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【かすみを食べて生きる 29 リハビリ病院1か月目⑥】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症27日目:リハビリ病院6日目
・食事:飲み込みができないため絶飲食。食事は鼻からの経管栄養。
・状態:歩行訓練中。日中、歩行器自立。終日、車いす自立。
・嚥下:嚥下訓練中。首を左に向ければごく少量の水を飲み込める。

この日は理学療法40分が2回、それに言語聴覚と作業療法。
なかなかハードだった。

これまでのお話はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
発症26日目:リハビリ病院1か月目⑤
発症28日目:リハビリ病院1か月目⑦>


計画的ばったり作戦

昨日、感染症対策で家族と面会できなくてさみしいということを作業療法士の花井さん(仮)に話したら、おもしろいことを教えてくれた。
家族は病棟のナースステーションに荷物を届けに来る。
ナースステーションの受付は病棟の真ん中にあるので、自主練で病棟内を歩くと必ず通る。
「ご家族が病棟受付に荷物を届けに来たタイミングで自主練をしていれば、ばったり会えるかもしれませんね。あ、でもその時は必ず2mは距離を取ってくださいね」
事前に家族と連絡を取り打ち合わせて行う、計画的ばったり作戦!
ありがとう花井さん(仮)。

夫に連絡を取り、時間を合わせる。
現在私の装備は歩行器。
子どもが走って飛びついてきたりすると転倒しかねない。
転倒こわい。
花井さん(仮)の助言の2m制限も伝え、子どもに言い聞かせておくように夫に頼む。
そして昼過ぎ、私は荷物を届けてくれた家族にナースステーション前でばったり会えた。
子どもは駆け寄ってくることはなかった。
私は歩行器によりかかり、少し離れたところから手を振る。
子どもが手を振り返す。
少し身長が伸びたように見える。
にこにこ笑っている。
恐らく夫が子どもにさみしい思いをさせてないのだろう。
ふたりはエレベーターに乗って帰っていった。
早く、早く家に帰らないと、子どもが大きくなってしまう。

自主練フルコース

左から言語聴覚、作業療法、理学療法の自主練メニュー

各リハビリで、空いた時間にやってみてくださいと自主練メニューが伝えられている。
情報がばらばらとなっているのでそれぞれ紙に書いてテレビに張り付けた。
3つを通しでやると30分以上かかってしまう。
これらに加えて急性期病院の時からやっている発声練習も続けている。
始めた当初、私はリハビリと食事・睡眠以外の時間はほとんど自主練をやっている状態になった。
通しでやると、途中でしんどくなることもあった。
検温に来る看護師さんからあまり無理をしすぎないように言われる。
筋肉痛に気づかずに発熱することもあるらしい。

作業療法士花井さん(仮)に相談すると、合間合間で2分以上休憩をとることを勧められた。
負荷の軽いものからやって調子を見ながら進めることも大切。
理学療法士田中さん(仮)からは、一度にやろうとせず、3セットだったら朝昼晩に1セットずつなど、分けてやってもいいですよと言われた。
言語聴覚士下浦さん(仮)からは、この3つの中で言語聴覚の訓練が今一番重要なものなので、これを優先してしんどかったら他のものは回数を減らすなどして調整するようにとのことだった。
ふむふむ、なるほど。
それならば、準備運動がてら作業療法の首周りのストレッチを1セットやって、最重要課題の言語聴覚の顎首周りの筋トレ、最後に理学療法のフィジカルトレーニングを1セット持ってこよう。
これを目標は1日3回として、しんどい日は1、2回でもよしとすることにした。
時間はかかるけど、セラピストさんとやるリハビリと同じように合間に休憩をこまめにはさむ。
自分の身体とも相談しつつやってみよう。

わくわく作業療法

今私は理学療法で歩く訓練、言語聴覚では嚥下の訓練を受けている。
では作業療法では何をしているか?
これがいろんなことをする。
たとえば今日は、かかと上げや片足立ちなど基本動作のトレーニングの後、棒をまたぐこと、高いところに輪投げをかけることをやった。
今私の状態で、頭を動かすとめまいがするという問題がある。
今日のトレーニングはそこへのアプローチ。
下にあるものをまたぐときには下を見る。
上に物をおくには上を見る。
日常動作として普通に出てくる動き。
これを訓練としてやるの中で、どの程度めまいが起きるのか、めまいが起きないようにするにはどのような方法があるのかをやっていった。

作業療法士花井さん(仮)は、入院中その時の私の症状や状態に応じて、そして私の退院後の生活を見据えていろいろな訓練をしてくれた。
結果、訓練のバリエーションは多彩だった。
しかも代打で来られる方々は、また違うリハビリをしてくれる。
どうもそれぞれの方に得意な領域や、持っている引き出しに違いがあるように見受けられた。
確かに日常生活に関する動作のすべてを作業と呼ぶなら、その領域は無限に広がり、個人個人のそれまでの生活と病状によって全く違ったとものとなりそう。
患者のこれまでとこれからを想像して、今起きている変化にも対応しながら、無数にある選択肢の中から今やるべきことを考えてリハビリとして組み立てていく。
作業療法おもしろい。
明日は何をするのかな。


ーー振り返って

久しぶりに会えた子どもの背が伸びていたのは少しショックでした。
あかん、このままではこの子の成長を見逃してしまう。
あせりました。

自主練、3つの紙を並べて貼りだしたことで、リハビリに来るセラピストさんに私の状況を共有してもらえて、意見をもらいやすくなりました。
それぞれのリハビリの状況はカルテに書いてあると思うのですが、すべてのリハビリを通じた私の今の全体像は、もしかすると私自身にしかわからないことなのかもしれないと感じました。
皆さんに状況を伝えて随時相談していくと、無理なくやっていける。
関わる人が複数いる仕事みたいだなと思いました。
見える化大事。

作業療法士さん、入院するまではよくわからなかったけど、実際にリハビリを受けていくと、とても興味深かったです。
最初は目の前のことを対処的にやっているようにも見えたのですが、後で振り返るとこの日常動作につながっていたのか!と気づいてびっくり。
例えば今日の「高いところに輪投げをかける」の動作。台所の上の棚を開けてラップをしまう動作とほぼ同じ。日々やってます。
今でもふと思い出して、花井さん(仮)あの時、私の生活ここまで見えてたの??と驚いたりしています。

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