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アフリカへの道〜その2〜

2013年7月某日


エチオピア共和国首都アディスアベバ


の雨上がり。


ジーンズにシャツを着た小綺麗な格好をした男がハンバーガーを食べようと街に出た。


もちろん携帯のナビなどない。


そういえばあの辺にハンバーガー屋があったな


その不確かな記憶だけで足場の悪い道を歩いた。


エチオピアはちょうど雨季だった。


舗装されている道路は雨季特有のスコールにより冠水。目指すハンバーガー屋へ行くには膝まであろうかと言う路上の濁流を横断しなければならない。



汚れたくねぇなぁ。


そう思うたびに眉間にシワが寄る。


道を渡る方法は二つ。


大きく遠回りをする。


か、


ストリートチルドレンたちがかける可動式の橋の上をわたるか。

である。

橋とはいっても見た目には少しアーチのあるはしごで、木を紐でくくり合わせただけのいつでも壊れます!と注意書きが必要な程ちゃちな橋である。

ストリートチルドレンたちは外国人やお金を持ってそうな小綺麗なエチオピア人の後をつけ、その大人たちが"反対側に渡りたいがどうしたものか"と言う表情ををした瞬間、自分たちは膝まであろうかという道路上の水の唸りへ体を預け


そこにあるはずのない橋をかけるのだ。


そして外国人は子どもたちの善意に大いに喜びThank youとお礼を言い、微笑みを浮かべ橋へと足をかける。するとストリートチルドレンたちは決まってこう言葉を発するのだ。





MONEY...



まさに詐欺すれすれのやり口である。困っているところに手を差し伸べてその手を掴み取ろうとした瞬間、料金を請求する。エチオピアに訪れたばかりの観光客たちはこれにまんまと引っかかるのだ。

当時ストリートチルドレンからこの言葉を聞くたびに嫌な気持ちにさせられていたが、彼らががお金を請求してくることは至極真っ当なことである。なぜなら彼らは知恵を絞り、時間をかけて橋を作り、自らが濡れることも厭わず働いているのだ。要はこちら側がタダで濡れずに渡れると思いあがっていることこそおかしいのである。

特に靴に汚れがつくたびに眉間にシワを寄せているハンバーガー男などは彼らにとってこの上ないカモであった。

ハンバーガー男は、子どもたちにお金を払い、道の反対側へと渡った。


よし。この辺で誰かに道を聞こう。


男はなるべく頭の良さそうなエチオピア人を探した。見分け方は簡単。


服に泥汚れがついていないこと


服にでっかい穴が開いていないこと


スーツを着ていれば申し分なし。


これを満たせばほぼ100%の確率で簡単な英語が話せる。




いた。


ハンバーガー男はスーツを着て歩く、穏やかそうな40代のエチオピア人に話しかけた。


Excuse me. Could you tell me how to get to hamburger shop?(そこゆく紳士の方。あいや失礼。少し小腹を空かせてましてな。何か口に入れたいとおもっていたところハンバーガーなんぞ良いではないかなと思い至った。ご紳士のお時間お取りして大変申し訳ないが何卒ハンバーガー屋への道を教えていただかないだろうか?)




完璧。



習った英語そのまま。先生にも発音は褒められていたし、世界のどこへ行っても通じる英語を喋ったつもりだった。


しかし、


sorrry....?(お兄ちゃんなんて?よう分からへんかったからもう一回よろしい?)


返ってきた返事は意外なものだった。


ん?俺の英語が流暢すぎて聞き取れなかったのか?


Ah...Could you tell me how to get to hamburger shop?(いや、ほら、ハンバーガー屋どこにあんの?)


完全にゆっくりと、一文字も気を緩めることなく発音した。1番大事なhamburgerに関しては

ハンブゥワーガーと

これでもかというぐらいゆっくり丁寧に発音した。しかし返ってきた言葉は


Sorrry....what shop?(ごめん何の店?兄ちゃんなんていうてるからようわからへんのよ。もっとはっきり言ってもらわなこっちも教えようないねんな。頼むでほんま!)


もうカッコつけている場合ではない。

おっけー!

ブレッド!(パン)

ミート!(肉)

レタス!(レタス)

ブレッド!(パン)

ハァァァァム(食べるそぶり)

壮大な身振り手振りを交え必死に伝えた。

ハイパーボディーランゲージ。


すると紳士がようやく理解した。


OH!!ハンバルガル!!



?????????



はんばるがる?


どうやらエチオピアではRの発音をものすごい巻くらしい。

英語    日本語発音    エチオピア発音

Internet      インターネット   インタルネット

Water            ウォーター    ウォルタル


日本のへなちょこラッパーなら裸足で逃げ出すほどだ。


言葉が通じなければ死ぬ。


ハンバーガー男は必死に英語の勉強をした自分を呪った。


時は2012年夏、

ハンバーガー男がまだボンクラ大学生だった頃。

古家伸一郎という男は差し迫ったTOEICの試験に向けて必死に勉強をしていた。

それもそのはず、

英語さえできれば簡単にアフリカでの生活を乗り越えられるとこの頃の僕は信じて疑わなかった。


つづく、、

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