一人の食事というのは気楽な反面時に虚無感と辛苦を生むがそれでも堪えねばならぬのが人生である。

 牛皿とワンカップが今日の晩酌である。
 一味を山ほどかけた牛皿をワンカップで流し込む喜びといったらない。独り身ならではの悦楽。脳が馬鹿になるようなこの作法、所帯持ちに真似できまい。

 しかし所帯か。本当はあった方がいいだろうが、相手がいなければできぬのが結婚。俺には無縁の話だ。

 一人が嫌いなわけではない。しかし、貧乏くさい電球に照らされる安い一人分の食事と酒を見ると、寂しさが込み上げてくる。

 辛みの強い牛皿をつまみ、ワンカップを舐める。舐めるだけのつもりが鯨飲。残り僅かな酒の量に虚しさを感じる。まぁいいさ。俺の人生こんなもんだ。酒が減って一喜一憂するのもまた面白い。女が入り込む余地などなかろうよ。

 ワンカップを煽り、空になった瓶にウィスキーを注いでヤケクソ気味に牛皿を掻き込む。溢れる涙は、一味のせいにしておこう。

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