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無職男と時給870円女子の起業物語【第4話:六本木No.1戦略】

前回までのあらすじ。六本木駅徒歩1分の雑居ビル908号室でワックス脱毛サロンIbiza Waxを開店するも集客が課題に。


一番重要な機械が不良品だったり、電話やネット回線の開通が遅れたり、発注したWEBサイトは表示されなかったりトラブル連発も、なんとか2014年8月1日晴天、脱毛繁忙期の真夏日 Ibiza Waxはオープンにこぎつけた。
壁紙とフロアは友人の職人にお願いしたが、その他はニトリ、IKEA、100円ショップで揃えた素人感満載のお店。

未経験の業態で起業、初めての店舗運営。
真夏の繁忙期だけど欲をかかず最初は慣れるためユルく行こうと話すも、予約が全く入らない!
繁忙期の閑古鳥ほどキツいことはない。お店ってユルく行くのすら難しいのね。

「どんなビジネスも片手間でやるほど甘くねぇぞ!」と放った恩人経営者の言葉が閑古鳥の鳴き声のごとく何度も脳裏に響きわたる。

考えてみると当たり前だ。空中階は路面店と異なり全く人目につかない。
自社サイトも作ったがリアルもバーチャルも目につかなければ存在しないに等しい。

当時、美容サロンは自社サイトやホットペッパービューティー(HPB)のクーポン経由の集客が基本だった。
今ではInstagram等のSNSに注力すると思うが、当時はアカウントを持っている人も少ない状態。
そもそもスマホの普及率がガラケーを上回ったのは2015年。事実オープン当初はスマホよりPCからの流入数が多かった。

麻美はお店のブログを更新したり、@コスメが運営していたサロン情報サイトispot(現在は閉鎖)の情報を更新し店舗で電話が鳴るのを待つ。

裏方の僕も集客に奔走した。
商売のカテゴリー上、飲食店のように呼び込みをするわけにもいかない。

「こんにちは〜、陰毛を脱毛しませんか?」

通報案件である。できるわけがない。

ショップカードを作り近隣の美容店に置いてもらう飛び込み営業をするも反応はイマイチ。
いかにWEB上でマーケティング施策をやり切るかが集客の鍵であった。

家賃10万、光熱費2万、広告費15万(アドワーズ、ispot掲載費、HPB)、仕入れ10万、アルバイト人件費15万、通信費1万、その他5万、合計58万が最低でもかかる固定費だ。もちろんこれに僕らの交通費や給料は含まれない。

*アルバイト人件費についての補足。開店にあたり麻美が勤務していた店舗の先輩Fさんがアルバイトで助けてくれた。

とにかく損益分岐点の58万円、このラインは死守したい。売上目標は月100万円とした。1日3.3万円、平均顧客単価が6000円として1日5人集客を目指す。

オープン3日間は知人や新店巡りが好きな人が予約を入れてくれるも1日の売上は数千円。

この悲惨な状況を見て参謀の僕は、諸葛孔明レベルの策略を練ることにした。

まずは六本木にある競合3店舗を調査。揃えたように営業時間が12-21時。
そこでまずは、おこぼれ頂きます戦法。当店の営業時間を11-22時に変更。他店で予約が取れなかった方々から分かりやすく反応があるも、こちらも負担が増えた。

毎日終電、数分の待ち時間でもホームで寝落ちする麻美

長時間営業以外に当店の強みを探し出さないと疲弊する。

通常夏は何もせず集客できる季節なのに背に腹は変えられない。クーポンを出しまくり、なんとか初月の売上40万。

お店だけで18万円の赤字。再度書くが僕らの給料は0円。交通費すら出てない。

最悪だ。こんな売上が続いたら運転資金は数ヶ月で尽きる。
不安、心配、焦りが溢れ出し膝から崩れ落ちて半べそをかくカツオ。マジで夫婦でとんでもねぇことをやっちまった!

そんな僕を見て麻美は
「まだ初月でしょ?何言ってんの?そんな泣き言吐いてる暇があるなら集客考えてよ」とキレた。

頼りないマイナス思考の年上パートナー。結婚していなかったら即フラれたに違いない。

なんとしてでも生き抜かなければ。他店との差別化を図り勝ち筋を見つけたいが脱毛の最終形態は、技術や個性を表現できる髪型やネイルなどと違い差別化が難しい。というか無い。

しかしそこは名参謀の諸葛カツオ、当店の優位な要素を見つけ出す。

●駅から一番近い(地の利)
●遅くまで営業(時の利)
●ブログの更新頻度(暇の利)

参謀のレベル低し。

恩人経営者に相談を投げる。
「飲食店でも客いないからって暇そうにしてたら更に入りにくいだろ?うち忙しいですよ〜人気店ですよ〜感を出せ」

なるほど。流行ってる感。どうやって醸し出すか。リサーチすると行く店舗を決める理由はHPBやispotの口コミを見てからいう人が大半。

僕らは口コミを入れてくれた方に2000円オフ or 2500円分の施術を無料追加できるキャンペーンを打つことにした。

大きい割引であったが、お客様も口コミを入れる際は各サイトでアカウントを作る面倒な作業があり、相応のインセンティブは必要だと思った。(結果この手間が他店の追従を防ぎ、僕らの独走を作り出した)

さらに僕らは他店との壁をもう少し高く作ることにした。テキストだけでなく顔写真付き口コミをお願いしたのだ。

「VIO脱毛ホヤホヤの顔を撮らせてくれる人なんているか!?」と恩人経営者も懐疑的だったが


つるつるで感動させる店

普通にいた。もちろん当時は顔を表示して掲載。
これには僕も恩人経営者もびっくり。いけるもんだね!

どんどん集まる口コミ。これが起死回生の策となる。

おもしろさ、速さ、丁寧さが響くのね
なるほど、プール前は気になるか!

口コミはお客様のニーズを発掘する機会にもなった。
そしてついに、

1ヶ月で100件以上の口コミを集める。

気がつけば六本木だけでなく、全国で口コミ数でNO.1。

アフィリエイトではなくリアルなランキングサイト

明らかに口コミが効いて、遠方からもわざわざお客様が来店するようになった。
口コミが人を呼び、さらに口コミをお願いした。

途中から口コミ割引はお客様が少ない11時から16時のみ適用にし、それ以降は通常料金にし売上もアップ。

9月の売上は60万円とトントン、閑散期である10月、11月は売上80万程度で交通費とランチ代ぐらい出るように。
そして冬に入った12月、ついに売上107万円となり目標に達した。

途中から気がついたがワックス脱毛サロンは夏が繁忙期なのだが女子は常にデート、ハロウィン、クリスマス、旅行、発表会などなど色んなイベントごとに脱毛を必要とするだけでなく、美容デーなるものも設定し突発的、定期的に脱毛に出費していた。

これが分かれば僕の仕事は明確だ。とにかくイベントを想起させた。連休のご予定は?合コンは?デートは?お友達と温泉?ジム通いはじめました?そして、もう一つ気がついた店舗運営の強み。それは施術している1時間弱、お客様とじっくり話しが出来ることであった。僕はアンケートや質問事項を考え現場でヒアリングをお願いした。

次は多店舗戦略と飛び道具の開発だ。ここから徐々に儲けがでるようになる。


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無職男と時給870円女子の起業物語
【第1話:火傷しない商売のルール】
【第2話:スパイ大作戦と砦の確認】
【第3話:半径1mの資金調達】
【第4話:六本木No.1戦略】
【第5話:洗面器に顔を突っ込む】
【第6話:飛び道具の開発方法】
【第7話:無鉄砲な当てずっぽう】
【第8話:順調は不調の始まり】
【第9話:1億円を燃やして得た教訓】
【最終話:最高のマーケティング、そして売却へ】

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