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note小説 三十路のオレ、がん患者

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毎週月曜更新の小説。30代の会社解雇された「オレ」がガンになり、患者視点から描いていく
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#novel

note小説 三十路のオレ、がん患者   第15回 初日 玉川温泉

note小説 三十路のオレ、がん患者   第15回 初日 玉川温泉

ドスン!

バスを降りようとした時、後ろで音がした。

振り返ると、母が倒れていた。

バスが少し動いた拍子に段差から転げ落ちた。

幸い何でもなかったが、たまに母は転げ落ちる。

母が胃がんの時、ある地下駐車場に寄った時に同じような事が起きたのを思い出した。

大した段差ではなかったものの振り返ると同じように転げ落ちていた。

その時は手術を控えていたので、念のために救急車を呼んで事なきを得た。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第14回 玉川温泉

note小説 三十路のオレ、がん患者   第14回 玉川温泉

外来の帰り道。

トボトボと帰路につく。
歩いて10〜15分なので、考え事をしながら歩く。

病理検査の結果は、母と同席したが、具体的に抗がん剤の話までは出なかった。

どう言おうか困ったが、言わないわけにいかないので言うしかない。

会社をクビになった事よりは言いやすいかもしれない。
同席していたから予想はしているだろうし。

薬の説明は、またやるみたいだし。

若いし身体を巡るのが早いかもしれ

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第13回 病理結果

note小説 三十路のオレ、がん患者   第13回 病理結果

話が前後してしまうが、手術の病理結果の話が主治医よりあった。

4月なのに、随分と冷房の効いた部屋に通された。

母も同席している。

生まれつきなのか、人生の経験則からなのかオレは物事を最後の最後で悲観的に考えない。

受験にしても就職にしても恋愛にしても最後の最後は「どうにかなる」「ダメならその時に考える」という発想でいる。

例の如く、今回もそう考えていた。

まだ若いし、早期でないと言って

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