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佐久間マリさん

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佐久間マリさんの作品が大好きです。 特に男子がとても魅力的で、物語は大きな出来事がドカンと起こるわけではないですが、心が切なくギュッとなります。 沢山の方にこの切なさを。。。
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2021年3月の記事一覧

(旧)1 堂道課長は嫌われている。

(旧)1 堂道課長は嫌われている。

「堂道キモい。本気で死んでほしい」

 化粧直しの途中で、夏実が吐き捨てるように言う。

「あー、今日も朝から課長キレてたね。マジうざい。こっちまで嫌な気分になる」

 歯磨きをしながら隣の鏡に映る小夜がしかめた顔で何度か頷いた。

 堂道夏至。ドウドウゲシ、営業部二課の課長。
 変わった名前。社内の嫌われ者。
 すぐキレるし、怒鳴るし、声でかいし、下品だし、だらしないし、言う事無茶苦茶だし、すぐ

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15.真夏の夜の不純異性交友罪#絶望カプ

15.真夏の夜の不純異性交友罪#絶望カプ

「暑いぃぃぃ」

 都内、大小二十か所以上で夏祭りが催されるらしい今夜。
 当然警備の人手が足りるはずもなく、生活安全課の応援要請を請け、自分と進藤は地域祭りの警ら中であります。

 しかし、はっきり言って、このクソムシ暑い中、ネクタイはしてないけど、スーツなんですよ。上着も着てるんですよ。
 夏祭りにスーツの男二人組とか、もうヤのつく職業かケージですよ。
 お巡りさんの制服じゃないから、犯罪抑止

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note@さよなら発、幸せ行き片道切符

note@さよなら発、幸せ行き片道切符

 都内某駅、グリーン色の窓口。
 チケットレスが進む昨今だが、まだまだ毎日、多くの人が目的地までの切符を求めてやってくる。

 その中で、毎週とは言わないまでも隔週くらいのペースで必ずやってくるお客様がいる。
 それは決まって週末の夜。
 愛想のいい、笑顔の綺麗な女の子。
 歳は三十前くらいか。

「はじめて一人で新幹線に乗るんです。特急券と乗車券……ってなんですか」と窓口にやってきたのが最初の出

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16.居酒屋取調室で処女泥棒自白罪 #絶望カプ

16.居酒屋取調室で処女泥棒自白罪 #絶望カプ

「先輩に彼女できたから、俺に見合い話がまわってくんですけどー。あ、ナマおかわり下さいー」

「すればいいじゃんー、見合い。手羽先、追加で」

「なんで結婚してまで上司の顔色窺わなきゃいけないんですか。あー、俺も幼馴染欲しいー。三十過ぎてもこんな朴念仁に一途なかわいい幼馴染……」

「あ? あいつは思ってるほど一途じゃねぇよ」

「えー? そうなんすかぁ? なんだかんだめっちゃ一途じゃないですか、円

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(旧)2.堂道課長は帰れない。

(旧)2.堂道課長は帰れない。

「バカか、お前! んなことまだ言われなきゃできねえのか!」

 フロアに響き渡る怒鳴り声。
 隣の島で生気を失った目をしている夏実に、同情の視線を送っておく。

「お前、これやんの何回目だよ!? つか何年目だよ! ちょっとは考えて動けねーの?」

 怒られているのは同期の小林君。
 確かに私らもう四年目です。

「明日までだぞ!? できるわけねーだろーが! ったく!」

 堂道ついに部下に手を出す

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