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読書記録「成瀬は天下を取りにいく」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」新潮社 (2023) です!

宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」新潮社

・あらすじ
7月31日 中学2年生の成瀬あかりは、今年の夏は西武に捧ぐと決意表明する。

44年間の歴史を経て、2020年8月末に閉店する西武大津店。滋賀県のローカル番組「ぐるりんワイド」が西武大津店から生中継するらしく、成瀬は毎日それに出演すると。

また成瀬が変なことを言い出した。成瀬の決意を聞いていたのは、同級生で同じアパートに住む自称凡人の島崎みゆき。

成瀬の言うことはいつもスケールが大きい。シャボン玉を極めるだの、期末テストで500点満点を取るだの。最近は200歳まで生きると言っている(それを見届けられないのが残念だ)。

成瀬が言うに、100個大きいことを言って、1つでも叶えたら「あの人はすごい」になる。私からしたら、それはホラ吹きと変わらないのだが。

中継初日は8月3日。宣言通り成瀬はテレビに映った。なぜか西武ライオンズのユニフォームを着て、まっすぐカメラ目線で立っていた。

毎日欠かさず、収録の時間帯に西武大津店を訪れる成瀬を見て、今回は最後まで見届けられるかなと島崎は思った(「ありがとう西武大津店」より)。

東京読書倶楽部の読書会でもたびたび紹介されることもあり、会社の図書スペースの新刊コーナーで見かけたため紐解いた次第。

2024年の本屋大賞を受賞した話題作のため、お読みになった方も多いと思われる。とにかく成瀬あかりの言動に魅了される。

周りからどう思われようとも(そもそも成瀬はあまり周りを見ないのだが)、自分が決めたことをやり通す。そのための努力は決して惜しまない。

200歳まで生きると決めたからには、規則正しい生活や適度な運動を怠らず、事故が起きそうな場所には自ら近づかない。

そんな成瀬の姿を見て、読書会で紹介される人の中には「成瀬のような生き方に憧れる」と仰る方も少なくないし、その気持ちは分からなくもない。

こんなふうに目標とも夢とも野望ともつかないことを気安く口に出せたらどんなに楽だろう。……わたしが反論したところで成瀬が考えを改めるはずがない。

同著 138頁「線がつながる」より部分抜粋

夢や目標は大きいほうが良い。だが大きければ大きいほど、周りから馬鹿にされたり、ひどい時には足を引っ張られる。

200歳まで生きるにしたって、長寿のギネス記録を超えるならまだしも、流石に「そんなことは無理」かもしれない。

でもそれは、成瀬のようにやってみてから言うことだ。そりゃビックマウスで終わるかもしれなくても、その夢を叶えようとも思わない人が、とやかくいうことではない。

成瀬はそれで構わないと思っている。たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。

同著 187頁「ときめき江州音頭」より抜粋

ただ、大きな夢を宣言していれば、きっと1人ぐらいはその夢を見届けたいと思う人がいるかもしれない。

夢を叶えることを応援する人よりも、(本人にその気はなくとも)邪魔する人の方が多いものである。

だからこそ、成瀬のように己を貫き通すことも大事だが、時には島崎のような協力者がいることに気づくことも、夢を叶えるためには必要不可欠なのかもしれない。

いやはや、この調子で続編も読もうかしらん。それではまた次回!

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