かとうスムージー

よしもと興業所属 3分程で読めるショートショート(短編小説)を書いてます! 気軽に読…

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よしもと興業所属 3分程で読めるショートショート(短編小説)を書いてます! 気軽に読んでください! 是非、フォローしてください🙌 いいねもよろしくお願いします🙏

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思い出改変【ショートショート】

 ある男が、新聞の広告に目をやった。そこには辛い思い出を幸せにしませんか?と書かれていた。詳しく読み進めると、そのお店では過去の辛い思い出を消し、新しい幸せな思い出に最新のテクノロジーで書き換えてくれると書いてある。また、そのお店に行って書き換えた記憶も消し、お店の存在すらも記憶から消してくれるらしい。  男は興味を示し思い返したが、これといって辛い思い出があるわけではない。  裕福な家庭に生まれ、幸せな少年時代を過ごしてきた。小学校ではクラスの中心的人物で、中学ではサッカ

    • 進化による副作用 【ショートショート】

       とある部屋の一室で、男女二人が向かい合い椅子に座っていた。部屋の中は白を基調したシンプルなデザインで、真ん中に大きな鏡がかけられていた。  なんとも言えない、重たい空気が流れている。  女性が不安げに話し始めた。 「私は、勤務先の病院に向ったんです。そしたら、警備員に止められまして、その病院の専属の医者だという証明書を持って行くのを忘れたんです。私はその病院で五年も勤めています。しかし、警備員は関係者以外立ち入ることができないとの一点張りでした」  男性は深刻そうにそ

      • 時は金なる 【ショートショート】

         その男は、ぶつぶつと文句を言いながらパチンコ屋から出てきた。近くにある喫煙所で、イライラした気持ちをタバコの煙と一緒に吐き出した。  財布の中には、1000円札と小銭が少し入っている。最後に大きくタバコを吸い込み、火を消した。そして、コンビニで弁当を買った。 「明日こそは勝つ」  そう言いながら自宅へと帰って行く。だが男にすれば、それは負けた日の決まり文句のようなものである。  次の日、男はパチンコ屋の近くのATMで、先週パチンコで勝って得た3万円を下ろした。残高は20円

        • 演じる者 【ショートショート】

           彗星の如く現れるとは、まさにそのことだった。その男は、とあるドラマの脇役で華々しいドラマデビューを果たしたのだ。  その役とは、主人公がよく通うのパン屋の店員の役だった。  そのドラマの撮影が始まる一年前、店員の役を決めるオーデションが行われた。その男も、何百人といる夢を見る役者の一人としてオーデションを受けた。  小さな部屋で、ドラマ関係者数人の前で一人ひとり演技をしていく。オーデション内容は、ドラマのワンシーンのパン屋の店員を演じるというものだった。  数十人がオー

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        思い出改変【ショートショート】

          もしかしたら、 【ショートショート】

           歴史というのは、伝言ゲームである。人から人へと話が繋がれていく中で、多少の着色が入り、少しずつ話がズレていった可能性がある。  もしかしたら、今伝えられている歴史も、本来は違っていたのかもしれない。  1582年、ある男は寺の見回りをしていた。その寺には、その男の尊敬する武将が泊まっている。男は、運よくその尊敬する武将の家臣になることができたのだ。  寺にはその男を含め、数人しかいない。静かな夜が続いていた。  寺の周りを照らす炎が、パチパチと音をたて、辺りを照らしてい

          もしかしたら、 【ショートショート】

          匿名のミュージシャン 【ショートショート】

           夕方頃、大きな駅から程近い場所で男は歌っていた。その男は、ここ数年その場所で、ずっと路上ライブをしているのだ。ギターをかき鳴らし、自分の音楽を信じ歌っている。  だが、男の歌に耳を傾け、立ち止まってくれる人はなかなかいない。スーツを着た人たちは、馬鹿に夢を追っている若者だという目でこちらを見ながら、足早に前を通り過ぎていく。  その日も、男は歌っていたが、足を止めてくれる人はいなかった。冷たいギターケースにギターを入れ、駅の方に歩いて行く。西日の嫌な眩しさが、男の目に刺さ

          匿名のミュージシャン 【ショートショート】

          赤く鈍いアイ 【ショートショート】

           近年、とある問題が深刻化されている。それは、人型ロボットの問題だ。テクノロジーの進化により、今や人間にそっくりなロボットが作られている。見た目では、それがロボットか人間なのかわからない。  また、人工知能の発達により話し方も人間と変わらない。さらには、喜怒哀楽もあり、感情さえもそのロボットは持っている。  唯一の違いは、ロボットの場合は背中に「作動中」という文字が小さく光っているということだけだ。そんな人型ロボットが、街のあちこちにいるのだ。  そして一番の問題は、そのロ

          赤く鈍いアイ 【ショートショート】

          惑星【ショートショート】

           宇宙調査の第一人者とも言われているその学者は、今まで数多くの発見をしてきた。しかし、今回はこれまでとは比にならない大発見をした。  それは、生命が存在する可能性が高い、惑星を発見したというのだ。早速、多くの専門家達が集まりその惑星の調査に入った。  そして、無人の探査機をその惑星に送ることになったのだ。  しかし、もしその惑星に生命が存在したとして、その生命体が凶暴なものだったら、我々の存在に気付き攻撃をしてくるかもしれない。  そこで、その学者と専門家達は知恵を出し合い

          惑星【ショートショート】

          19時5分【ショートショート】

           数年前、とある男が時間と空間に関する新しい概念を発見した。それ以降、彼は物理学の第一人者と呼ばれ始め、世界が注目する存在となった。  その男が発見した概念を利用すれば、タイムマシンの実現が可能になるというのだ。以降その男は、国家機関の研究所でタイムマシンの開発に取り組んでいる。  朝早くに研究所に来ては、夜更け過ぎまでコンピューターと向き合っている。少しでも早く、タイムマシンを完成させたい。  それは、お金儲けの為でも名誉のためでもない。ただ、タイムマシンができることによ

          19時5分【ショートショート】

          同棲【ショートショート】

           朝の光が差し込み始めた頃。その女性は、隣で寝ている彼の寝顔をじっと眺めていた。起こすわけでもなく、じっと見つめている。  しばらくすると、男性はゆっくり目を覚ました。女性に声を掛けることもなく、ベットに腰をかけたまま、スマホのメッセージを確認していた。  メッセージの確認を終えると、男性は立ち上がり、眠たい目を擦りながら寝室から出て行った。  この日は、会社で大事なプレゼンがあるため、男性は少し緊張している。もちろん、女性はそのことを知っているため、何も声をかけなかった。

          同棲【ショートショート】

          幸せな夢【ショートショート】

           その男は、眠気と闘いながら駅のホームにいた。スマホに映る月曜日という文字が、頭を痛くする。  しばらくしてホームに来た電車は、大勢のスーツで溢れかえっている。なんとか電車に身体を押し込み。電車の中にある、買えもしない車の広告を見つめている。  目的の駅に着くと、多くの人と肩をぶつけ合いながら改札を抜ける。街はあちこちにある、他社に負けたくないと叫ぶ広告のモニターの音と、会社への不満を口の中に溜め込んでいる人々で溢れかえっている。太陽は照っているものの、雲と車の排気ガスとた

          幸せな夢【ショートショート】