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自分の思いと社会性を両立させて新しい価値の創出へ(本田和秀さんインタビュー③)

自分の思いと事業性、感性とロジックを高いレベルで両立させる

「それ以降は、仕事のあり方も変わりました。1990年代初めのデジタル産業創成期と重なったロサンゼルス時代は、担当の仕事の傍ら、個人的に興味があったアメリカの最先端のデジタル化事情について調査していたことが、帰国後、マルチメディア制作の仕事で若手クリエイターと映像を作ったり、大手メーカー・新聞社と一緒に画像アーカイブの会社を立ち上げたりと、会社の中での新規事業の創出につながりました。」

「また、アート好きが生きて、イタリアの美術館の収蔵品をデジタルアーカイブ化する事業や、その後のニューヨーク赴任時には動画配信事業に携わりましたし、北京駐在時には故宮の宝物をデジタルアーカイブ化して公開するというプロジェクトにも従事しました。ちょうど外交的には日中関係が難しい時期でしたが、文化財の保護という目的を通じて、中国との人材育成や文化交流という役割も果たせたのではないかと思います。」

(北京でのプロジェクトはこちらの新聞記事でも紹介されています)

少し乱暴かもしれませんが、私なりに解釈させていただくと、ロサンゼルス赴任をきっかけに「与えられた仕事をきちんとする」から、「自分の思いとビジネス性が重なるところで、新しい価値を生み出しながら仕事をする」というやり方に転換されたということではないかと思います。

アートを楽しみながら本業で活躍されている方のお話を聞くと、いつも感じることがあります。それでは、自分の「好き」や主体的な思いと、事業性・社会性を高いレベルで両立されているんだなということ。

「これがやりたい」という自分の思いから出発することは、ゼロから1へと新しい価値を生み出したり、将来的にどう育っていくか未知数のものを、内発的動機によって推進するという力があるように思います。一方、新規事業が大きく広がっていくためには、社会的なニーズやビジネスとしての妥当性を検討し、ロジックに基づいてきちんとプロセスを踏むということが必要だと思うのです。

みなさん、その両方を大事にして、うまく両立されている方が多いように思えます。そういう仕事をされている方は幸せだろうなと思いますし、私自身もゆくゆくそういう仕事ができるようになっていきたいと願っています。

Art is Life! 好きなものがたくさんある人は豊か

最後に、アートについてこんな言葉をいただきました。

「人間にとって、アートは経済よりもっと根源的なところにあるものだと思います。好きなものに没頭できる人、好きなものがたくさんある人は、経済的なこととは別の部分で豊かですよね。Art is Life! だと思いますよ。」

満員の野外コンサート会場(ニューヨーク)

「今年から初めてのベトナムに赴任していて、今回はアート系の仕事ではないのですが、世界には多様性があることを受け入れた上で自分の価値観と掛け合わせると、新しい国で仕事をする楽しみがまたたくさん生まれてきます。やはり『アートを本業に生かしている』という意味では今までと全く同じなんです」

ビジネスという土壌で成功しながらも、人間として根源的なことを忘れない。自分の「好き」と純粋な好奇心を大切に大きくなった少年が、いつしかそれを生かして現実世界の多様性を楽しみ、仲間を増やし、社会に新しい価値を生むビジネスマンになられたという、一人の生きざまを見せて下さったような気がします。

本田さん、ありがとうございました!今日もベトナムで「面白いなぁ~」と言いながら活躍されている姿が目に浮かびます。

【本田さんの会社のご紹介】

株式会社プロット
セキュリティシステムを主力とするIT企業。創業50年を超え、次の50年先を見据えた海外事業の拡大のため、本田さんがベトナムで新会社の立ち上げを担当されています。


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