＜読書＞52ヘルツのクジラたち

　本屋大賞受賞作なので、ぜひ読んでみたいと思っていました。

・52ヘルツのクジラたち　著者：町田そのこ

貴瑚には、暗く、重い過去があります。

愛してくれない、まともに世話をしてくれない母親。

高校を卒業してからは、母親の再婚相手の義父の介護を一人でさせられてきました。

その生活から貴瑚を救い出してくれたのは友人の美晴とアンさんです。
しかし、理解者のアンさんを失ってしまいます。

貴瑚は傷ついた心と身体で移住を決意して、東京から大分の小さな町にやってきます。
大好きだった祖母が残した家に住むために。

そこで家族に世話をしてもらえていない、過去の自分のような少年に出会います。
そして、その少年を守ると決意します。

自分のつらい過去と向き合うだけでも、大変な状況なのに、少年を救い出そうとする貴瑚。

とても切なくなる話です。
助けて、と声をあげることができない人がいるなんて。
胸が苦しくなります。

貴瑚もアンさんも少年も、52ヘルツのクジラのように、声にならない心の声を発しています。

貴瑚もアンさんも、自身が声をあげられない経験をしているから、声をあげようとしている人の存在を敏感に感じています。
通常では聞こえないような心の声に耳を傾けようとします。

貴瑚はアンさんの想いを受け入れられなかった後悔もあり、少年を救い出そうとします。
自身の心と身体の傷も癒えていないのに、迷いながらも、少年と関わる決意をします。

少年を守るために少しずつ強くなっていく貴瑚と、その貴瑚を支えようとする美晴や村中には、希望が感じられます。

小さな「助けて」の声に気づき救い出す人と、それを支えようと協力する人たち。
両方の存在の大切さを感じました。

やはり、人はひとりでは生きていけない。
理解者や協力者を得て、寄り添って生きていくものだと再認識しました。

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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

52ヘルツのクジラたち (中公文庫 ま 55-1)

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