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夢のバトンをつなぐ

大学1年生の夏。
オートバイで日本一周のひとり旅をした。

京都の家を出発し、日本海を北上。北海道を回った後は、太平洋岸を南下。日本地図に一筆書きを描きながら、四国・九州を経由して、フェリーで沖縄へ。この旅は16歳の時からの夢だった。

旅は終盤に差し掛かっていた。

夏も終わりに近づき、沖縄に向かうフェリーの中は、思ったより人が少ない。その2等客室の大部屋には自分と同じくヘルメットを片手に、大きな荷物をかかえた旅行者。一目見て互いに長距離ライダーだと直感した。

KAWASAKIのオートバイに乗る彼は、大学4年生。
卒業旅行として、日本一周のひとり旅しているのだと。
僕もKAWASAKIの彼も、フェリーを降りた後は、どこをどう回るかも決めていないし、期間もだいたい一週間くらいというだけで、あとは白紙のスケジュール。
それなら沖縄は二人でまわることにしようということになった。

本州では、刻一刻と夏の終わりが迫っていて、夏を追いかけるようにしてここ沖縄までやってきた。でも、さすがに沖縄、9月でもまだ夏が色濃くしっかり残っている。

夜は砂浜にテントを張り、外にマットレスを敷いて、空一面に広がる無数の星を見ながら、オリオンビールを飲んで語りながら過ごした。
「あ、また流れ星!」「あのゆっくり動く星みたいなのは人工衛星かな?」と、星座を知らなくても、圧倒的な星の数に、ただ眺めているだけでも飽きることはない。

そして、沖縄二人旅、最後の夜。

KAWASAKIの彼が、
「来春には卒業して社会人になる。こんなにまとまった休みが取れるのもこれが最後と思い、日本一周をしたんだ。でも、一つやり残したことがある。それはアメリカをオートバイで横断することだった。」と。

そのとき僕の次の夢が決まった。

その夢のバトン、勝手ながら引き継がせてもらおうと。
そして、ひとつだけ条件を追加しよう。夢の実現は来年の夏、という期限。

夢に日付をいれた理由は、それを達成したとき、きっとまた新しい夢が出てくるはずだ。そのとき、KAWASAKIの彼と同じ後悔はしたくないから。

アメリカ横断の夢という、バトンを受け取ったこと。
その夢に日付をいれたこと。

この二つのことを大学1年生の夏に経験したことで、その後の大学生活が大きく変わった。いや、その後の生き方も大きく変わったといってもいい。

人はみな、出会った人たちから、様々な色や形のバトンを受け取って、走り続けているのかもしれない。
願いが叶うなら、そのバトンのつながりがみんなの幸せをのせて、いつまでも絶えることなく続きますように。


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