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読書記録「夜行」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、森見登美彦さんの「夜行」小学館 (2019) です!

森見登美彦「夜行」小学館

・あらすじ
大学生だった大橋は、英会話スクールの仲間6人と鞍馬の火祭を訪れた。祭りが終わり帰路につく途中、一緒にいた長谷川さんが姿を消した。まるで神隠しにでもあったかのように。

あれから10年が過ぎ、また鞍馬の火祭へ行かないかと誘われる。5人の仲間とともに叡山電車に乗り込むと、ふと10年前に姿を消した長谷川さんのことを思い出す。彼女は今どこにいるのだろうかと。

宿に着くやいなや、ぽつりぽつりと雨が降り出す。みんなで鍋を囲んでいる間に雨は一層激しくなり、これから火祭を見物すると言うのに、誰一人として支度をせず往生していた。

大橋はふと昼間の不思議なことを思い出す。柳画廊というアトリエにて、長谷川さんに似た人を見かけたと。そしてその画廊には、岸田道生と「夜行」という連作絵画が飾られていたと。

岸田道生と聞いて仲間の5人がドキリとする。かつて自分たちも「夜行」を見たことがあると。

そして彼らは一人ひとり、「夜行」にまつわる不思議な体験を語りだす。物語は尾道から始まり、奥飛騨、津軽、天竜峡、そして鞍馬へ。

果たして、岸田道生とは一体何者なのか。また、「夜行」とは一体何なのか。そしてあの人は、一体どこへ行ってしまったのか。

京都一人旅のお供に忍ばせていた小説。怪談チックな物語に、京都の暑さを忘れるかのごとく読み耽った次第。

京都というのは不思議な場所だ。私は霊感とかがあるわけでは無いが、どこかここではない場所へ誘うような空気がある。

かつて清凉寺(嵯峨釈迦堂)の阿弥陀三尊像を見た時、正直震えた。一言で言い表すのが難しいし、適切な言葉ではないと思うのだが、これは敵わないと思った。

そういう話って、相手に信じてもらうために話すものでもないし、いくらでも盛れることであるから、そこから何か学べるものでもない。

でもそのような体験をしたことは嘘ではない。また、少なくとも、そこから無事に帰れたということでもある。

この作品のタイトルにもなっている「夜行」。宇宙から見たら、世界は常に夜である。"真夜中の世界に宙づりにされているような"世界を我々は生きている(同著より抜粋)。

だから奇妙なことが起こっても不思議なことではない。昔から神隠しや妖怪などの言い伝えがあるように、現代でも不思議なことが起こっても何らおかしなことはない。

では本当に神隠しにあったとしたら。この世とは別の、現世でもあの世でもない世界に誘われたとしたら。帰ってくることはできるのだろうか。

もちろん、そんな世界が本当にあるのだとすればの話だが。しかし、私たちはそれが本当にないと、どうして言い切ることができるだろうか。

大分脱線しましたが、京都の思い出が抜けていないということで。それではまた次回!

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