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飲酒と、勇気や自信について、観ていなくても考えてみてほしい~「アナザーラウンド」~

 お酒は楽しくほどほどに。
 軽いメッセージを含んだコメディ映画だと思っていたらちょっと違った。

 ネタバレをあまり読まないようにしているけど、読んでも気にしない。忘れるからだ。登場人物の名前でどうのこうの書いてあっても、全然イメージがわかない。カタカナも苦手だから、名前を見ても覚えていられる気がしない。誰かが亡くなってしまうらしいとか、そういうのは心に残ってしまうけど誰だったかも結局覚えていない。

 そしてそうやって挑むと、想定外にオソロシイ映像を観てしまったり、観なきゃ良かったと後悔したりもする。
 ディズニー映画では、飽きもせずミスリードされてヴィランを勘違いし、「ああまたヤラレタ!」と頭を抱える。

 全部含めて映画の楽しみでもあるんだけど。

 こんなに「むーん」とうなる映画だとは。

 ※ネタバレあります。


 マッツ・ミケルセン演じるマーティンは高校教師で、生真面目。授業は面白味がなく、プライベートでは家族と、特に奥さんとすれ違い。
 その高校内の先生同士、親しい4人組で誕生会をした時に、アルコールの話になる。
 ノルウェー人哲学者の理論を証明する実験だと言って、血中アルコール濃度0.05%を保った状態で授業に臨んでみようと。
 4人それぞれがいつもと違った、工夫を感じられる楽しい授業や指導を繰り広げ、自分の状態と周りへの効果に味を占めた面々は、その量を増やしていく。
 マーティンも授業や生徒との関係だけでなく、夫婦関係も取り戻したかに見える。
 
 でもそうしているうちに、互いの様子や自分の失敗に危険を感じ「ここらでやめよう」と声をかけあう。

 ところが時すでに遅しのメンバーがいたのだ。


 観ながら、そんなのアル中になるよって当たり前に思ったわけで、観ている側も途中から楽しくなくなる。授業は楽しい方が良いけれど、でもそんなほろ酔いで授業されたくないと私なら思う。こっち側にバレなきゃ良いんだけども。いやほんとに。授業受けている側が全然気が付かないなら構わない。だってわからないんだもの。
 でもお酒にまかせないと、そんな部分や言葉が出ないのかと気づいたら悲しい。
 夫婦関係だって。
 大事な人を相手に、そんな簡単に言葉を引っ込める日常なのだろうか。

 デンマークの国民性や文化も知れて興味深かったと同時に意外だった。
 子育てのワンオペな感じとか。ダンナさんの立場とか。

 勇気と楽しむ気持ちと自信。

 お酒がないと出ないのん?
 お酒があるから出るのん??

 出ない勇気に心折れる日だってあるし、自信だって全然ないけど、そんなのむしろ日常じゃないか。
 それでもアルコールなしで出さないといけない勇気もある。楽しむ気持ちだって自分の頭で考え工夫しなければならない。

 子供と接していると、照れも自信のなさも、時には面白くない気持ちも超えて、「気持ちを伝えよう」「勇気を出そう」「笑ってもらおう」「工夫しよう」「そのために考えよう」の連続だ。

 映画の中にも出てくるけど「文豪だって、飲酒で名作ができた」と言われる。
 「飲んでなかったらもっと素晴らしい作品が書けたのかもしれないのに。とも言われているよ」と夫が言う。

 夫に関しては時々飲み過ぎないか心配だけど、態度は変わらない。夫の飲んでいる時の「変わらない」様子を見て、そして夫の育った家庭の話を聞いて、飲酒や酔っぱらうことについて考えるようになった。

 夫の家庭のようなケースを知らないのであれば、その面では幸せだろう。
 酔っぱらって本人は楽しいかもしれないけど、周りはそうでもないってけっこうある。
 その雰囲気を楽しみたい者同士の話じゃなくて。
 酔っぱらった気持ちにまかせた言葉って、どこまで真実なのだろう。どこまでも真実だとしたら普段の言葉は? 普段、出ない言葉は出さない方が良いかもしれない。
 勇気は、お酒の力じゃなくて自分で出したい。

 そんなこと書いている私もお酒の力を借りようとした過去はある。でも元々が強かったから、借りられなかったのだ。若い頃の私がお酒の力を借りようとすると、体調の悪い時に吐くほど飲まないといけない。自分を傷つけたい時期は過ぎた。全然わからないわけじゃないのよ。お酒による失敗を、小さなものなら流したい気持ちだって当然ある。
 そういう時期があってこそ、「どうしても」必要ではないんじゃないかって思うようになったわけで。


 デンマークでは、16歳から飲酒が許されているそうだ。

 何度か書いているように、酔っぱらったムードじゃなく、誰かと少し打ち解けた和やかな気分になるなら良いだろう。
 でも年齢を低くしているとなるとますます理由はわからない。自分で持つ責任の話なら、別の場面でたくさんある。体が成長段階にあるその年齢で、思春期の精神状態で、飲酒の判断をすっかりまかせる大人に責任はないのだろうか。
 映画では卒業試験なるものに影響していたけど、試験で本領発揮できないのをお酒に助けてもらうってどうなのだろう。
 子供たちの気持ちが辛い。そう思うシーンが多かった。


 ネタバレほどほどに軽く楽しく観る映画にしては、テーマも起きる出来事も重たくて観終わった後、どんよりした気持ちになる。ちょっと精神状態を整えて観た方が良いのかもしれない。
 これを観て多くの人がアルコール万歳! みたいに思えるのなら、私の解釈は違う。

 入り込んで考えさせられた意味では、観て良かったと思う。お酒は「誰かと和やかに楽しむためにならね」ってやっぱりそんな風にも思ったし。
 色んな解釈があるだろうけど、でも人の命がかかっているんだもの。重たいテーマだよ。

 映画館を出た後。家庭で良い思いをしなかった夫は「最初からずっとイタイなあって観てたよ。僕も飲むし、自分の生い立ちもあるしなあー」と苦笑いしていた。


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