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私は、好きな人に執着なんかしない。

久々に、さいごの恋シリーズを更新しようと思う。

私はFという、今までに見たことのないような変わった上司に、仕事も気持ちも振り回されている。
気づけばそういう関係になって、もう3年。
母とF氏、そして私の3人。農家として、5年が過ぎようとしている。

noteってすごい。忘れかけたこととか、鮮明に残っている。
一昨年、F氏に失恋したこと、そして去年は完全に恋人となったことなど。

そして、また今年はそれとは違う形で、彼と向き合っている。

今年は途中から、母が仕事に介入してきた。
去年はF氏が嫌だからといって、ほとんど仕事場に来なかった。
だからこそ去年、私はF氏との距離が近くなったのだ。

母はいわゆる毒親。
私は幼少期から不審に思うことが多く、自分に自信がない。
とくに、母の前ではいつも顔色を伺うことが多かった。

そして、そんな母は今年気づいた。去年私とF氏がいかに仲良く、協力しあって仕事をしてきたかということに。
それを、妬み始めたのだ。

冗談混じりで、私とF氏は結婚したいと伝えてみたら、翌日母は怒り狂ってしまった。農園を潰すとまで言った。
少し経って、また忙しい稲刈りの時期になった。

稲刈りは、コンバインを運転するF氏と、もう一人運ぶ人が居ればそれで済む。2年前、私もその運ぶポジションの練習をしたいと言ったら母が

「そんなのお前には早すぎる!あと5年かかる!」

と断られたのだが、去年、母が仕事に来なかったので私が全部運んだ。
…そう、5年などかからない。
軽トラが運転できれば誰でもできるのだ。

今年、F氏に私が仕事を振られると、母の目つきが怖かった。
母がいない1年で、色々変わったのだ。
母にしてみれば、1年で何でこんなに変わったのだろうと思うのだろう。

でも今年は、それを気にしてくれるF氏がいる。
母がいないときは、私の具合なりを気にしてくれるのだ。
それと、どんな日も仕事を振ってくれる。
上手く言えないけど、それ以外も多少は気を遣ってくれる。

それが、私の唯一の救いだ。

母は、足がだんだん不自由になるので、私が稲刈りを手伝っていたら、すごく嫌な顔をした。
母はF氏が私を頼りにしていることを、常に妬んでいた。

そうはっきり言われてはないけど、いくら毒親とはいえ、私は親子だから分かる。

9月、母は自宅でも私と顔をあわすのを嫌がった。何も言わないので、ごみを出してやろうと思ったら、それも自分で出すと言い放った。
もちろん、食事も別々だ。

あまりに母のストレスが溜まったのか、かなり太った印象があった。
こっそり、F氏と飲みに行ったりしていたのと、脂っぽい食事をたくさんしたのだろうと思う。

私は9月の中旬、そんな母が救急車で運ばれる夢をみた。
そして、それが正夢になってしまう。

10月の始めのこと。
母はリビングに来ないので、1年生の娘を送り出す時、挨拶をしに部屋に行った。もちろん、私は母の気持ちは分かっているのだが、喧嘩したわけでもないので、毎日、冷静に挨拶くらいは交わしていた。

すると、母がめずらしく具合が悪いと申し出た。
おそらく、足腰の筋肉はすごく痛いのだろう。それを言えばF氏と仕事ができなくなってしまうから。

それでも、腰がヘンで気持ち悪い、と訴えた。

娘をバス停に送っていく。私はF氏に母の具合が悪いと電話をする。
そして、急いで自宅へ戻る。

自宅へ戻ると、顔色も悪かった。
かなりの痛みが出てきたというので、私は躊躇なく救急車を呼んだ。
私は初めて救急車を呼んだんじゃないかと思う。

母に対し色々複雑な思いを抱えていたのか、私はかなり冷静だった。

その痛みの原因は、尿路結石だった。
病院につくとたくさん吐き、痛み止めの注射をしてもらったようで落ち着いていた。

おそらく、食生活と私に対するストレスが原因なんだろう。

自宅へ帰ると、さすがに母は寝てるといって、
私が代打で稲刈りの補助に向かった。

***

「2人でやるしかないときがきたか。今日は休みは少ないと思うよ。」

F氏の口数は少ない。今日のノルマを終わらせるために、私は必至でF氏の刈った稲を運んだ。

でも、思っていたより早く終わった。16時半。
やっぱり私でも、もう代打にはなるのだ。

今日ばかりは、母におかゆを作ってあげようと思い、急いで帰ってご飯の支度をする。すると、今日の仕事の進捗を訊いてきた。

「どうせ、半分くらいしか終わってないのだろう」

そう聞いてきたので、私は答えた。

「全部刈れた。終わったよ。」

きっと、ここでも母は悔しかったのだろうと思う。
でも、食事を食べ終えると
「今日は一日ありがとうございました。」
と言って、部屋を去って行った。

なんともかわいそうな母。
これ以上にかわいそうな人は、見たことないかもしれない。

いつも一人で食事をし、こっそりF氏の夕飯を買ってあげる。
もう母は70歳も近い。
いつまで、1人で意地を張っているのだろうと思う。

***

F氏は日々母に対して気を遣って接しているように見えるし、母がF氏に恋愛感情があったとしても、F氏から母にはそんな気持ちはないのだろう。
F氏は母に対して、上司として接しているように思える。
足の悪い母と一緒に仕事なんかしなくても別にいいのだろうし、上下関係でただ母に従っているように見えてしまう。

***

「ねぇ、タバコ!」

F氏は、誰に対しても敬語が多いのだけど、私に対してはもう違う。
今年の秋は何度もF氏のタバコを買いに行ったなぁ。
2年前は、置いたタバコの場所を伝えたら、恥ずかしそうにしていたよね。


私は、好きな人に執着しないと決めた。
もちろん、F氏と一緒に過ごせるのなら、そうしたいのだけど。
他人を妬んでまで、一緒にいたいと思わない。

だから、2人でタイミングが合う時間を大切にしたいのだ。
そんなふうに、自然に一緒にいれる時間があれば嬉しい。
それこそが、相手を想うということなんじゃないかなぁと思う。

私はF氏の自然なパートナーでありたいのだ。


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