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相対評価(集団準拠の評価)から絶対評価(目的準拠の評価)へ

 一人一人の個性の多様性を認め、個別最適な学びを実現するためには、相対評価(集団準拠の評価)から、絶対評価(目的準拠の評価:絶対評価だが、今一般的にやられている未熟な評価ではない)への転換が求められる。
 相対評価は、集団の中で、自分がどの位置にいるかを示すようにつくられた評価であり、数値で表される。ぱっと見、自分の学力の状況(ここでいう学力は表面上のもの)が分かりやすいように見えるが、具体的にどのような力を備えているのかは全くわからない。
 この評価は、一般的にテストといわれ、点数で評価される。ある特定の範囲の知識を測ることはできるが、思考・判断・表現力のような活用の力も含めたトータル的な学力は全くわからないのがデメリットである。

 教師側は、このような特性をもつ相対評価が、「手軽で簡単に取り扱うことができる」ということで、これまでの間多用されてきた歴史がある。
 ここ数年来、同一軸で子どもを評価し優劣を付けることで、「落ちこぼれの子どもを増やす」「過度な競争を生み出す」という負の視点から、相対評価のあり方を転換することが求められた。それが絶対評価である。今の通知表は絶対評価に置き換えられている。しかし、相対評価の評価方法であるテストの形は変わっていない。教師の好きなように評価基準を変えることができるので、かえって客観性を失うことだけで、デメリットしかないと考える。

 ここにきて、現行の学習指導要領で、ふさわしい評価方法として「パフォーマンス評価」が取り上げられるようになった。
 パフォーマンス評価は、一人一人の成長に合わせた目的準拠の評価の一つである。個の成長に合わせて、段階的に評価(形成的評価)していくものである。
 パフォーマンス評価には、学校、地域、子どもの実態に合わせて、明確なルーブリック(評価基準)が示される。そのルーブリックも一人の教師だけが決めるのではなく、教師同士、教師と子ども、はたまた保護者との話し合いの中で決めていくことが望まれるとある。
 
 私は、評価者が一人の教師だけではなく、子どもや保護者(家族)にもその担い手として、参加してもらうことで、あらゆるメリットがあると感じている。子どもが自己評価、他己評価(仲間による評価)することで、教師の主観を減らす効果があり、客観性を高めることができることや、子ども自身が将来にわたって自分を評価することで、さらなる課題や次への見通し(より高いレベルに挑戦すること)につながる。それは、自尊心を育て自律を促していく。

 評価に子どもを参加させるためには、常に自分の進歩を振り返る場面を設定したり、その大切さを時間できるための仕組みを考えたりすることが求められる。下記に羅列してみた。
〇 クラスのみんなで、学習のゴールを設定する。
〇「授業後の感想を書いてください」「気付いたことを書きましょう」といった漠然な振り返りではなく、教師の的確で学習内容に迫る具体的な発問による振り返り
〇 ↑を虫食い問題にして、より書きやすくした「きっかけ文」による振り返り
〇 より効率よく、かつ、深い振り返りのためのチェックリストによる振り返り
〇 発達状況を確認できる掲示物
〇 友達との振り返り活動

 子ども同士の評価は、自由度が高く魅力的に映るが、フィードバックの質を保証することが困難な評価方法となる。子ども同士の評価は、極端に評価が厳しくなる、評価が甘くなる場合の両極端がある。子どもが評価し合う場合に、個々の貢献度を確認する方法も併せて行うことが望まれる。

 保護者(家族)もぜひ評価の協力者でありたい。評価プロセスを伝えることで、子どもの保護者(家族)が、子どもの学習活動において新しい機会と役割が生まれる。今までは、評価情報の受け手であったのが、双方向にやり取りが生まれる点で大きな変化となる。
 評価の情報や、フィードバックの提供者として、積極的に関わることができるようにしていきたいものだ。面談や質問紙で行うことが一般的と考え得るが、教師の事務的処理が増えるだけで負担でしかない。ここで、校務支援ソフトのクラウド化が大きな鍵になりそうだ。
 この実現は、家庭訪問や(個人、三者、学級)懇談会の持ち方や、話す内容が大きく変わることだろう。また通知表への所見記載は、一部分を切り抜いただけのことで、継続的な支援につながらず、意味をなさないことになってくるのではないだろうか。

 さて、絶対評価(目的準拠の評価)の質の高い評価にするためには、評価の方法を変えることや、評価への参加者を増やす等、何をすべきかについて話してきた。
 多様性を認めていく時代において、評価方法の改革は、一人一人の学びの場を提供するだけでなく学習形態そのもの、学校の体制を変えていく、とても重要な役割を果たすことであろう。

参考文献:パフォーマンス評価入門「真正の評価」論からの提案 ダイアン・ハート著 田中耕治 監訳 ミネルヴァ書房 2012

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