ショートショートストーリー「ジミーベア」
ある国の大統領が熊狩りに行った。
しかしいっこうに熊を仕留められず業を煮やしていた。
あせった側近は、近くにいた小熊を大統領の前に放し、撃たせることにした。
しかし大統領は「こんなかわいい小熊は撃てぬ」と、その小熊を山に放した。
小熊は一度振り返り、ペロリと舌を出すと嬉しそうに、およそ熊とは思えない身軽さで木から木へと飛び移り、山奥へと帰っていった。
そのニュースは国内に広まり、心温まる話として大統領のイメージをアップさせた。
彼の愛称でもある「ジミー」の名をとり、「ジミーベア」という小熊のぬいぐるみも発売され、またたく間に大ヒットしたのである。
さて、その数年後、国内を悲しいニュースが響き渡る。
大統領が山で狩りの最中、熊に襲われて死亡したというのだ。
目撃者の話によると大統領を襲ったのは大人の熊で、なんの躊躇もなく大統領を襲ったあと、一度振り返り、ペロリと舌を出すと嬉しそうに、およそ熊とは思えない身軽さで木から木へと飛び移り、山奥へと逃げていったという。
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