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あぐり日記④「人見知りと背徳の山岡家」


朝3時、根室の自宅を出て
帯広での農業バイトへ向かう。

帯広までは往復500km。
ガソリン代や運転する労力、
さらに飲食代に宿泊費を考えると
日当1万円では正直全然割に合わない。

それでも、ただやってみたい。
4年前、農業がやりたくて北海道に来たのだから。


それにしても
未明に食べる山岡家のラーメンの背徳感は
何物にも代えがたい。
店に入った瞬間の独特なトンコツ臭、
殺伐しきった空気の店内、
それからあの上品さの欠片もない
いかにも身体に悪そうな味がたまらない。

釧路まで来ると、ようやく中間くらいだ。
明け方、
大雪山系の登山や道央方面に向かうときは
こうして山岡家に立ち寄ることが多い。
他に開いている店がほぼないからだ。

この時間帯の山岡家は格段に美味い。
塩が、脂が、糖質が、運転で疲れた身体に
ものすごい浸透圧で沁みわたっていく感じがする。


今回は「長芋掘り」のバイトらしい。
仕事内容を読むと、
「長芋を掘る作業です」とまあシンプル。
シンプルだけど全然想像がつかない。

そもそも長芋って
どんな感じで植わってるの?
サツマイモみたいに蔓とかあるんだっけ?
どうやってそれを掘り出すの?スコップ?
身近な食材なのに、
よく考えたら知らないことばかりだ。

農家ってどんな雰囲気なんだろうか…
うまく馴染めるかな…迷惑かけないかな…
体力持つかな…腰痛めないかな…
不安が沸々と出てきて、お腹を下した。


営業マンだったくせに、
実はなかなかの人見知り。
初対面の人はもちろん、
友人や親戚と久々に会う時も、
必ずお腹を下す。

話すのは好きだし、苦手でもないし、
初対面の人とも大体仲良くなれる。
ただしお腹は下すし、食欲もなくなるし、
吐き気がするし、冷や汗も出るし、
たまに過呼吸症候群にもなる。

僕にとって初対面の人と話す行為は、まるで
好きなのに食べると体調を崩す食べ物のよう
(味濃いめ脂多めにした山岡家のラーメンのよう)

だけどどんなに体調を崩してでも、
やめられない面白さってやっぱりある。

知らない人に出逢うことは、
知らない世界に出逢うこと。
知らない世界に出逢うことは、
知らない自分に出逢うこと。
そんな気がするのだ。

ちなみに、山岡家は特製ネギ味噌がお気に入りです

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