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読書記録「桐島、部活やめるってよ」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、朝井リョウさんの「桐島、部活やめるってよ」集英社 (2012) です!

朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」集英社

・あらすじ
バレー部のキャプテンだった桐島が突然部活を辞めた。理由は誰も知らないけれども、部内でも孤立している印象はあった。

バレー部の小泉風助ふうすけにとって、桐島とはリベロのポジション争いをする間柄だった。いつもキャプテンの桐島が選ばれていたが、彼がいなくなったことにより、繰り上げ式にスタメン入りした。

正直、嬉しかった。桐島とは仲の良い方だったが、桐島がバレー部にいる限り、俺は試合に出られるチャンスはほとんどなかった。

だからこそ、次の試合では思う存分力を発揮しようと思った。桐島の代わりではなく、風助として。

だけど、キャプテン不在、いや、桐島がいなくなったことにより、風助のなかで、「何かが欠けた」感覚があった。

桐島がいなくなって、みちしるべがいなくなって不安になるか、視界が開けた、とすがすがしく感じるのか、正直、俺はわからなかった。ただ、考えれば考えるほど自分がどんどん嫌な奴になっていくような気がするから、俺は結局蓋をする。

同著 37頁より抜粋

迎えた試合本番。風助にとって桐島がどんな存在だったか気づいていく。

また、桐島が部活を辞めたことにより、周囲の人々の行動に小さな波紋が広がっていく。部活も構内の立場も全く異なる5人の生徒を描く青春群像。

先日、朝井リョウさんの「何者」を読み終え、実は「何者」よりも先に積読状態だった本著をようやく紐解いた次第。

映画版だと、桐島という中心人物が部活を辞めたことによって、周囲の人々の関係が徐々に崩れていくって印象が強かった。あいつがいないならば、という関係でしかなかった的な。

だけど、特に影響を受けない人も学校にはいるわけで、映画だと神木隆之介演じる「前田涼也」の章なんかがそうだ。

前田涼也は、自分のことをスクールカーストの「下」に属することに気づいているが、気づかない振りをしている。だけど、友達と映画を撮っているときは、そんなことも忘れて没頭してしまう。

自分は誰より「上」で、誰より「下」で、っていうのは、クラスに入った瞬間になぜだかわかる。……僕らはまとめて「下」なのだと、誰に言われるでもなく察した。

同著 91頁より抜粋

言われてみれば確かになんだけれども、不思議とクラス内の同じ空気感の奴は察する。

見た目や外見(特に顔)で区分けされることもあるが、そうとも限らないこともある。何と言うか、空気が同じなんだ。

私自身の高校時代を振り返ってみても、当時の友人達には悪いが、おそらくスクールカーストとしては「中」、あるいは「下」の方だったと思う。少なくとも「上」ではない。

どうだろう。そんな私の高校生活に輝きはあっただろうか。

青春の汗を流したわけでもなく、恋愛にうつつを抜かしたわけでもない。

だけど、私の高校時代はつまらなかったかと問われたら、楽しかったと答えられる。

友達と昨夜見たアニメの話をして、アニソンしか歌わないカラオケに行って、一緒に始発電車でコミケに参戦して、それはそれで輝いていたのかもしれない。

桐島のような人物がいようがいまいが、だ。

その学生生活を、むなしいとも思えるだろうし、むしろ気楽だとも捉えられる。

飛び出す、という言葉を僕達は体現できる。十七歳のこの瞬間だけ。

同著 121頁より抜粋

高校2年生という、大人でも、子どもとも言い難い、あの時期だからこそ考えることがあって、それがふつふつと感じるような作品でした。それではまた次回!

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