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「まち」と「ひと」が動き出す 三島デジタルシティ計画で実現したいこと

2020年、加和太建設株式会社はITでのまちの活性化を目指し、「三島デジタルシティ計画」をスタートさせました。

コロナ禍の影響を受け、ビジネスや観光の訪問客が激減し、その元気が失われつつある、飲食店が立ち並ぶ三島の中心市街地。一方で高まるワーケーションの需要とまちの空き家を目の前に、私たちはIT・クリエイティブ人材とこのまちの出会いの創出を決めました。

この記事では、弊社社長の河田と、プロジェクトを一緒に推進する副業人材・ことづくりパートナーの神田主税さんに、プロジェクトの詳細からプロジェクトにかける思い、現在の取り組みなどについてお話を伺いました。

今回の話し手

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河田亮一(かわだ・りょういち)/加和太建設株式会社 代表取締役
1977年生まれ、1993年 三島市立中郷中学校卒業。1993年 The Colorado Springs School入学、1997年 Institut auf dem Rosenbergへ編入・卒業、2002年 一橋大学経済学部卒業。その後、株式会社リクルート、株式会社三井住友銀行を経て、2007年 加和太建設株式会社に入社。2015年より代表取締役を務める。

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神田主税(かんだ・ちから)/加和太建設株式会社ことづくりパートナー、三菱地所株式会社
1977年静岡県浜松市生まれ。三島市在住。NTTデータにて、デジタルテクノロジーを活用した社会課題解決を目指しアイデアソンやハッカソンなどの共創型イベントやプロジェクトを仕掛けたのち、三菱地所でまちづくり協議会のエコッツェリア協会に所属し、大手町の活動拠点「3×3 Lab Future」にて、丸の内ワーカーとともに地域課題を中心に社会課題解決に向けてさまざまなテーマに取り組んでいる。

首都圏から100km圏内の地の利を活かし、「働く場所づくり」による関係人口創出を

─ まずは、なぜITでまちづくりをしようと思ったのでしょうか。

河田:きっかけは、新型コロナウイルス感染拡大による三島の中心市街地への影響です。

コロナ以前、三島は歩く人も出店したい人もいっぱいいるような「元気なまち」として語られてきました。けれど、新型コロナウイルス感染拡大によって中心市街地を歩く人が激減し、これまで新幹線の停車駅として来訪客によって賑わっていたことが露呈しました。

このままではいけない、これからは三島に暮らす人たちがこのまちで消費する流れを作らなくてはと調査を始めたところ、車社会のこの地域では企業も人も郊外に集中していて、このまちの人たちに中心市街地に移ってもらうことは難しいことが分かりました。

では、いったいどういう人や企業なら中心市街地に移ってもらえるのか、コロナの影響で地方に移動しやすくなった人たちは誰なのかと考えたとき、ITやクリエイティブの分野で働く人たちのことが頭に浮かんだんです。

ITやクリエイティブの分野で働く人たちは、社会課題に対して自らの持つ専門的な技術や手法を用いてアプローチすることに長けています。もしそんな彼らに三島のことを好きになってもらえたら、まちの活性化にもつなげていけるのではないかと考えました。

一方で僕らはそうした人たちとのつながりがなく、どうしようかと思っていたところ、かねてから三島市や他地域でエンジニアなどIT人材が出会う場づくりをされてきた神田さんと出会い、副業としてこのプロジェクトに関わっていただくことになったんです。

※加和太建設のまちづくり活性化のための副業人材受入制度詳細についてはこちらから。

コロナで地方と関わる余白が生まれた人たちと出会っていきたい

─ 神田さんはどのような思いでこのプロジェクトに関わり始めたのでしょうか。

神田:僕自身、実は移住者なんです。出身は静岡県の浜松市で、首都圏で学生時代と社会人生活を送り、結婚を機に15年前に三島市に移り住みました。

このまちの移住者コミュニティは非常におもしろくて、彼らと仲良くなるうちに三島への愛着も深くなり、専門のITを活かしてまちのために何か活動できないかと思っていたんです。

そのような中で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で首都圏への通勤も週1、2回になり、三島に関わる時間が生まれ、今回の副業を始めることになりました。

もともと前職のNTTデータではアイデアソンやハッカソンの企画や地域活性化プロジェクトの立ち上げを経験していて、現職でも東京大手町のワーカー向けの交流施設で館長をしています。

これまで築いてきた地域活性化や社会課題解決に関心のあるエンジニアとのネットワークを、この機会にも活かしていければと思っています。

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(これまでのネットワークを生かして、早速三島のまちなかでの取り組みも展開する神田さんの様子)


─ 神田さんは三島でのITでのまちづくりに、どのような可能性を感じられていますか?

神田:どんな分野においても、ITを掛け合わせることで事業が大きく成長したり、今までにないサービスが生まれます。将来的にはそうした企業が三島発で生まれるといいと思っています。

けれど、まずは河田社長がおっしゃられたように、ITやクリエイティブ人材の関係人口を増やせたら、このまちがさらにおもしろくなるのではと思っていて。

例えば本業の三菱地所では現在ワーケーションに力を入れていて、首都圏から100km圏内、特に新幹線で移動できる熱海や軽井沢は非常に人気が高まっています。

三島も首都圏から100km圏内、しかも新幹線の停車駅ですから、戦略的にきっかけを作っていけたら企業誘致やワーケーションなどを通した関係人口創出ができるのではと考えているんです。

また、これからはフリーランスに限らず大企業社員のワーケーションや副業、ITベンチャーの地方サテライトオフィスの新設、IT分野の地方起業も起こってくるだろうと思っていますし、個人的な移住相談も多くいただくようになりました。

現時点でも、三島には首都圏への通勤者が多く住んでいますから、コロナ禍で通勤機会が減り地域に関わる時間ができたり、地域コミュニティでの居場所を求めている企業人も少なくないはず。大学もオンライン授業が増え、実家に残っている学生も多いと聞きます。

このようなコロナによって地域と関わる余白が生まれた人たちと、まちの社会課題解決や新規事業創出に取り組んでいきたいと思っています。

新しい人や知識との出会いで、まちが変わり始めた

─現在、どのような取り組みを始めているのでしょうか。

河田:お試しで働けるようなコワーキングスペースやシェアハウスを用意したり、IT企業の人たちへ向けたシンポジウムなどを企画して、まずはIT・クリエイティブの分野で働く人たちがこのまちに訪れる機会を作っていきたいと思っています。

例えば昨年の9月から、中心市街地への事業者誘致につながるスモールオフィス「まちなかオフィス」の整備をはじめました。

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(まずは自社の各部門がまちなかの物件を利用する「まちなかオフィス」も第二弾の物件が完成!この2月から利用をスタートしました。)

河田:実は、弊社はコロナ以前より三島駅前の本社の建て替えを計画していたのですが、コロナ禍で計画の変更を余儀なくされてしまいました。

ただ、この機会をプラスに活かしたいと、1階が飲食店、2階以上が空室となっている中心市街地の物件を中心に、空室部分を建物所有者から当社が借り、オフィスへとリノベーションして事業部や課ごとにそのオフィスを利用することにしたんです。

それだけでなく、このオフィスをわたしたちが利用している最中でも内覧可能にして、新たな借り手がつけば転貸借し、市街地に事業者を増やす仕組みにしました。建築工事も、不動産仲介・管理も手掛けているからこそ自社で一貫して取り組むことのできるアイデアでした(詳細はこちらの記事にも)。

神田:11月には、かつての幼稚園をリノベーションした地域のコミュニティスペース「みしま未来研究所」で、「三島デジタル人材交流会」も開催しました。三島の人も、三島に縁はないけれどこれから関わりたいと思ってくれている人も含め、50名ほどが集まってくれました。

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(三島デジタル人材交流会の様子)

河田:特に三島の商工会議所 まちづくり課主幹 経営指導員の大嶋さんがとても刺激を受けてくれて、イベント後には商工会議所の中でこんな制度を作りたい、こんなイベントをやりたいと提案してきてくれ、先日商工会議所で事業者向けの副業 ・ 兼業 ・ プロ人材活用セミナーを開催してくれたんです。

神田:また、三島で飲食店を創業され現在は20もの店舗を経営をされている株式会社にしはらグループ社長の西原さんも、イベントで聞いた話に大変刺激を受けて、このコロナ禍を乗り越えるためにどうにかデジタルデータを扱うような業態転換ができないかと、ラボを立ち上げて検討していきたいと言ってくれています。

その他市内の経営者の方々も、ITによる業務効率化に強い関心を持たれていて、イベント参加者から紹介を受けた補助金の制度を活用して実際に進めようとされているなど、たった一度の機会でまちにたくさんの変化が生まれています。

河田:新しい出会いが生まれれば、これだけまちの人たちも変わっていくのだなと実感したイベントでした。とても嬉しかったですね。


自分たちが誰より刺激を受けながら、この夢にワクワクと取り組んでいきたい

─ 最後に、これからどのような取り組みを進めていきたいのか教えてください。

神田:これまで大企業のなかで地域活性化に携わってきましたが、企業が地方の小規模ビジネスに投資し続けるためには、地元の人たちと関係性を築いたうえでの新規事業開発が大切だと感じています。

そうした視点を活かしながら、副業人材制度の開発や大企業の課題解決の場の設計に携わっていけたらと思っています。

また、これは個人的な夢になりますが、僕は息子が中学生で、彼が大人になったときにこのまちでIT分野で働く選択肢が増えていたらいいなと思っているんですね。次世代に新しい選択肢を残していくため、力を尽くしたいと思っています。

河田:私たちは建設会社として、このまちにものを作る機会をいただいています。まちが魅力的であることが私たちの仕事の価値に直結していきますし、そんな自分たちだからこそ、まちの課題に対して当事者意識と責任を持っていくべきで、まちの元気にこだわっていきたいなと思っているんです。

IT・クリエイティブ人材や企業を誘致することも、大きなビジョンを描いてからスタートしたというよりは、目の前で起きている課題を解決する一つの手段として手探りで考えてスタートしたことでした。

でも、その過程で神田さんと出会ったり、様々な人や機会とつながって、現在は市長が旗振り役となってスタートした「三島市スマートシティ推進協議会」にも関わらせていただき、行政との連携も少しずつ進められています。

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(先日開催されたばかりのシンポジウムの様子。三島市スマートシティ推進協議会主催で、加和太建設が協賛として応援。神田さんがモデレーターを務めました)

河田:気がつけば、この動きが三島のまちで大きな意味を持つ変化につながっていくのではないかと、夢が広がっている状態です。

どうなっていけるのか、どうしていくのか、大きなビジョンは手探りの状態ですが、私たちはこの夢にワクワクしていますし、このまちの活性化に携わっていけることを心から楽しんでいきたいと思っています。

また、もう一つ弊社の視点として、ITで地方ゼネコンの組織のあり方を変えていきたいという思いがあります。

すでにクラウド型建築施工管理支援システムのサービス(「IMPACT CONSTRUCTION」。詳細はこちらから)を開発して、現在40社ほどの地方ゼネコンにご活用いただいているのですが、さらにこのサービスを加速させていくために、これから出会っていく人たちに私たち自身が何よりも刺激を受けていきたいですね。

─ ありがとうございました!

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