見出し画像

終バスにひとりは眠る

仕事して飲んだ帰り道。
下井草で荻窪行きの最終バスに乗った。

電車で帰る手もあったけど。
行きの満員電車がつらすぎたので
帰りも乗る気がしなかった。

夕方から降り始めた雨は
もう雪に変わっていた。

バスは他に誰も乗っていなくて。
窓という窓がぜんぶ曇っていて。

夢の中を走っているようだった。

最終バスに乗るといつも、
穂村弘の短歌を思い出す。

終バスにふたりは眠る紫の
〈降りますランプ〉に取り囲まれて

終着の荻窪駅に着く間際、
すべてのランプが灯るとき。

降りたくなくて。このままで。
どこまでも乗っていたくなる。

本当は早く帰りたいはずなのに。