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メンタルヘルス不調を疑う部下を、産業医につなぐには

一定規模の会社では、産業医が選任されており、部下の体調に懸念があるときにどう対応するか相談することができる。その部下を産業医面談につなげられれば、就業に関して専門的な見地からアドバイスをもらったり、医療機関と連携して適切な治療や療養につなげてもらえることができる。しかし、体調が悪そうな部下を産業面談につなげようとしても、産業医面談につなげられないことが少なくない。今回は、メンタルヘルス不調を疑う部下を、産業医面談につなぎ方をご紹介したい。

なぜ産業医面談につながらないか

上司が心配して、医療機関の受診や産業医面談を勧めても、「大丈夫です」「もう少し様子をみたい」等の返事をして、受診や面談につながらないケース少なくない。部下自身が、体調が悪いと相談しているケースでも見られることもある。その背景には、主に下記の理由があると考えられる。

  • そもそも医療機関や医者などが苦手である

  • 産業医がどんな立場かわからないので不安である

  • 時間がたてばよくなると思っている

  • まわりに迷惑をかけたくない(ほかの人の手を煩わせたくない)

  • 大ごとにしたくない

  • 病気だと診断されたくない

  • 無理やり休業させらるかもしれない

上記のような理由があるので、部下が産業医面談上司や周囲が、「本人のために」面談をすすめても、なかなか本人は首を縦にふってくれない。また、同僚や周囲から、産業医受診等を勧めてもらうケースや、周囲の意見を伝聞する形で伝えるなどの対応をすることもあるが、自分が知らないところで情報がやり取りされている不安が生じ、ともすると本人と上司の信頼関係が崩れ、さらに本人が頑なになる可能性もある。本人の働きぶりや状況について客観的に評価できる人がしっかりと本人と向かうことをお勧めしたい。

本人のためではなく、上司のために面談をうけてもらう

体調に懸念がある部下に上司が産業医面談を勧める理由は、確かに、部下に適切な治療を受けてもらったり、部下自身が適切な対処をとってもらいたいという思いもあるだろう。しかし、その理由を厳密に整理すると、困っているのは、部下本人だけでなく、その部下の労務管理を担う上司も困っているのである。つまり、産業医面談をする(させる)理由は、上司が必要な対応についてアドバイスをもらうということもあるはずである。
そうであれば、部下に産業医面談を勧める際、率直に

「上司としてあなたをどう支えていいか専門家の意見をもらいたいので、面談をうけてほしい」

と伝えるのがよい。この声掛けのポイントは、主語が上司であり、業務指示に準じた形で面談を指示できる。また面談の目的である「本人を支援する」ということも伝えられるので、部下の心理的ハードルをさげることができる。また、面談をする産業医としても、上司の指示で面談に来ていることが明確なので、面談結果を上司に伝えやすくなり、その後の連携がしやくなるというメリットがある。

一番不安に感じているのは、本人

多くの人は、過去に精神的な不調に陥る経験をしていない。だから不調になっているその状況を一番不安に感じているのは、その本人である。だからこそ、その部下の気持ちに寄り添い、部下本音を話しやすい環境を作りつつ、上司として必要な対応につなげていくことが重要である。



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<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 
日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」


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