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本を選ぶ、本を探す

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

ビジネス書や自己啓発本のコーナーにある読書術に関する本を読むと、大抵の本で「目的意識」が大事だと記載されている。

自分がこの本を読んでどうなりたいのか、どう成長したいのかあらかじめ決めた上で本を読み始めることが大切だという。

確かに自分がどうなりたいかは大事なことである。スキルアップするにしても、転職するか自営業になるかでは、若干方向性が異なるように、自分の将来思い描いている姿から逆算して本を選ぶことは大切であろう。

だが、時には何の脈略もない本を選んでみることも大切だと思う。

先日、河合隼雄さんと茂木健一郎さんの対談を記した「こころと脳の対話」新潮社 (2008)を読んだ。会社のお偉いさんが推奨している本の中で、読みやすそうな本から選んだ次第。

その中で、臨床心理学に基づく心理療法として箱庭が出てくる。セラピストが見守るなか、砂の入った箱の中に物を置き、心のなかにあるものを表現するらしい(私は専門知識がないため、詳しくは調べていただきたい)。

箱庭に置くものは、河合さんのオフィスにある何千もの置物の中から選ぶのだが、注目すべきはなぜそれを選んだか、どうしてそれを手に取ったのかであるという。

あれだけアイテムがあるのに、「これだ」と思うというのは、考えてみたら傑作でしょう。それ以外のものを使う気にならず、「これだ」って思うんですから。

同著 105頁より抜粋

例えば、大きな本屋さんや神保町を歩いているときなど、時折自分でも何で気になったのかわからないと思えるような本に触れる時がある。

大体は前に紹介してもらった本であるとか、自分の将来の役に立ちそうだからという理由で選ぶことの方が多いのだが、時折そのような本に出会うこともある。

それらの本は、意識はしていないものの、無意識のうちに重要視しているものかもしれないと言う。

ただ、あまりにも一瞬のことで、捉え難く、深く考えることもないため、大抵の場合はスルーしてしまうことが多い。

箱庭療法では、一つひとつの表現に対して何故かを深掘りしていく。すると受動的に選んだのではなく、能動的に探していたのではと気づく。

「世界」と言う場合、僕らは意識・無意識、全部含めて世界を考えているわけですから。だけど現代社会で生きるには因果関係のほうが便利だから、…それしか思考パターンとして動かしていない。

同著 106頁より部分抜粋

だが、多く場合、原因と結果の中で物事を決めることが多い。

この本を読むことにより(原因)、このような成果を生み出す(結果)。または、このような状態になりたいから(結果)、この本を今読むべきである(原因)。

繰り返しにはなるが、読書を自らの糧にするならば、そのような逆算思考や因果関係は必要となる。

しかし、時には自分の無意識がどのような本を求めているのか、探してみるのも悪くないではないか。

おそらくそのような本は、すぐ見つからないかもしれない。因果関係を無視して本を選ぶのは、非常に労力がいる。

だからこそ、現代にはそのようなゆとりを楽しむのも悪くないのではなかろうか。

少なくとも、会社のお偉いさんがどうしてこの本を勧めていたかは、未だに疑問ではあるけれども、これもまた偶然性かもしれない。それではまた次回!

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