見出し画像

「やる気スイッチ」探し続けていたら、もともとなかったという話

やる気スイッチ 君のは、どこにあるんだろう~
見つけてあげるよ 君だけのやる気スイッチ~

皆さんもご存じの、ある塾のCMで流れていた歌詞です。

息子のやる気スイッチってどこにあるんだろう?
なんてことを、これまで何度夫婦で真剣に話し合ったことか。
それが先日、衝撃の記事に遭遇しました。
なんと「やる気」は幻想だったのです。

スイッチを探し続けた日々

長男は、小4から塾に入り一度は中学受験を目指しました。しかし、その年の夏期講習で気持ちがぷつりと切れ、それから1年以上遊び倒した小5の冬、いきなり中学受験をやると言い始めました。

理由は単純。週末に野球をやりたくなかっただけなんです。

その頃、次男(当時小2)が軟式野球をやり始めることになり、わたしは、次男の付き添いに週末かかりっきりとなるだろうと考えました。夫も単身赴任中で不在ですし、長男が家で一人でいるのを心配して「いっしょに野球やる? やらないなら、なにか塾か習い事でもする?」と言ったのがきっかけだったようです。

長男も平日に野球クラスのようなものに行っていたので、週末もやったらうまくなるよという提案のつもりが、彼は「土日を使ってまでなんで野球やるの?」と考え、それなら勉強→受験するという選択になったようです。

ちょっと待て!そんなに受験はたやすくない。なんといっても小6になるんだし無茶だよと猛反対するわたし。
一度掲げた拳を引っ込められなくなった長男。
そして、「一度やる」と言った限りは途中で投げ出すなと夫。

うんざりするような日々が始まりました。なんせ不純な動機ですから途中で嫌になるわけです。「やりたくない」「やるって言ったやん」の言い合いの日々。そんな中、夜になるとわたしは「やる気スイッチ~君のは、どこにあるんだろう~」を歌いつつ、長男の頭や顔や体中を指で押し続けました。どこにあるんやろ?

残念ながら、結局スイッチは見つからないまま受験。本番に強いタイプなのか、希望のコースではありませんでしたが、なんとか中学受験に合格しました。その彼も今や立派な中学3年生です。
ただ相変わらず「やる気スイッチ」は見つかっていません。

「やる気」は幻想だった!?

「やる気スイッチ」を懸命に探していたのに、なんと…

「やる気」という言葉は、「やる気」のない人間によって創作された虚構
「やる気を出すための方法」を考えるほど無駄なことはない

脳の研究をされている東京大学の池谷裕二教授が、このように書かれているそうです。

なんと…もう衝撃しかありません。
これまで何度、長男の体中を指で押したことか!
でも、これで少し気が楽になりました。どこかにネジを落としてきたのか?(←親なのにごめん)という心配をしてきたけど、そもそも「虚構」だったのですから。

やる気とは幻想のようなものであり、
そもそも何かをやる前からやる気を出すことは不可能

とも池谷教授はおっしゃっておられるそうです。

「虚構」の次は「幻想」!
思わず絶句しましたが、「やる気」は行動を起こすために必要なものではなく、結果でしかない。「やれないのはやる気がないから」というのは人間が作り出した言い訳で、認知バイアスなのだそうです。

教授によると、大脳基底核の一部である「淡蒼球(たんそうきゅう)」という部位が刺激されるとやる気が起こることが研究でわかってきたそうです(「やる気」はまったくないわけではないんですね)。この「淡蒼球」の活性化には、体を動かす=行動することが影響するとのことです。他にも3つほど、淡蒼球を活性化する方法を示されているようですが、また詳しくはご著書から学ばせていただこうと思います。

目標のダウンサイジング

行動を起こすといっても「言うは易く行うは難し」です。
ふと、わたし自身は、なにもしたくない時にどうしているかなと思い返してみました。

ありました。昨日です。週明けから疲れ果ててしまい、どうにもお風呂にも入りたくなかったのですが、「とりあえず今日は湯船につかるだけにするか」と思って重たい体を動かして湯船に入ってみました。すると、体も洗っておこうかな、やっぱり頭も洗っておこうかな、とするすると思考が動きます。「湯船につかるだけ」と目標を小さく設定して、体を動かしたのですが、結果、いつものように全身を洗えていたことに気づきました。

行動するためには、まずはハードルを下げて、小さな目標をたてることから始めるのがいいかもしれません。(例がしょぼすぎてすみません)

勉強であれば、今日はこの問題集を1ページだけ解くつもりで開けることから始めるとか。英単語の学習であれば、1日3つ覚えることから始めるとか。心理的な負担も軽くなり、勢いづいてあと数ページ解いてみようかな、数個覚えてみようかななどと、わたしのお風呂のようにエンジンがかかることもあります。

ゆるい目標を立てる

また、脳科学評論家の澤口俊之先生の「目標値の上下に幅を持たせる『レンジ法』」というのもとてもおもしろいと思います。

レンジ法とは、自分の設定する目標値の上下に幅を持たせる方法のことだそうです。目標において、数字を限定せずにゆるーく幅を持たせた設定をすることで、その下限にはたやすく到達できるので、挫折の機会が減り、さらに頑張ろうという気持ちも湧きやすいのだそうです。

たしかに、今日は問題集を10ページやろうといきなり欲張って目標を立てても、うちの息子は1ページも終わってないのに「あと何ページもある! もういやだ~」となって挫折するタイプです。

自分自身で目標ページ数を設定しても、すぐにその量に打ちひしがれて進めません。あるあるです。

下限目標は1ページでも、まずは達成感が大切なので、親として温かく見守ろうかなと思います。ずっと1ページだとなかなか進まず、親としてはそれはそれで寂しいのですが、いつか上限目標近くにまで進む日が来ることを願って待つようにしたいと思います。

やる気と情熱

長男のやる気について書いていて、「やる気」から「情熱」のことが思い浮かびました。先日、高橋祥子さんの『生命科学的思考』を読んでいたからかもしれません。

この本の中で、高橋さんは、池谷教授の研究に触れつつ、「やる気」を「情熱」に置き換えて考察されていました。

「やる気」を「情熱」にそのまま置き換えれば、
まずは動き出すことで自然と情熱が湧いてくると理解できます。

また、「情熱」の源泉として、

・行動を起こした結果想定される良い未来と、現状のまま行動を起こさなかった時の未来との間の差分の大きさ
・良い未来に向けて行動するときの初速

この2つを挙げておられました。
前者を高橋さんは「未来差分」とも書かれていて、この2つ源泉の「未来差分」と「行動の初速」のどちらもがなければ情熱は生まれないと書かれています。

子どもに対してやる気がないだの言い続けてきましたが、一方、わたしというと、仕事に対する情熱(やる気)がわかないといかにふてくされてきたことか。

しかし高橋さんも、起業した時は最初から情熱を持っていたわけではなかったようです。

一人ですべてやっていくうちに「チームでしくみをつくり、より大きな事業をやりたい」という情熱が湧き出てきました。行動することで初めて見えてくるものがあったり、やりたいことが出てきたりするものがあったりと、結果的に情熱が生まれてくるのです。

これを読んで勇気が出てきました。これだけ知性的で聡明で、在学中に起業までしてしまうというアグレッシブな方でもそうなんですね。

「情熱が湧かないなあ」と思うことがあっても、それはそれと受け止め、まず行動することから始めたらいいのだと思うと、わたしでも頑張れそうな気になってきました。いたって単純です。

ちょっとした行動を起こしながら、今のままを維持していては到達できないより良い未来(未来差分)を思い描く。この両輪を意識して生きたいと思います。

長男の「やる気」から自身の「情熱」の話まで発展してしまいました。
脳科学や生命科学っておもしろいですね。学びは楽しい!

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

この記事が参加している募集

読書感想文

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?