れ下がっている。

 明るい部屋で、スウェットと白いTシャツ、洗いざらしの髪の堂道を久しぶりにちゃんと見て、糸は、またこの人を好きになってしまったと思う。
 堂道が買ってきてくれたものは、二種類の生理用品と二枚のショーツ、鎮痛剤とプリンだ

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21.部下に手を出す上司は信用できない

21.部下に手を出す上司は信用できない

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話(全31話)

21.堂道課長は部下に手を出す上司になりたくない

 堂道との男女の接点はなくなったが、まだその体調を気遣うくらいは糸に許されていて、たとえば残業が続いていそうな時に栄養ドリンクの差し入れは受け取ってもらえる。
 あと、二日酔いらしい時の胃腸薬と。買いに行くのも辛そうで、この時はひどくありがたがられた。
 毎日二日酔いになればいいのに

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部下に手を出す上司は信用できない16~20

部下に手を出す上司は信用できない16~20

1話~5話 6話〜10話 11話~15話 (全31話)

16.堂道課長はもう恋なんてしない「オラ、榮倉ァ! てめえ、ふざけんなよ!」

 二課の島に死んだ目でいる夏実から社内チャットが届く。

『どうにかして』

 糸に堂道をどうにかできる力があるのなら、今すぐこの場を和やかな職場にしている。

 堂道は清々しいまでに通常運転だ。

 結局、糸は告白したことになるのだろうか。
 あれ以降、堂道の

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悪役俺様嫌われ上司(バツイチ)は恋愛小説のヒーローになれるか!?(完結)

悪役俺様嫌われ上司(バツイチ)は恋愛小説のヒーローになれるか!?(完結)

1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話
26話  27話 28話 29話 30話 31話 エピローグ(完)

プロローグ 玉響 糸、二十六歳。
 最近、人生悟ったこと。

 その一、食わず嫌いはよくない。
 食べ物の好き嫌いだけに限らず、世の中には知らないだけで実はすごくおいしかったという例がたくさんある。
 だから、何事においてもとりあえず挑戦し

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(旧)1 堂道課長は嫌われている。

(旧)1 堂道課長は嫌われている。

「堂道キモい。本気で死んでほしい」

 化粧直しの途中で、夏実が吐き捨てるように言う。

「あー、今日も朝から課長キレてたね。マジうざい。こっちまで嫌な気分になる」

 歯磨きをしながら隣の鏡に映る小夜がしかめた顔で何度か頷いた。

 堂道夏至。ドウドウゲシ、営業部二課の課長。
 変わった名前。社内の嫌われ者。
 すぐキレるし、怒鳴るし、声でかいし、下品だし、だらしないし、言う事無茶苦茶だし、すぐ

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