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読書記録「ロング・グッドバイ」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、レイモンド・チャンドラー 村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」早川書房(2010)です!

レイモンド・チャンドラー「ロング・グッドバイ」早川書房

・あらすじ
私立探偵のフィリップ・マーロウがテリー・レノックスと出会ったのは、「ダンサーズ」で彼が酔い潰れているときだった。

レノックスは酒に酔っても礼節さを失わず、年齢に不似合いな白髪で、なにより顔の傷跡が目立つ男だった。

その後も何度かマーロウがレノックスと出会い(正確には"保護"し)、いつの間にか二人で飲むほどの仲になっていた。「ヴィクターズ」で彼はギムレットを飲んでいた。だがそれももう1ヶ月前のことだ。

ある朝、顔面蒼白のレノックスがマーロウの自宅まで押しかける。手には拳銃を握り、訳ありそうな様子で。だが経緯は聞かず、ただ友達の頼みという理由でティファナにある空港に彼を送る。直接金は受け取らなかった。

自宅に戻ると警察が待ち構えていた。大富豪の末娘でテリー・レノックスの女房である シルヴィア・レノックスが何者かに殺害されていたと。事後従犯の罪でマーロウは留置場に捕らえられる。

数日留置場で絞られたと思いきや、突如事件は幕を閉じる。メキシコのとあるホテルにて、書き置きを残してレノックスが自殺したという。そしてこの事件に関して余計な詮索をするなと、各方面から忠告された。

釈放されて数日後、出版社より探偵としての仕事を依頼される。姿をくらました作家 ロジャー・ウェイドを探し出してほしいと。後々、そしてたまたま知ったことだが、彼らはレノックス夫妻のことを知っていた。

あるいは、全て辻褄通りだったのかもしれない。レノックスの死の真相やいかに。そして長いお別れ(ロング・グッドバイ)とは。

池袋の新文芸坐にてエリオット・グルード主演「ロング・グッドバイ」(1973年 上映)を先に観ており、そう言えば前に読書会で貰ったことを思い出して、この度紐解いた次第。

だから実を言うとオチは分かっていたのだが、映画版とはまた異なる展開(特にラスト!)を2度も楽しめた。流石に600ページ近い物語は長い旅ではあったけれども。

読んでいて思うのは、主人公であるフィリップ・マーロウがいささか捕らえどこがないことである。ウィットの効いた言い回しにクスッとするが、そのせいかマーロウの考えがよく分からないことが度々ある。

先の先まで読めているというのだろうか。チェスのように相手の次の手を読めているようで、一方その日暮らしのような態度を取る。

面倒事を起こさないためにあらかじめ布石を打っているくせに、酔っぱらいを助けるような面倒事を引き受ける。

世間の多くの人々は、自分のエネルギーの半ば近くを、もともとありもしない威厳を護ることに費やしつつ、汲々と人生を送っているのです。

同著 295頁より抜粋

もしかしたら、"テリー・レノックスの件"に関しても、端から彼の中で結論が出ていたのかもしれない。ただそれを根拠のないまま主張しても意味がないことを、探偵としても分かっている。

誰が相手だろうが物怖じしないし、万が一の護身術も心得ている。何よりいざという時に機転が利く。自己評価している以上に、タフな奴なのだ。

こういう生き方も悪くない。それではまた次回!

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