ショートショート『少年と海』
老人の死後八十四日間、少年は海へ出なかった。そして八十五日目の今日、少年は再び海へ戻ろうとしていた。八十五という数字は少年にとって記念すべきものだった。少年は海についてのすべてを老人から教わっていた。船の操り方から、天候の見方から、漁の基本まで何もかもを伝授されたのだ。老人は偉大な漁師だった。幼い頃から船に乗り、体が動くかぎり海に出つづけた。晩年、彼は経験したことがないほどの不漁に苦しんだ。彼はいつだって大物狙いの漁師だったが、八十四日間に渡ってただの一匹も釣り上げることが