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【かすみを食べて生きる 22 一般病棟⑱】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症20日目:一般病棟18日目
・食事:飲み込みができないため絶飲食。食事は鼻からの経管栄養。
・状態:歩行訓練中。日中、車いす自立。夜間、車いす看護師付き添いでトイレ可。嚥下訓練では首を左に向ければごく少量の水を飲み込める(失敗もあるが、成功確率は上がってきた)。

リハビリ病院への転院2日前。
移動は車いす、食事は経鼻栄養ながらも、少しずつ身の回りのことを自分でできる余力が出てきた。
転院に向けて、リハビリは締めに入っていく。

<発症19日目:一般病棟⑰
発症21日目:一般病棟⑱>


おかえり洗濯物

朝、昨日病室担当だった看護師さんが飛び込んできた。
「かすみさん(仮)すみません!洗濯物、忘れてました!」
手には昨日お願いした洗濯物が入った袋。乾燥機にかけたまま忘れて退勤して夜思い出したとのこと。
あまりに勢いよく入ってきてくれたのでびっくりして爆笑してしまった。
「大丈夫ですよー」
ほんとに気にしないでほしい。むしろ家に帰って仕事のことを思い出させて申し訳ない。
新型コロナの感染拡大防止で、入院患者の病棟内での行動には様々な規制がかかっている。
例えば、お茶をくむことやコインランドリーで洗濯をすること。
本来なら動ける患者は洗濯室に行って洗濯をすることができるけど、他の患者との接触を避けるために看護師さんに頼まなければならない。
これにより看護師さんたちの業務が雑務で爆発的に増えているのを目の当たりにしている。
入院するまで新型コロナの感染防止対策で、看護師さんにお茶くみ業務が増えていたなんて知らなかった。

理学療法士九里さん(仮)のリハビリ最終回

理学療法士九里さん(仮)さんのリハビリは本日で最後。
今日も歩行訓練。
歩くとき右足が左足にかかってしまうので、歩行器を使って練習をする。
かかとをついたときは重心をそちらにかける。
足を出すときは出す足に重心を移す。
歩行器に持たれつつ、右、左、右、左と足を出していく。
この重心移動、スケートみたい。
重心の移動を意識的にやって、目で見てバランスをとっていくことで、左右のぐらつきを修正する。
「リハビリ病院にいったらどんどん歩行訓練をやっていくと思いますよ」

寡黙な九里さん(仮)はあまり雑談をしない方だった。
最後にどうして理学療法士になったのかを聞いた。
「よくある話です。野球をやっていてけがをしてしまって。その時に理学療法士さんにお世話になったんです」
九里さん(仮)はこの病院の理学療法士さんにお世話になり、その方にあこがれて資格を取り、この病院に就職したとのことだった。
なるほど。遠くから見る九里さん(仮)は立ち姿がきれいで、まるでマウンドに立つ高校球児みたいだと思ったことがあった。
そしてこの病院のレジェンド理学療法士さんのおかげで、私はこのまっすぐな青年のリハビリを受けることができたらしい。
「その方は今はここにはいないんですけどね」
降圧剤で下がりすぎた私の血圧に渋い顔をしながらも、九里さん(仮)が根気よくベッド上でリハビリをしてくれたおかげで、なんとか立って少し歩くところまでこれたと思う。
ありがとうございました!

自然滴下とBPM

栄養の注入がポンプから注入容器となり、滴下筒をポトポトと落ちてくる栄養を眺めるお食事タイム。
アイソカルサポート266ml。
滴下筒を落ちていく栄養を見ているとそのリズムが刻まれる。

星野源の『恋』が頭の中に流れる。結構速い。
お食事所要時間、約40分。

そしてお昼。同じくアイソカルサポート266ml。

スキマスイッチの『奏』かな。バラードのイメージ。
お食事所要時間、1時間10分。

看護師さんが腕時計を見ながら速さを調整してくれるけど、人によって速さが結構違う感じがする。
1時間くらいで終わってほしいけど、速すぎるのもおなかがびっくりしそう。
ちょうどいい速さを見つけていきたい。


ーー振り返って

看護師さん、とても忙しそうでした。
ただでさえ人手不足と言われる看護業界なのに、新型コロナで増えた膨大な雑務。
ほぼほぼベッド上で行き交う看護師さんたちを眺めていた身としても、若い看護師さんが忙しさで心が折れて離職してしまうのでないか心配になりました。
忙しいにもかかわらず、看護師さんたちは毎日元気な笑顔で病室に来てくれました。

理学療法士九里さん(仮)、一度休日の次の日に真っ黒に日焼けしてつやつやしておられたのが印象的でした。
聞くと野球観戦にいってきたと教えてくれました。
よい仕事にはよい休日が必要だな、と思いました。
医療従事者の皆さんが休日しっかり休める世の中であってほしいと願わずにはいられません。

そして今後もしばらくお世話になる栄養注入の滴下筒。
これを眺めて音楽を思い浮かべるのは日課になりました。


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