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【私の仕事】 忘備録(32)間に合うはずがない最終納入期限

【私の仕事】 忘備録(21)【入札】 仲良く相談して入れましょう からのつづきです。

◆この記事の内容:

入札のときは官と民はとても仲良しだということを書いています。

機材納入案件

国内業者だけの入札になれば、なんとか同業社(A社B社C社)で「話し合い」ができる。国際入札になれば、まとめきれない。とにかく早急に裏情報を入手しなければ、作戦会議もできない。また、もしうまく落札できても納入期限まで1ヶ月半だ。気持ちは焦ってきた。

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ここからだ。

さて、入札公示が2月14日にあって、その納入期限の条件が年度末(3月末)、納入まで1ヶ月半。ここがポイント。

通常、製造に半年以上かかる機材を、1ヶ月半。不可能だ。これは、入札を実施する官側と納入業者たちと「話し合い」が出来ている証拠だ。特殊製造をする大量の防衛省専用の機材。こんなもの誰が考えても、1ヶ月半では製造できない。

実際、元防衛庁の調達本部に長年勤めていて、その後、防衛省に機材を納入する会社の社長として天下りした人が、僕の取引先だった。僕は防衛省へ大型の車両を納入する営業マンだったので、詳しい裏情報をその社長から直接聞くことができた。

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話し合い

その方が教えてくれたのは、公官庁側がもっとも嫌なのは、入札に参加する業者間で「話し合い」がまとまらず、品質が悪い機材が納入されること。

国民の生命を守る立場の防衛省なので、納入後、使えない、不具合だらけだと大問題になる。その入札の担当官の出世にも大きく影響する。今まで防衛省に納入実績がなく、製品の信頼性が薄い業者が、実績作りのために、利益なしで安い金額で札を入れられると、その業者に落札してしまう。

防衛省の入札担当側としては、当然ながら「話し合い(=談合)」という言葉は使えない。「今、そっちどうなってる?」と僕はよく訊かれた。

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重要なのは、防衛省側の意向(=特定業者が製造する製品、欲しい製品)だ。

これを正確に、担当官から聞き出す必要がある。それができなければ、防衛省担当の営業マンではない。

しかしながら、大きな案件の場合、探偵のように調査しなくても、前年度や過去実績などである程度予想はつく。


最終納入期限

それに、公示から最終納入期限まで1ヶ月半であれば、製造業は既に生産開始していなければ納期に間に合うはずがない。

入札に参加する競合他社は、下請けに仮発注している。下請け業者は、孫請け業者へ機材の手配をしている。その孫請け業者に納入している業者と僕の会社が取引していた。では、その会社の社長から情報を取ろう。

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逆に落札予定になっているトップの業者から、裏で雇われている場合がある。僕がその社長からなんとかうまく情報を聞き出した後、僕が情報を取りに来たことを、その社長は競合他社へ情報として売る場合もある。

そうなれば、最悪だ。こちらの手の内を競合他社へ知らせに行っているようなものである。

そのあたりは「運」もある。情報を流してくれる社長の態度がいつもと同じか。情報提供の費用として渡した「もの」が少ないと感じていないか。その社長の表情と雰囲気から判断するしかない。経験がもの言う。

その社長が「今回はあの入札案件には、うちは関係ないよ」と言ってても、納品のためのトラックがいつもより多かったり、小さな工場が忙しくしてたときもあった。後で、「やっぱり関わっていたのか!」と騙されたこともある。

この場合、上司から追い打ちをかけて叱られる。「その社長は協力者になってないじゃないか!営業マンとして、お前は能力不足だ。」

いゃぁ、本当に神経疲れるし、人間不信になる。。 

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では、こんど会ったとき、その社長はどんな態度するのか?

けろっとした顔で「やあ、最近どう?」である。何事もなかったかのように世間話をする。

これでなきゃ、この業界の社長なんてできないんだなぁと感心する。社長は元、防衛庁に勤めていたエリートである。

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*このnoteで書いてある記事はすべて実話です。「忘備録」として自分のために書いています。


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よい子の皆さまは読まないでくださいね。