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読書記録「星の子」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、今村夏子さんの「星の子」朝日新聞出版 (2017) です!

今村夏子「星の子」朝日新聞出版

・あらすじ
幼い頃からわたしは体が弱かったそうだ。生後半年目にできた湿疹が身体全体に広がり、お医者さんに診てもらっても治らず、夜泣きも酷く、家族も困り果てていたらしい。

そんなとき、父は会社の同僚の落合さんから「水が悪いんです」と言われる。この水で体を清めれば、たちまち治ると。

藁にもすがる思いでわたしの体を洗うと、なんと3日めには赤みが引いていき、2ヶ月目には完全に治ったのだという。

宇宙のエネルギーが宿っている水は、「金星のめぐみ」という名前で販売されいる。この水のおかげで湿疹が完治した話は、奇跡の体験談として会報誌に掲載されたそうだ。

それから両親は、金星のめぐみを勧めてくれた落合さんと非常に仲良くなり、落合さんが信じているものを、両親も信じるようになった。

中学生になったわたしは、今でも金星のめぐみを飲んでいる。集会に行けば仲良しの友だちにも会える。学校のみんなからは「あやしい宗教」の家族と指をさされることはあるけれども、それで不自由したことはない。

ただ、わたしにとって今ここにいることは、幼い頃からそうだったからであり、信じているかと聞かれたら、わからない…。

だいぶ前に読書会で勧められてから気になっていたところ、「むらさきのスカートの女」を読んでから俄然今村さんの作品を読みたくなり紐解いた次第。

読書会を主催していると、それはまぁ色々な人に出会う。明らかに何かに陶酔している人とか、急に師匠や恩師とかいい出す人とか。否定はしないけれども、雲行きが怪しくなることもなくはない。

でもその人にとっては、そのモノだか人だかを心から信頼しているのだから、こちらから何か言うつもりはない。何かきっかけがあって信じるようになったのだから、その人の選択である。

でも、幼い頃からその環境や状況が当たり前であったらどうであろう。

周りから見たら変だと思われること一つひとつが、当の本人にとっては当たり前のことっであって、疑問にも思わないのかもしれない。

常識というものは多数派意見で成り立つという。全体的に見たら少数派の人々の集まりだとしても、その少数の世界しか知らなかったら、当然その世界の考え方が自分にとって常識となる。

ただそこに、いわゆる信仰があるかは別なのかもしれない。

当たり前過ぎて見慣れたものを、両親と同じように見れるとは限らない。それを踏まえると、最後のシーンは色々考えさせられるところはある。

個人的な解釈としては、全てリセットすることは難しいかもしれないが、少なくとも、前に進むようなきっかけになることを望む。それではまた次回!

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