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キャラ軸の整理:努力か才覚か

1.たった2種の世界の見方

 非常にシンプルな問いかけとして、キャラクターに努力か才覚かのどちらを信じているのかを聞くことは有用である。それは誰かの人生を変える理由となるものであり、そのどちらの方が、そのキャラクターの人格により影響を与えているのかがよく分かる。
 単純に周囲に努力家が多ければ努力を信じるだろうし、そうでなければ才覚を信奉する。この判断とは、まさに軸と呼べるものであり、キャラクターが周囲のキャラクター達との関係性の中で生活していることを考えれば、努力か才覚かという価値基準はそのキャラクターの世界の色そのものである。
 この2項対立は未来の行く末というよりも、過去の道筋を明らかにするものと言える。どのような生い立ちを送ってきたのか、それによりどのような思想に至っているのか、そしてどんな色でこの世を見ているのか。そういったことが、「努力か才覚か」という軸を整理することで測られる。

2.努力

 努力とは、単に漠然と「頑張ってきた」という根性論的な過去の生活を表すものではない。努力は計画と、試験と、振り返りと、そして修正作業という繰り返しの中で、技術を向上させていく論理的な行動の積み重ねである。だがそれは「正しい」とされる努力だ。実際には、そういった論理性を知らない、苦手、あえてやらないというキャラクターもいるだろう。しかし努力をするキャラクター全てに共通するのは、彼らが何らかの積み重ねの上に、現在の姿をとっているということである。
 そしてその経験を踏まえて、彼らは積み重なったものに親近感を覚え、挫折や失敗に敏感であり、この世に溢れる才覚と運に羨望の眼差しを向ける(結果として、それを遠ざけようとしたり嫌悪の感情を見せたりすることもある)。
 総じて、努力のキャラクターとはその実際に生きてきた年月よりも達観していることが多く、精神的に大人である。物事が必ずしも上手くいかないことに覚えがあり、周囲のキャラクターや物事に対して「積み重ね」があることを理解している。

3.才覚

 才覚とは、何らかの分野における「天才」であることや、その突出した技術がなんのきっかけもなく持ち合わされていることではない。それはそのキャラクターにとっての、もっとも居心地の良い、生き生きとする瞬間のことである。そしてそんな瞬間を、そのキャラクターはいつだって呼び起こせるように心が開かれているということである。
 才覚のあるキャラクターは、その生い立ちが、その分野を中心に構成されているように描写されがちである。そして周囲のキャラクター達も、基本的にはそのように認識していることがほとんどだ。しかし、才覚あるキャラクターは必ずしもそれが周囲に知られているという状態でいなければならないわけではなく、もちろん隠されていてもいい。自分だけの秘密でも。
 しかし才覚とは、必ずその主人を生き生きとさせる効果を伴う。だから才覚あるキャラクターは、その才覚と関連する何らかの事象に触れることで、才覚の片鱗を見せることがある。キャラクターの人生の中で、そういった瞬間があることが、才覚を示す描写としては必要になる。そこに本人の自覚は必要ない。才覚は能動的なものではなく、まさに与えられたものであるからだ。
 総じて、才覚のキャラクターとは、むしろその才覚への自覚を深めていないことが多い。それは発展途上である。未来性がある。だから、むしろ周囲のキャラクターからの証言こそ、その才覚を確固たるイメージにするのに役立つ。それは抽象的で曖昧で、とらえどころがない。実際にはそうでなかったとしても、そうであるという描写が才覚のキャラクターとしての格を保つ。当人がどのように捉えていようとも、才覚のキャラクターとは周囲のイメージこそ、その正体の本質と言える。

4.努力と才覚

 努力とは自覚的で、才覚とは無自覚的だ。
 少なくとも通りの良いイメージとして、「キャラクター」というものの描写として、それはとても正しいものである。
 だから努力と才覚がぶつかる時、努力が上回ることが多いのは、努力のほうが論理的な説明ができるからである。才覚とは、その当人すら自覚していないところに強さと魅力があるものの、そのように説明できないものは、どうしても通りが悪くなる。納得感が薄い。だから才覚は、努力よりも扱いが難しい
 大切なのは、努力が「積み重ね」と密接に紐付いているように、才覚は「未知」と密接に紐付いていることだ。それらから広がるイメージは、努力のキャラクターと、才覚のキャラクターを、単に何かと比べることなく引き立たせるために役立つ。
 努力と才能の2項対立は、よく聞くものでありだからこそ単純そうに思えて、しかしキャラクターにとっては、その対立は彼らを表すのに、最適なものなどではない。

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