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一人暮らし初年度を経た息子~親目線で~

 友人と話をしながら、もう一年になるんだな。と振り返った。
 昨年の今頃、息子は二番目の志望校を受けに行った。
 志望校も全部自分で決めて、申し込みや願書や手続きや、私にはなんにもわからないうちに全部自分で頑張ったんだったね。二度、遠い地に一人で行って、試験当日も自分で下見した会場に、自分で早起きして食事を済ませて行って、ほんとよく頑張ったよ。

 それでも帰省してきた息子が、近くの小さなスーパーに向かう背中をしみじみ見ながら、「頼もしくなったなあ」とはちょっと思えない。
 まだまだ全然可愛いなあ。

 黒っぽいダウン着て黒っぽいニットかぶって雪の中を歩く大きな塊が可愛い。

 よく言われているように「子供」って意識は、一生続くんだろうな。母も「50代も60代も若い若い! 羨ましいわ」と笑う。

 昨年の3月。
 合格発表があって、保護者がしなければならない各種手続きだけを終えて(私にとってはそれだけでも苦手な作業)入学。

 幸か不幸か授業がすべてリモートとなり、最低一ヵ月は続くそうだったので、5月に入居しようと決めた。入学式とオリエンテーションのために4月はじめ、現地で何泊かした時に物件を観に行くことにした。


・物件探し編

 まずはネットで物件探し。
 気に入った物件から不動産を指定し、連絡を取り、誠実に対応していただいた方を信頼することにした。
 条件を伝えると他にも物件を提案してくれた。
 自分たちの判断で幾つかに絞り、その物件を見学に行くと伝える。

 大切なのは譲れない部分を絞り、そこを妥協しない。これは結婚直後から何度も失敗を重ねて思ってきたこと。
 アパートを探す度、妥協するとだいたい不満だらけで我慢して更新年まで暮らし、それを過ぎる頃にまた引っ越すことになってしまう。

 失敗も自分の実感として大切な経験かもしれないので、まあ参考までに。


 今回は、夫の勝手知ったる場所だったため、地区に関しての夫の意見がとても参考になった。冬は雪も多いし、徒歩でどの辺りが、億劫がらずに通学する気になるか。
 私は家賃の限度額と、一階でないこと。日当たり。収納場所があること。
 息子はお風呂が狭すぎないことと自分の希望のネット環境。

 あとはいつも私がよくわからなくなるのが、ガス環境なので夫に教えてもらいながら、不動産屋さんと確認。

 何件か回り、何とか契約にこぎつけた。

・引っ越し前の確認編

 公共料金の支払いの仕方など、契約した先で説明をしてくれるしわからないことはなるべくそこで聞いておく。
 忘れないように知っておきたいのは、ゴミ収集の仕方と曜日! 意外と曜日だけでなく、分別の仕方が地域によって全然違うので、ネットでも確認。大家さんにも確認。アパートによっては入り口辺りに貼り出してあるところも多い。

 息子は札幌なので、必ず備えついているはずの暖房設備の確認。
 そして窓のサイズ(カーテンをつけるため)。照明器具の有無
 部屋に入ったその日に、それさえあればしのげる物がその三つかな。あと初日を超えるには布団も必要。

 それ以外はその辺で何とか買えるので、準備し損ねても大丈夫。

 契約したら、引っ越しまでの一ヵ月の間に、必要な物を買いそろえていく。
 ネット通販が頼り。

・買い物編

 家電製品と家具。ある程度、調べて値段の比較をし、一つ一つメモを残す。

 まずは忘れないように、カーテンと寝具を最初の段階で購入。カーテンはレースがセットかどうかも忘れずに確認。

 届けてもらう日時もしっかり指定。
 この作業が大変だけど大事。
 欲しい物が引っ越した頃に届かないと、しばらく困る。学生は新生活と勉強への慣れ。社会人は仕事への慣れで大変なのに、あれを組み立てなきゃ、これが届いていないから待機しないと、って煩わしい。
 そのためアパートに到着する日や時間を合わせたいし、その日時に欲しい家具家電が届かないようであれば、その品物以上に到着日時を優先させたので、近い機能と値段の物を探す。

 当時の忙しさを書いている記事がある。

・荷物届いたよ編

 完璧のはずだった。

 安い額だと自分で組み立てる物が多いので、夫と私と息子とでひたすら次々家具を組み立て終わった頃。
 段ボールが一つ残った。

 これについては以前noteに書いたように、ベッドにマットレスがついてきたにも関わらず、ベッドマットレスを一つ買ってしまったのだ。つまりベッドマットレスが二つになってしまった。

 当時の記事。

 手続きやら買い物作業やらで半ばパニックになるから仕方がないとは言え、購入した家具家電に、何が付いてくるかを認識しておいた方が良い。


・いよいよ一人暮らし開始で親の胸の内編

 作業の大変さや、息子が大学の勉強をしながら生活をしていけるのか心配でならず、その心配は寂しさを超えていた。はず。
 なのに。

 「じゃあね。いつでも連絡するんだよ」

 見送るわけでもなく部屋の真ん中に立つ息子が「うん」とこっちを見ている表情を見て、「うわ。そんな顔する? 耐えられない」と慌てる。とりあえず精一杯の笑顔を向けてドアを閉めた。

 ドアに背中を向けて歩き出した瞬間に涙がこぼれて、それから30分間止まらなかった。
 タクシーに乗っている間も、札幌駅についてホームに立っている間も、電車に乗ってからも。
 横にいる夫が落ち着かなさそうに戸惑っているから、早く涙を止めたいと思うのに、全然止まらない。言葉も出ない。マスクがあって良かった。
 
 あんなに心細い表情でいる子供を、遠くに一人残してくるなんて胸がつぶれそう。

 とは言っても、帰宅すると夫と二人の生活は気持ち的にはすぐに慣れる。
 息子とは週に一回、曜日と時間を合わせてパソコンの前に座ろうと夫が約束をとりつけてくれる。
 でも最初の一週間は心配で、ほぼ毎日電話をして様子を聞いていた。
 ご飯は大丈夫か。ゴミは捨てているか。よく眠れているか。

 当時を振り返り、息子は「一週間が一ヵ月くらいに感じた」と言っていた。

 そして「段々、実際の一週間と自分の時間の感覚が一致していった感じ」になったそうだ。
 一か月間の記録を書いている。

・料理編

 兄が社会人になって一人暮らしを始めた頃。初めての自炊で母に電話してきた。
 「お米をいくらといでも白いんだ。いつまでとげば良いの?」
 これを笑い話として、一人暮らしを始める息子に聞かせた。

 でもパソコンの向こうで、息子がまっすぐな目をして聞いてくる。
 「どうやったら油はねしないで炒め物ができるの?」

 家庭科で調理実習があっても、活躍したい子や要領の良い子が調理を独占してしまう。昔も今もそんなものなんだな。遠慮するタイプだったり空気を壊したくなかったりで、手を出さない子はほぼ洗い物程度だ。
 息子は家で一切料理をした経験がないわけじゃないのに、思わぬところで「経験不足」が発揮される。 

 野菜はよく水を切ると良いんだよ。それでもはねるのがひどかったらフタをしてしまえば良い。
 「あつっ! あっつ!! って一人で騒ぎながら炒めたんだ」と笑いながら話す息子に吹き出してしまった。

 レトルトがあるとそれをありがたがり、コンビニ食も多いみたいで、そんなにマメな方ではなさそう。
 ただ時には自炊するようになると、親の作る料理に「彩りを考えているんだね」とか今までにはない気づきがあるようだ。
 「ニラは手でちぎるくらいなら包丁出してきた方が良いね」とか当たり前のことを大発見のように言って、面白がらせてくれるようにもなる。

・小包編

 「親からの小包は見当はずれでウザい」のような意見をネットで複数見かけて、「え。ほんとに? もう少し減らそうかな。そんなに嬉しそうでもないし」と迷ったけど、直接聞くのが一番。

 本人に「何が欲しい?」と聞くと「うーん。何が欲しいんだろう。改めて聞くと思いつかないなあ」と言う。「間隔を少しずつ延ばしていく?」には「えっ! 毎日送ってほしいくらいだから間隔空けなくて良い!」と慌てている。
 やっぱりそれぞれの親子関係、家庭の環境があるもんだよな。息子は面倒くさがりだし、送っている物のポイントはそれほどズレていないようだから、このままで良いらしい。
 帰省すると、コンビニやスーパーに連れて行って「こういうのってどうお?」などと具体的に聞くと、子供が何を必要としているのかがよくわかって良い。

 なお、郵便局で送る時に前回と同じ行き先なら、前回の控えを持って行くと、たった数十円だけど安くなる。


・帰省編

 何度か帰省してくれているけど、親側は正直、生活リズムが変わるし家事が増える、って頭をかすめる。
 それでもその気持ちを超えてくるくらいに、子供に会えるのは楽しみなのだ。
 旅行する日を迎えるように、もう二週間くらい前からワクワクが止まらない。浮足立つ気持ちを、子供に引かれないよう抑えながら待っている。
 とは言っても、それは「ちょっとの遠出くらいじゃ会えない」距離にいるからなのかもしれない。いつでも会えるなら意識はまた違うんだろうな。

 こんな気持ちを経験してみると、親とそこそこの関係を築いているのなら、子供側は少し面倒でも是非顔を見せるのをおススメしたいと思うようになった。(感染症が落ち着いてから思う存分に)
 いることで何かの意味があるとか役立つとか関係ないから。理屈じゃないんだよ。普段は学生や社会人、頑張っているんだから。
 いざという時に何か助けてくれるとありがたいかな。それだけ覚えてくれていれば良いや。

 子供の側はと言えば、帰省してしばらく緊張感が続くのか、いつも数日間はほんの少しピリピリしている。自分でそれくらいできるようになったんだからという強がりと、やってもらいたい甘えとが入り混じっているように見える。
 親としてはあまり態度を変えないように、いつも通り振舞う。夫は全然気にしないタイプなので救われる。

 あと息子は、いつも一人暮らしに戻るちょっと前になると寂しがるので参る。もちろん感情や気持ちを表出してくれるのは嬉しいので、受け止めるけど、それなりに気持ちを刺激される。
 もし子供側でこれを読んでいる方がいらしたら、どうぞその気持ちは表現してほしい。参りはしても、全然受け止めるので我慢しないで良い。そんなの言えるような間柄じゃなければ友達とかでも良いから。「寂しいなあ」って気持ちを吐き出せる人がいると良いな。
 こちらは多分、子供が思っているほどはあまり寂しくはない。そりゃ少しは寂しいけど、子供が訴える寂しさより「とにかく心配」が強い。
 体調もそうだし、掃除や洗濯、料理を頑張ったり滞らせたりするんだろうなあって。寂しがった時の気持ちを想像してみるのもまた胸が痛む。
 でも本人は意外と、一人になるとすぐにその状況に慣れるみたいで、サッパリした表情と声で話してくるのでホッとする。

・訪問編

 息子が一人暮らしを始めて半年ほど経った頃。私の友人が、一人暮らしをしているお子さんの部屋を訪問したと話してくれた。その惨状を聞いて、息子の部屋も心配になってきた。

 一人暮らし経験のある人たちに話を聞いて、どう行動を取ろうか考え始める。
 息子と母親の距離感は、自分の親子形態と似ている男の子に意見を聞くのが参考になって良い。
 我が家は「めっちゃ話が合う!」わけではないけれど、今の段階では時々思春期の雰囲気出つつも、オモシロ穏やかな親子関係なので、そういう親子関係を築いている人を探し、参考にする。
 「半年くらいすると家事が段々投げやりになっていく」「本人に聞いて、ダメそうじゃなければ行っても全然良い」話を聞いた。直接誰かに聞けなないなら、ネットで似た親子形態を築いている人が見つからないだろうか。探してみて参考にするのが良い。
 夫は「行ってあげなよ」と俄然乗り気だし、息子に提案してみる。
 観たい映画の映画代も出してあげるから観に行こうよと、ちょっと甘い条件も出すと「なるほど。悪くないねえ」と言う。

 ほぼ掃除に費やしたけど、お風呂は割とキレイだったしトイレも汚くなかったのは褒められる点だろう。
 掃除機は自分が目に入るところしか、かけていないし、台所や排水口もどうやらその意味で掃除していないのでそれなりに疲れたけど。
 他に洋服がめちゃめちゃでどこに何が入っているのか自分でわかっていなくて脱ぎ散らかしなので、そこに何が入っているかの表示シールを貼ってみた。まあその後の期待はしてないけどね!

 あった方が良いけど無くても何とかなるものに関しては、そのまま無理してでも生活するので、それで放っておくのも良い。
 100円ショップでグッズを揃えられるから、整頓のために協力するのも良い。いずれにしてもそこで今後も生活するのは子供本人だと、手伝いに行く時はそこを忘れないようにする。


 この時は1週間ほどの滞在だったので、着いて翌日には寂しがられてしまったけど、こちらに帰宅してすぐ連絡入れると、すでに一人暮らし生活を満喫しているのだった。
 意外と平気な息子にまた安心する。

***

 こうやって振り返ると、自分の好きなこと以外は目に入りにくい息子が、あれもこれもと、よく頑張っているなあと感心するので褒めるようにしている。

 親はある程度、子供を手伝ったら、あとはただ見守るだけ。心配ではあるけど、自分と同じ境遇の親たちと心情を話し合ったり、情報を交換したりしながら、互いを励ます。
 自分だってあれもこれも経て今があるのだから、あの頃の気持ちを思い出そう。何とかなってきたものだよね。

 子供が自分で実感する「自分の人生」を歩むのはこれからだ。


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メディアパルさんの企画に参加しています。
昨年から始まった息子の一人暮らしに翻弄されてきて、記事をたくさん書いてきました。タイムリーなお題企画だなと思いましたが、情報や気持ちをまとめるのは、想像以上に楽しい作業でした!
メディアパルさん、ありがとうございました。



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読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。