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note小説 三十路のオレ、がん患者

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毎週月曜更新の小説。30代の会社解雇された「オレ」がガンになり、患者視点から描いていく
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2016年4月の記事一覧

note小説 三十路のオレ、がん患者   第13回 病理結果

note小説 三十路のオレ、がん患者   第13回 病理結果

話が前後してしまうが、手術の病理結果の話が主治医よりあった。

4月なのに、随分と冷房の効いた部屋に通された。

母も同席している。

生まれつきなのか、人生の経験則からなのかオレは物事を最後の最後で悲観的に考えない。

受験にしても就職にしても恋愛にしても最後の最後は「どうにかなる」「ダメならその時に考える」という発想でいる。

例の如く、今回もそう考えていた。

まだ若いし、早期でないと言って

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第12回 雨の退院

note小説 三十路のオレ、がん患者   第12回 雨の退院

今、退院の日を思い出しているが、今朝と同じ雨の日だった。

こんな偶然があるものだ。

退院

これで社会復帰できる。

そう思っていた。

いや、もう二度もクビになっている。

しかも正社員で。

派遣切りがどういう言って契約社員の保護がどうこう言われているが、正社員だから安全みたいな論調には片腹が痛くなる。

術後1週間だからという事もあるが。

これからは会社に頼らず、資格を取り、バイトでも

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第11回 食事とガスと退院

note小説 三十路のオレ、がん患者   第11回 食事とガスと退院

歩けば歩くほど歩けるようになる。

食事も出るようになった。

と言っても食事とは言えない全粥。
ただの汁だ。

そう言いたくなる。

あれだけ手術と術後を頑張ったのに、ご褒美がこれかと思うと虚しくなる。

消化器の病は仕方ないのだが、早く日常に戻りたい一心でそう感じてしまう。

ちなみに腹腔鏡手術で切った腸を糸でつないでいると思いきや、ホチキスで止めてるそうだ。

もちろん文具店で市販されている

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第10回 夢の中の虫

note小説 三十路のオレ、がん患者   第10回 夢の中の虫

芸能人が手術を終えて次の日に歩けるまで回復したというニュースをよく聞く。

あれは、少し間違えている。

手術を終えると強制的に歩くようにさせられる。

何故か。

手術を終えて寝ていると、臓器が癒着してしまうからだ。
予期しないところに予期しない臓器がくっついて面倒なのだ。

その一番の予防法が、歩く事。

だから歩かされる。

歩けるまでに回復したのは、事実であるかもしれない。

しかし、回復

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