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#1 ヒモ男がホームレスになり旅して起業したら小金持ちになった話

旅の予定は無いのにスーツケースをゴロゴロころがして広尾駅で呆然としていた。

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 大学を1年で退学、少し海外を放浪し、21歳で社会人に。しかし英語を話せるようになりたい!というシンプルな欲を捨て切れずお金を貯めるべく25歳で起業、歯ブラシをTVショッピングなどで販売。

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これで小銭を貯め28歳から30歳まで2年間アメリカ留学。帰国後、程よくアメリカかぶれしヘラヘラして生きていたら片っ端から仕事がうまくいかず、こんな筈じゃなかったエブリディ。プライベートでも1回目の離婚でズタボロになっていたところ、仕事で成功している年上女性に拾われた。

 ここらへんをよく聞かれるので明確にしておく。僕は真っ直ぐに生きていた。そう、いつだって嘘はつかず空気も読まず、けど利害関係者にはアメリカナイズされたオーバーリアクションでお世辞 and 尻尾をブンブン振って生きていた。
 そうしたら同じ業界で働いていた裕福な女性に保護されたのだ。ただそれだけのペラいストーリー。

 それなりに目標を持っていた男がそんなんで良いのか?とも思ったが当時の僕は何もかもがカタチにならないことに焦っていた。この際、カタチはなんでもいい。僕はただただ成り上がりたかったし、金持ちの世界を見てみたかったし学びたかった。
 だから、お金持ちの女性に拾われても自分が叶えたかった目標へのショートカットだと思っていた。

 誰もが知っている高級マンションに連れて帰られた僕は、ブランドの下着から洋服やら靴を一通り与えられ、西麻布にある有名美容室に予約を取られ、エステに行かされた。誕生日にはゴルフセットをプレゼントしてもらい、最後は「これ乗って」と高級車の鍵を渡された。セレブボーイの誕生。こんな生活したいなぁというのが大量に、そしてサクッと僕に降りかかった。

笑っちゃうよね。これ全部ほんとの話。

 聞こえる、聞こえるよ。I can hear you.  俺の顔を見たいよね。歌舞伎町で活躍してるイケメンを想像してるでしょ?

non non non!

当時の俺がこれ↓

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あ、見にくい?


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普通以下のふざけた兄ちゃん。歌舞伎町で活躍できる雰囲気はない。

 そんなこんなで、その女性がアッパークラスな部分を面倒を見てくれるようになり、子供ができ入籍した。
 赤ちゃんはとんでもなく可愛かったが、お前はそれで幸せだったのか?その人を好きだったのか?と問われると困る。感謝はしていた。それは事実だけど、それ以外の感情は正直に答えを書くことはできない。それは失礼になる。でも一つ言えることがある。全くもって自分の力では成り立っていないと理解した生活をし続けるのは激しく辛かったよ。

 いつの間にかどっぷりヒモ。立派なヒモ。下手したらロープぐらい丈夫なヒモだったかも。
 仕事で成功したい、金を稼ぎたい、そんな目標を手帳にまで書きこんで頑張ってきたつもりだ。それなのに気がつけばヒモ業で身を立ててしまった僕。

 そんな生活は続かない。自分に嘘はつき続けられない。心が壊れてしまう。それは相手も同じだっただろう。申し訳ない。本当の気持ちを伝えると、一緒に住めないということで家を出ていくことになった( というか、追い出された)。当然だ。

 2度目の離婚 at 35歳。仕事も家庭も家も金も全部失った。まぁ、"失った"というのは所有していたものが無くなったということなので、元々何も持っていなかった僕の場合、"仕事も家も金もずっと無いままだった"。というべきなのかもしれない。

 そんなわけで西麻布の高級住宅街から家無きオッサンが爆誕した。

 ここで、冒頭の日比谷線 広尾駅で立ち尽くす僕に戻る。

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 明日からどうしたらいいんだろう。いや、今からどうすればいいんだろう。路線図を眺めると、日比谷線上には秋葉原駅。そこで会社を経営し上手くいっている地元の先輩がいたのを思い出す。僕は尊敬と親しみを込めてアニキと呼んでいる。

 僕の地元は千葉市にある有名なマンモス団地。当時はその団地に住む子供達のために小学校6つ、中学校2つがあったほどのマンモス。家賃がとんでもなく安く、治安がとんでもなく悪い。
 そんな環境から抜け出し東京で成功している人は珍しかったので、その人とmixiで繋がった後、僕は子犬のように懐いていたら「東京に住んで足掻いている後輩」というカテゴリーで可愛がってくれた。

 来月止まるであろう携帯をポケットから取り出し、僕はその先輩経営者ことアニキに相談に乗ってもらうべくアポをとりつけた。というとカッコイイが、平たく言うと泣きついた。(ここは今度詳しく書きます。全てが詰まっているので)

 今思うと、これこそがThe ターニングポイント。我ながらナイス判断(何様や)。

 結論から書くと、僕の全ての話を聞いたアニキは「金をかき集めて世界一周の旅に出ろ、そして思いのままをブログにぶつけろ。帰ってきたら全て上手くいく」というトンデモアドバイスをしてきた。

「な、なぜですか?」35歳、バツ2、家なき無職の僕が聞くと

「いや、だってなんか良くない?世界一周って、、、」という言語化下手すぎる回答が敏腕経営者の口から出てきてぶったまげた。ここちゃんとターニングポイントか?

   そんなわけで大いに迷ったが、自分の意思で何一つ人生が上手くいってなかったので「この人に流されてみるか」と思い、従うことにした。

 旅の準備のために一旦実家に戻ると、僕を女手一つで育ててくれた母がいそいそと食事やら洗濯やらバツ2息子の身の回りの世話をしてくれた。

 最初は、こんな状態の息子でも家に帰ってきて、それなりに母も嬉しそうだったが1週間もすると邪魔になったのだろう。小言を放つようになった。そりゃそうだ。

 定年退職して雀の涙ほどの生活力しかないのに、いいオッサンになった息子の面倒を見るのはまっぴらゴメンだろう。

「勝雄、この前、面白い求人見たよ。駅前にある居酒屋のワタミだっけ?あそこが介護施設なんかにお食事を届けるサービスを始めるっていうんで、運転できる人を募集していたよ、貴方、昔ピザ配達のアルバイト頑張ってたよね?結構給料良さそうだったなぁ〜」

素直な僕は

「へーーそうなんだ。ちと見てくるわ〜」

と言うと、母の自転車にまたがり駅前のワタミをスルーしてパチンコ屋へ入った。
 僕はスロットのレバーを叩きながら「おいおい、俺はこの前まで東京で仕事してたってここらの友達にドヤってんだぞ!それが地元に戻ってお弁当の配達で再就職?!面目丸潰れだわ!!やるならコールセンターがいい!時給もいいし、なにより座って話すだけだから配達より身体がラクだ!たくっ、リーチ目入れや!」

ボトムで生きる35歳。
クズ of クズ。

 それが僕。なんたって、つい数日前までのキャリアはヒモだ。履歴書にそれを書き込む欄はない。

 熱い情熱と夢を抱き仕事に励み、アメリカ留学までしたんだ。こんなはずじゃなかった。全ての歯車が空回り、ボタンも掛け違いまくっていた。

 実家にも居づらくなり、僕は世界一周の出発まで先輩経営者 a.k.a アニキの家に泊まり込むことにした。
 すると、そこは都心の高級タワーマンションのほぼ最上階。東京が一望できた。冷蔵庫にはビールやジュースが沢山入っていて飲み放題。ご飯も彼女さんが作ってくれる。

 なぜなのだ。僕にはヒモの神様でもついているのか、、、

 ここから先の話は単純だ。アニキの言った通りに旅をすすめてブログに僕の思いを殴り書きした。すると世界一周ブログランキングで1位を獲得。35歳バツ2で自分の意思もなく旅に流された人間ということで業界で話題になった。
 更には「女なんて一生信じない!同じ人間とは思えない!」と女性不信に陥っていたが、南米を旅中に今の妻(アサミ)と出会い、10歳も離れている子に恋をした。

 僕はブログでプライドを捨て、ありのままを晒した。35歳になって全てを失い、旅をしながら、やっと等身大の自分になれたのだ。

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あらためて当時の写真(洞窟 in コロンビア )を見ても、脇汗をかきながら若い子に近寄っている自分がキモい。

 そこから紆余曲折あり、世界一周を完成させ帰国後、麻美と結婚。夫婦として起業することとなった。

 お金も、コネも、知識もないところから未経験の業種で起業。わからないことだらけだけど毎日文字通り朝から晩まで働いた。
 気がつけば会社は順調に成長をし続け、起業して6年半後、売上、利益も自分たちの器より大きくなった。これ以上は欲を出さず適任者を探そう、ということで2020年11月に会社をファンドに売却。普通に生きていくには一生困らないお金を手に入れた。それは、僕がヒモだったころの生活に届くほどの金額だ。妻34歳、僕43歳だった。

 あれから約10ヶ月。引き継ぎも随分前に終わり、僕らの無職生活も落ち着いてきた。

 自分の記録のために。または、当時の僕のような目標を持ちつつも全てがうまくいかず自暴自棄になり挫折を飲み込んでしまった人のために。
 noteを書き進めたいと思いました。

 この記録が、駅で呆然と立ち尽くす君の一歩前に進むキッカケになれば幸いと思っています。

 そう、僕が秋葉原でアニキと会った時のように。

 次回!家出おっさんがスーツケースを転がしてアニキに相談へ行き、全てが始まった会話を投稿します!お楽しみに(笑) → 続きはこちらで公開済み


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無職男と時給870円女子の起業物語
【第1話:火傷しない商売のルール】
【第2話:スパイ大作戦と砦の確認】
【第3話:半径1mの資金調達】
【第4話:六本木No.1戦略】
【第5話:洗面器に顔を突っ込む】
【第6話:飛び道具の開発方法】
【第7話:無鉄砲な当てずっぽう】

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