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読書記録「モモ」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、ミヒャエル・エンデ 大島かおり訳「モモ」岩波書店 (2005)です!

ミヒャエル・エンデ「モモ」岩波文庫

・あらすじ
ここは都会からは遠く離れた円形劇場。何世紀も前はここに人が集まり、芝居を観ていたものでしたが、今ではすっかり廃墟となっています。

そんな廃墟に突如女の子が住み着いているという。名前を「モモ」といい、つぎはぎだらけのスカートと、男物のコートを羽織っていました。

近くの住民に話を聞いても、どこから来たのか、両親がいるのかもわからない。ただ、住民たちも貧しい者同士であったため、皆で助け合って生活していこうと決めました。

ところで、モモには不思議な力がありました。それは魔法が使えることでも、未来を予言することでもありません。それはほかでもありません。あいての話を聞くことでした。

モモに話を聞いてもらうと、引っ込み思案の人は勇気が出て、悩みのある人は勇気に湧いてきます。一体誰がモモのように話を聞くことができるでしょうか?

一方、モモの近くに灰色の影が忍び寄る。灰色の車に乗り、灰色の書類カバンを持ち、そして灰色の葉巻をくわえた、灰色の紳士あらわれたのです。

彼らは「時間貯蓄銀行」と名乗り、人間たちに時間を倹約するように持ちかけます。時間を倹約することにより、将来膨大な時間という自由を手に入れることができると。

たちまち人間たちは時間を倹約するようになりました。1分、1秒すら無駄にすることなく働くも、時間はいつまでも貯まることなく、不機嫌で怒りっぽい人間ばかり増えてしまいました。

ある日、モモの前にも灰色の男が現れました。だがモモは灰色の男に惑わされません。しかも、その灰色の男はモモに話したことで、うっかり"本当のこと"を話してしまいました。

それは、人間から時間を全て奪い取ろうという計画だったのです。

不思議な女の子モモと時間泥棒である灰色の男たち、果たして、時間とは一体何なのかを問う。

時間を貯蓄するとは一体何なのだろうか。

そもそもせかせか急いで働いたところで、時間は平等に割り振られているわけであり、過ぎ去った時間をどうやって貯蓄するのだろうか。

ただ、自由な時間が有り余る状態は、お金を稼いだ先に手に入ると認識している人は多い。

テレアポの仕事をしていた頃、稼ぐことが第一の成果主義気質であったこともあり、売れる営業マンはとにかく"自アポ"を意識していた。要は自分でアポイントを取って、自分で商談を成立させるのだ。

テレアポでも悩んでいる時間が無駄だとよく言われた。電話が切れたら10秒後に自動でコールを掛ける"自動着信装置"は悪魔の産物だと呪った(あの頃は道端で溺れそうになるほど致死的退屈症になりかけた)。

なぜそこまでして時間に縛られねばならないのだろうか。

それはお前が給料をもらって働いているからだよと言われたら、ぐうの音も出ないが、そこまでして時間を倹約した先に何があるのだろうか。

人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんできめなくてはならないからだよ。だから時間をぬすまれないように守ることだって、じぶんでやらなくてはいけない。

同著 236頁より抜粋

時間を決めるのは、他ならぬ自分だ

そりゃ生きていくためには稼がなければならない。昔よりも物価が上がっていることは確かだし、かと言って働かないで生きていけるほど社会は甘くない。

それはそれとして、もっと自分の時間を持つことが大事なんだと思う。

「モモ」の中では、今までよりせかせかと働き、食事や余暇を楽しむ時間が殆どなくなってしまっている。時間貯蓄銀行に取り憑かれ、人生を楽しむ余裕を失ってしまったのだ。

時間は有限である。だからこそ、時間をもっと楽しんで使うべきである。

それは今が楽しければいいというわけでもなく、日々ちょっとしたことにも感動するゆとりを持つことが大事なんだと思う。

そういう心のゆとりを持って生きていきたい。それではまた次回!

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