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狩猟から加工まで全て一人で行う。凄腕猟師のクマ肉×恵比寿の名店MAENのアレンジで心からの「美味しい」に出会えたお話。

熊肉、食べたことありますか。
私はありませんでした。
熊といえば、固くて獣っぽくて、食べても美味しくなさそうなイメージ。
熊のイメージ、がらりと変えるジビエ屋さんを見つけてしまいました。
私の実体験をおすそ分けします。

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3か月前。
「風よ吹けプロジェクト」という、長野県木曽郡PRイベントの企画中。
PRイベントで使用する木曽の食材を探していました。
予算が限られている中で、様々な方にご協力頂きながら木曽の食材を探し、集めていきました。

調理してくださるのは、恵比寿MAENの井戸シェフ。

井戸シェフ

料理と酒を。共に饗する。
【日本酒ペアリングレストラン MAEN】
渋谷区広尾1丁目16-1 恵比寿駅から徒歩3分。
2021年創業のペアリング専門店。イタリアンをベースとした洋の皿と日本酒の1品1杯のペアリングワールドを提供する。驚きと楽しさを魅せるのは、シェフの井戸雄太×日本酒の伝道師・御子柴悟の84年生まれ/ 同い年コンビ。

木曽の味噌、チーズなどの独特な発酵食品、そして木曽の野菜、米、水。
直前の打合せでサンプルをあれこれ持ち込み話しているうちに、ひとこと。井戸シェフ「あれ、メインがないじゃん…」
わたし「…」
完全に忘れていた~~~!!
確かに、メイン欲しいですよね!

急遽、魚または肉を探しに出る旅に出ました。


……..。
しかし、なかなか見つからない。
諦めかけたそのとき、中善酒造店の南社長から「近所に、マタギのおじいちゃんがいる」との連絡が。
歓喜!
中善の社長から話を通してもらい、イベントにご協力頂けないかと伝えてもらいました。
そして次の週、木曽のマタギに会いに行く約束を取り付けました。
ご紹介からアポ取りまで助けて頂いた南社長には、本当に感謝です。

いざ、木曽へ!

話は逸れますが、東京から木曽へ行くには塩尻駅を経由してJR東海中央本線に乗ります。(ちなみに、木曽郡区間は現金&切符しか使えない駅が多いので、注意!キャッシュレスに慣れた身としては、現金が無くていつも焦ります。)
この中央本線というのが、山間を縫うように走っているので、ちょっと大雨が降ったり強風が吹いたりするとすぐに止まってしまいます。

この日も、「絶対怖い方だから、遅刻しないようにしなくては…!」と予定より二時間早く出発したにも関わらず、雨の影響で一時間遅刻してしまいました。
そんな私を駅まで迎えに来てくれたのが、猟師/百田 健二郎さんです。

電話口では分かりませんでしたが、お会いしてから本当にお優しく、器が広い方であることが徐々に分かり、緊張がほどけていくのが分かりました。
着いたのは、木曽福島駅から車で20分ほどの上松町にあるジビエ工房木曽。

お土産やジビエが売っています。

百田 健二郎さん

百田 健二郎さん

御年75歳、猟師歴なんと45年。
出身は九州熊本県。山と川が好きで木曽に来たのは19歳のとき。
もともと上松町の寝覚ホテルでコック長をしていましたが、自然が好きで木曽の河で魚を捕ったり、森で猟をするようになりました。
猟の仕方は、先人たちの口伝で学んだといいます。

もともと山肉(ジビエ)の販売は緩かったのですが、食品衛生法が変わり10年前から販売が厳しくなりました。流通させるには、厳しい審査を受けないとジビエの売買ができなくなりました。
そこで、百田さんは自身でジビエを解体処理する加工場を設けました。
加工場には、多大な費用がかかります。国や行政の補助金などは使用できず、自己資本のみで建設しました。

自分で狩りをして、自分で加工して、自分で販売する。
すべて、百田さん一人で行っています。

昭和46年12月3日市民タイムズ一面の記事

現在では、BYAKU Narai(suginomori breweryのオーベルジュ)やZenagiなどラグジュアリーホテルでも取り扱われています。
それだけ、良質で美味しい肉なのです。

野山を駆け巡り大空を舞った天然の肉は、脂肪が少なく引き締まり、栄養価も高い森からの贈り物。
でも美味しいだけではありません。
百田さんがここまで本気で取り組むのは、「鳥獣を捕ることが地域の貢献に繋がる」からです。

鳥獣被害

木曽谷は、四方を山に囲まれており、日照時間も低い上、非常に気温が低いです。そんな厳しい環境のなかで、短い夏の期間に農家さんは畑を耕し野菜をつくります。
その努力が全て水の泡になるのが、「獣害」です。
ここ数年で、被害は一層加速しています。
サル、イノシシ、ハクビシン、キツネ・・・
トウモロコシは甘い部分を全て食われ、美味しい部分だけすべて食い散らかされます。
お金と手間をかけて育てて来た野菜が一夜にして奪われるのは、やり場のない怒りと無力感をもたらします。
あるいは、農作業中に熊やイノシシに襲われるケースもあります。
このように、鳥獣被害は木曽で農業をする上で、大きな障害となっているのです。
百田さんのもとには、連日、鳥獣駆除の依頼が来ます。

最盛期には上松町だけでも150名いた猟師は、現在は18人にまで減ってしまいました。また、猟友会は50代~80代がメインです。
今後、木曽の狩猟・農業の未来は、どうなっていくのでしょうか。
深く考えさせられました。

色々お話を聞き、私は百田さんのことを心から尊敬しました。
さらに、イベントで使用するお肉は、全て商品協賛として無料で提供してくださることになりました。
感謝してもしきれません。

MAENのアレンジ方法

東京に持ち帰り、井戸シェフに嬉々として報告。
しかし、ここでポツリ。
井戸シェフ「熊、やったことない…」

…いつも無理難題をすみません、でもこの熊肉は絶対おいしいです!と、頭を下げました。


数日後。
思考錯誤の上、こんな素敵なレシピを考えてくれました。
熊/股肉グリル、肩肉の煮込み

Direction by In-yo/ Photo by Yuki Furue

肩肉煮込む前に1日ホエイ、塩、玉葱、大蒜、ローズマリーなどでマリネしておく。ブルーベリーソース、小池糀店味噌、肉出汁、ハラペーニョ、大蒜、玉葱ソテーした辛い食べるソース添える。肉の下に御嶽はくさいをグダグダに煮て、添える。

熊/肩肉のゼリー寄せ

Direction by In-yo/ Photo by Yuki Furue

鹿、熊、猪の出汁のゼリーを作り、そこにリエット入れてゼリー寄せ。
下には焼き茄子を酢橘、塩、オリーブオイル、ホエイでマリネした物をひく。熊肉肩、大蒜、玉葱、クミン、塩、胡椒をリエットのようにして、整形。上にはお米のチップスを添える。

井戸シェフのコメント
まず、熊肉はなかなか出回っていません。 質の良い熊肉が買えるのは、本当に貴重です。旨味がつよくて、力強い味わい。個体差はありますが、臭みが少ないです。一般の方には難易度がやや高いですが、飲食店は是非使ってほしいです。 百田さんがお一人で狩猟から加工まで行われている点も、すごいことです。百田さんのお人柄や背景も含めて、味わって頂きたいです。
・・・うまいっす!

荒々しいどころか、繊細な味!
熊が、こんな形に生まれ変わるなんて… 奇跡です!
イベント本番では、来場者の皆様からも美味しさに感動する声が漏れ出ていました。

おわりに:実際に行くことの大切さ

実際に百田さんとお会いして、肌で森の壮大さを感じて、そのお肉のうまみを味わって、心から感動しました。
直接会うことの大切さ、体験することの素晴らしさを再認識しました。

百田さんに会いたい方、一緒に会いに行きましょう!
長年の知識・経験・熱い想いを聞いたら、きっとジビエのイメージが変わります。
百田さんが提供するお肉を食べたら、たぶん夢中になります。
ご連絡、お待ちしています。


丁寧にパッキングしてお届けしています。
お肉だけでなく、熊の油や鹿の角、熊の胆まで販売しております。

ご注文はお電話でも承っています。
0264-52-3522

熊の胆もあります!
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熊の油も!


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