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マクドナルド ハッピーセット「星のカービィ」はなぜ売り切れになったのか? 〜メディア活用・トレンド・IP・商品性などから考察〜

こんにちは、服部です。

今回は、親御さんの強い味方マクドナルドのハッピーセットにまつわるお話。今、「星のカービィ」コラボのアイテムが即日売り切れになっており、とても話題になっています。しかし、なんでカービィがそんな状況になっているのかを疑問に思い、販促キャンペーンや商品性を見ながら、勝手に考察したいと思います。


ハッピーセット「星のカービィ」キャンペーン概要

画像:マクドナルド プレスリリース より

子ども達やコラボIPファンなどが好む「マクドナルド ハッピーセット」。その2023年2月23日からの商品は、ハッピーセット「星のカービィ」と、ハッピーセット「ポムポムプリン」。今回、「星のカービィ」のおもちゃは全8種のぬいぐるみ、「ポムポムプリン」のおもちゃは全6種のゲームなどでした。

画像:マクドナルド プレスリリース より

特にカービィは、表情豊かなカービィや、ワドルディ、キービィなどもあり、ファン心をくすぐる商品でした。また、マクドナルドが星のカービィのハッピーセットを出すことは、今回が初めてだったようです。


カービィはいつ売り切れになったのか?

画像:マクドナルド 特別なお知らせ より

今回のカービィの提供スケジュールは、以下の予定でした。
第一弾:2023年2月23日(金・祝)〜2月29日(木)
第二弾:2023年3月1日(金)〜3月7日(木)
第三弾:2023年3月8日(金)〜

しかし、予想を遥かに超える完売が続き、当日や翌日完売となる盛況ぶり。おそらくマクドナルドからすると予想してなかった状況だったと、お知らせ分からも察します。

第一弾:2日目の2月24日(土)には完売(SNSなどの情報参照)
第二弾:初日の3月1日(金)に完売
第三弾:販売中止が決定


なぜカービィがハッピーセットで人気なのかの要因を考えてみる

そこで疑問に思いました。マクドナルドのハッピーセットはいつも何かのキャラクターIPとコラボするのは普通なことである中で、なぜカービィだけが売り切れたのか?ちなみに、2ヶ月前のハッピーセット「ハローキティ」でも売り切れが出ていたため、その関連なども含めて、いくつか要因と分析をしてみたいと思います。


【考えられる要因の要素】

  1. ターゲット軸:ファンから一般層まで幅広く刺さったのではないか?

  2. 情報解禁軸:情報解禁後の流れが良かったではないか?

  3. メディア軸:メディア活用がうまくいったのではないか?

  4. キャラクターIP軸:コラボIPの力が強かったのではないか?

  5. 商品軸:アイテムの商品性が高かったのではないか?

僕としては、5つ目の商品軸、強いては、顧客一人一人のパーソナライズ化とクリエイター起点のSNSが一番大きそうだなと思っています。では、それぞれ見ていきましょう!


1, ターゲット軸:ファンから一般層まで幅広く刺さったのではないか?

マーケティングを考える上で、その商品は誰をターゲットにしているのかを考えることはとても重要です。今回のカービィのターゲットや関心層はどんな人だったのかをいくつか考えてみます。 ※ちなみに、ハッピーセットは子供だけでなく大人も購入できるようになっています

  • 子ども

    • 単純にマクドナルドに行き、店頭でハッピーセットを選び、ポムポムプリンや絵本ではなくカービィが欲しくなったお子さん

  • 子ども×親

    • 主に親はカービィを知っていて、過去にゲーム経験がある方もいる

    • 子どもの意思ではなく、親御さんの意向もありカービィを選択する層

    • その中には、今はカービィのゲームはやっていない層と、2022年発売の「星のカービィ ディスカバリー」など最新までやっている層がいる

  • カービィのファン(主にコアファン)

    • カービィは2023年に30周年を迎えた長期に愛されるゲームかつキャラクター。そのカービィファンが歓喜した可能性

  • ゲームアイテムコレクター

    • カービィだけでなくゲームアイテム収集家

    • 任天堂ファンなどもいる可能性

これらのターゲットを考えていても、過去ハッピーセットになったマリオやポケモンも近しいターゲットになります。一方で、マリオやポケモンでは、ここまで爆発的な売り切れは起きていなかったので、大きな差があるようには見えません。


2, 情報解禁とメディア軸:TVCM, YouTube, SNS, 広告などのコミュニケーションがうまくいったのではないか?

画像:マクドナルド プレスリリース より

情報解禁からメディアでの派生の流れで、うまく期待感を煽れたのではないかと仮定して、情報解禁からのスケジュールや、どのメディアで発信が行われたのかをみていきます。

情報解禁日は、2024年2月16日(金)で、発売日の一週間前でした。SNSの投稿時間を見る限り、時間は昼の12時だったようです。この解禁には、プレスリリース、TVCM、YouTube動画アップ、SNSオウンド投稿など、全てで2月16日に統一されており、それより以前からハッピーセットでカービィが発売されることの情報は見当たりませんでした。


【TVCM、YouTube動画(CM動画と遊び方ムービー)】


【SNSオウンド投稿(X)】

Xでの投稿は、マクドナルド公式アカウントでの発信をきっかけに、その後カービィ関連の情報発信が複数行われていました。


【SNSオウンド投稿(Facebook/Instagram)】
マクドナルドジャパンでは、InstagramやFacebookのオウンド投稿では、ハッピーセットの発信はしていないようでした。


【SNS キャンペーン(X)】

マクドナルド プレスリリース より

今回のカービィでは、「#推しのカービィ」訴求のみ、特別キャンペーンが行われていました。マクドナルド公式Xアカウントをフォロー&ハッシュタグ投稿で応募できる流れのものでした。


【広告配信(Facebook)】

Facebookの広告ライブラリ経由で、McDonald's Japanがどんな広告を配信していたかも見てみました。しかし、McDonald's Japanの広告配信では、カービィはなく、ポムポムプリンのみ行われていたようです。早々に売り切れてしまったカービィを訴求することはできなかったと捉えてもよさそうです。


このように、TVCMやYouTube動画、SNSや広告などのメディアコミュニケーションは、そこまで特別な施策はありませんでした。カービィだけ特別売り切れになることについて、2月16日〜2月23日までの一週間で大きなバズが産まれるようなものは特段ないかなという印象でした。


3, トレンド軸:カービィのハッピーセットのみバズのようなことが起きていなかったか?

トレンド(Googleトレンド)の動きを見ながら、今回のカービィの人気の動きに気になる点がないか見てみます。合わせて、同じく売り切れた2023年12月の「ハッピーセット ハローキティ」との比較をして、カービィとキティちゃんの差も見てみましょう。


【"カービィ"と"ハッピーセット カービィ"の挙動(過去7日間)】

Googleトレンド 過去7日間 結果(2024年2月24日17:00〜2024年3月2日16:00)

まずは、"カービィ"と"ハッピーセット カービィ"の検索キーワードについて過去7日間の動きを見てみると、両方ともトレンドの動きは同じ挙動をしています。

また、第1弾の売り切れが発生した2/24夜、そして、そのニュースが広がったであろう2/25朝、2/26朝にスパイク(盛り上がり起きている尖った部分)が起きていることがわかります。加えて、第1弾の盛り上がりを受けて、第2弾の3/1には第1弾の3〜4倍ほどの大きなトレンドが起きていることがわかります。


【"カービィ"と"ハッピーセット カービィ"の挙動(過去2年間)】

Googleトレンド 過去2年間 結果(2022年1月1日〜2024年3月2日)

では、同じキーワードで、過去2年間の動きではどうなのでしょうか?最も盛り上がりを見せたのは、2022年3月発売の「星のカービィ ディスカバリー」に関連した時期にスパイクが起きています。その後、カービィ30周年イベントで少し盛り上がりを見せ、今回のハッピーセットのスパイクがディスカバリーに匹敵するほどのトレンドを起こしていることがわかります。


【"カービィ"と"ハッピーセット カービィ"と"キティ"と"ハッピーセット キティ"の挙動(過去90日間)】

Googleトレンド 過去90年間 結果(2023年12月2日〜2024年2月27日)

一方で、カービィと同じようにハッピーセットのアイテムが売り切れたハローキティ(キティちゃん)と比較するとどうなのでしょうか?

まず、ハッピーセット販売時期ではない通常時のトレンドは、基本的にカービィもキティちゃんも同じぐらいの線を辿っています。また、ハッピーセット販売時のトレンドスパイクはキティちゃんもカービィも同じぐらいの盛り上がりを見せていることがわかり、このぐらいの話題化が起きると、ハッピーセットの売り切れも出るぐらいの事象に発展するのかもしれません。


4, キャラクターIP軸:カービィのIPの力が強かったのではないか?

では、カービィのキャラクターIPの力が強かったという要因もあるのかと思い、過去1年ほどのハッピーセットの商品を調べてみました。

【2022年12月〜2024年3月までのハッピーセットコラボ】

  • 2024年2月23日〜3月14日:星のカービィ・ポムポムプリン

  • 2024年2月9日〜2月22日:ポケモンメザスタ・ポケピース

  • 2024年1月12日〜2月8日:おさるのジョージ、すみっコぐらし

  • 2023年12月15日〜2024年1月11日:パウ・パトロール、ハローキティ

  • 2023年11月17日〜12月14日:みんなで!パーティーゲーム、たべっ子どうぶつ

  • 2023年10月20日〜11月16日:クレヨンしんちゃん、マイメロディ・クロミ

  • 2023年9月15日〜10月19日:プラレール、リカちゃん

  • 2023年9月1日〜9月14日:スパイファミリー、ちいかわ

  • 2023年8月11日〜8月31日:ポケモンなつまつり

  • 2023年7月14日〜8月10日:マックアドベンチャー なりきりマクドナルド、アニア

  • 2023年6月16日〜7月13日:おしりたんてい、おさるのジョージ

  • 2023年5月19日〜6月15日:ウォーリーをさがせ、はらぺこあおむし

  • 2023年4月14日〜5月18日:トミカ、シルバニアファミリー

  • 2023年3月17日〜4月13日:ドラえもん

  • 2023年3月3日〜3月16日:パウ・パトロール、リプリキュア

  • 2023年2月10日〜3月2日:トムとジェリー、リトルツインスターズ

  • 2023年1月13日〜2月9日:機関車トーマス、すみっコぐらし

  • 2022年12月23日〜1月12日:ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

こうしてみると錚々たるコラボ相手だとわかります。子供達は色んな好きを持っていますから、その好きに合わせるコラボ相手がふんだんに含まれていますね。(僕も子どものためにいつもハッピーセットに助けられています 笑)

一方で、IPの人気度としても、カービィやキティちゃん以外にも、ポケモン、ちいかわ、リカちゃん、トミカ/プラレール、ドラえもん、マリオなど、同じかそれ以上の人気度を誇るIPが揃っています。

それでも、今回のカービィとキティちゃんの売り切れ盛り上がりまでは発展してなかった印象で、IP人気度だけでは判断ができないかと思いました。


5, 商品軸:アイテムの商品性が高かったのではないか?(パーソナライズ化とクリエイターSNS)

最後に、ハッピーセットでもらえるアイテム自体が良かったのではないか?という仮定の元、状況を見ていきたいと思います。


【「ぬいぐるみ」の形態が良かったのではないか?】

星のカービィ Xアカウントより

まず、カービィとキティちゃんのアイテム形態は「ぬいぐるみ」でした。他のキャラクターIPの時は、何かしらおもちゃの形態をしているものでしたが、この2つだけは、キャラクターIPの姿を前面に活かした「ぬいぐるみ」。これが良かった可能性があります。

ファンからすると、ハッピーセットのコラボ商品はほしいものですが、変な工夫はいらず、そのキャラクターを素直に活かしたものが欲しいと思うものかなと思います。そのため、カービィもキティちゃんも複数種類のぬいぐるみを、それぞれのキャラらしく商品にしたという点は大きいかと思います。加えて、カービィは、カービィ以外にもワドルディやキービィ、さんかくほうばりなど、少し別軸の商品も可愛く表現している点も、SNSのコメントを見ると刺さっている人が多かった印象でした。


【アイテムの出来が悪く、逆に一点物に嬉しくなったのではないか?】

人は、どこまでいっても「自分のため」「自分だけ」というパーソナライズされた要素を嬉しく思うものです。

今回のカービィは、とにかく一つ一つの商品の品質レベルの差が激しく、同じ商品なのに作りも表情もそれぞれ違うという個体差が発生していました。。しかし、今回の場合、その個体差が不信感につながらず、逆に「このカービィは自分だけしか持っていない」という愛着になって、話題化していった要素があるかと思います。

そのため、製造観点だと本来は商品の質に差があることは認められないことですが、購入者からすると、ハッピーセットは同じものが出てくるという「みんな同じものを持っている」ではなく、「みんな違うんだって!」という、集めても集めても限りがない状態を作り出せたのかと思います。

もし、マクドナルドや任天堂が、この商品個体差の事象を狙ってやっているとしたら、恐ろしいマーケティング力だと思います。


クリエイター心をくすぐったファンアートの盛り上がり

商品に個体差があることが、逆に写真で比較するだけでなく、クリエイター心にも火をつけたことも、話題化した要因にあるかと思います。イラストで個体差を表現する、実物に装飾をしてみる、などのアクションが多く発生し、それがSNSでさらなる盛り上がりを発生させたと考えられます。


まとめ

キャラクターIPとしてカービィはとても愛されているという前提の下、ぬいぐるみ自体が可愛く、個体差もあって愛着が湧き、そして、さらにクリエイター心もくすぐり、SNSやニュースでも更なる話題化に繋がった。そんな要因が、今回のハッピーセット カービィ売り切れの裏にはあったのかなと、僕は思っています。

きっと人々は完璧には少し飽きていて、商品にもキャンペーンにもアイテムにも少しの「余白」があったほうが、愛着や創造性が拡がるのかもしれません。これからの販促キャンペーンは、そういうみんなで作り上げるものこそ、成功するのかもしれませんね。

ちなみに、僕が子どもとマクドナルドに行った際、残念ながらカービィもポムポムプリンも売り切れで、僕の独断で絵本「いちにちおこめ」にしたところ、子どもがその夜お米の知識を嬉しそうに語っていて、カービィじゃなくて良かったかもとも思ったりしました(笑)


それでは、今日はこの辺で。


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Kazuma Hattori | デジタル広告・マーケの人 @KazumaHattori


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