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革新性を獲得するために

 私達は「革新的」という言葉に憧れを抱く。それは「新しさ」とか「未知」とか「未来」とかの、まだ見ぬ先のことをイメージさせる言葉だ。
 だから私達は、どちらかと言えば何かを守り続けるよりも、革新的なものの方が良いと判断する。人間が進化を続け、現代に至るまでにその想いはずっと強まり続けている。

 だが、そう感じていることと、実際の結論は違う。多くの現実に生きる人間は、やはりその大部分は保守的である。なぜなら保守性とは生存本能であるからだ。それは冒険することではない。現状を維持することにより生きていこうとする力だ。
 不確定な推測よりも確実な知見に従って、生命を全うさせようという生きていくための知恵である。それは非常に強力だった。なぜなら「今」は強いからだ。私達の誰一人として「今」という揺るぎない事象を動かすことはできないだろうし、挑戦することも難しいと考える。
「今」とは確定し続ける一瞬一瞬であって、そこに人間が介入する隙間はない。だから私達はそれよりも、「過去」を見る。「未来」は分からないからだ。それよりも、既に分かっていることを材料にしようとするのは自然な成り行きである。

 それによって、私達は既定路線を走ろうとしてしまう。どうしても、分かりきったことを繰り返したくなるのだ。それが即ち保守的ということで、新しさや未知とは反対の考え方である。
 そうすると、私達の憧れる革新性とは、このような生存本能を振り払うことによって生まれるのだと理解できる。保守性という従来どおりの生存戦略を考え直し、新しいものにチャレンジすることによって、今までになかった生き方を模索すること。
 そのような精神によって獲得できるのが革新性である。なんにせよ、それは生きるためにあるものだ。そのための材料が、過去ではなく未来もしくは現在にある時、革新的というのである。

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