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鯛の鯛のこと

鯛の鯛というのはどのくらい世の中に知られているのだろうか?
私は何かの流れで鯛の鯛のことを口にすると、大抵若いのによく知ってるねぇみたいに感心された。20代の頃とかの話なので今現在若いわけではない。

お魚を食べるのが好きだ。骨多くて食べる為の作業がめんどくさいほど燃える。
そして綺麗に食べつくしもう食べるところないね、という状態にするとものすごい達成感がある。私は魚を食べながらチョモランマでも登ったのだろうか。

ねこまたぎは地域によって意味合いが違うそうで面白い
私は『綺麗に骨だけにして食べて猫もまたいでいく』という意味で覚えてました

ちなみに個人の和食屋さんで丁寧にお魚を食べてたら褒められたことが何度もある。多分親方も綺麗に食べてくれて嬉しいと声をかけてくれている。それで私も笑いながら日本酒をグッと飲んで照れを隠す。
(お前めちゃくちゃ食い意地はってるなぁ)と思われてたら恥ずかしいな、と思わなくもないが、お料理はなるべく残さずきれいに食べることは普段から気をつけている。

鯛の鯛の話に戻ろう。
私の母方の祖父母は気軽に行くには少し遠い、海沿いの田舎町に住んでいて私と兄妹は子供の頃毎年夏休みに祖母の家に2週間程度預けられていた。
祖父母に会えるのは年に一度、夏休みくらいだった。
祖母は食べるのが好き。さらに自分で地元の市場に毎日朝早くにでかけて食材を仕入れなんでも自分で作る人だった。
お取り寄せも好きで美味しい葡萄ジュースやスイーツ、立派なカニをどこかから購入していた。ハイカラな田舎のおばあちゃんだったように思う。

鯛の鯛。その祖母から教えてもらった記憶。幼い頃なのであまり覚えてないが、お魚を綺麗に食べるととても褒めてくれる人だった。
私はおばあちゃんに褒められたくて全力で身を残さず美しい骨だけが残るようお魚を食べた。
そうやって食べるとえらいえらい、食べるの上手ねぇ〜と祖母が感想を言ってくれる。
夏休み滞在中に一回は小さい尾頭付き!の鯛を人数分焼いてくれる日があった。子供でもわかる贅沢だ。それで私達孫が必死になれない鯛の尾頭付きの塩焼きと格闘してるのを祖母は楽しそうに眺めていた気がする。
ほら、ちょっと見てごらん?鯛の中には鯛があるんだよ
美しい箸捌きで鯛の鯛を披露した祖母。こうやって丁寧に食べると鯛の鯛が見つかるよ、と説明してくれた時があった気がするのだ。
私は『鯛の鯛』という言葉だったり、本当に魚のように見える不思議な形の骨が妙に気に入ってしまった。

そういう思い出のせいなのか魚を見ると全力で綺麗に食べようとしてしまう。居酒屋で焼き魚をシェアする?えぇっ、私の魚に手を出さないでね…と思ってしまう(大抵思うだけ。状況によってみんなでホッケをつつくのは仕方ない、と理解はしている)

褒めて伸ばすということの成功例と思う。一概には言えないが綺麗に食べるとめちゃくちゃ褒められる!という経験があるかないかで、魚の骨との関係は変わるかもしれない。幼い頃はゲームみたいで面白かったし化石を発掘してる気分も味わえた。祖母が綺麗に食べるのを楽しんでいたのでそれをマネしていた。
野生動物が親の狩を見てマネすることから始まる狩の練習と同じかもしれない。

鯛の鯛。食べることが大好きだった亡き祖母。
きっと私の食べ物への熱い想いは祖母ゆずり。
祖母がどこかで見てて枕元に立って説教されそうなのでこれからも食べ物を粗末にしないよう気をつけていきたい。

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