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【かすみを食べて生きる 21 一般病棟⑰】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症19日目:一般病棟17日目
・食事:飲み込みができないため絶飲食。食事は鼻からの経管栄養。
・状態:歩行訓練中。日中、車いす自立。夜間、車いす看護師付き添いでトイレ可。嚥下訓練では首を左に向ければ少量が時々飲み込める(確率は上がってきた)。

リハビリ病院への転院3日前。
またしても丸1日お通じがない。整腸剤を使いながら、下剤も視野に慎重に排便コントロールを試みている。
この日は経鼻の管の取り換え日だった。

<発症18日目:一般病棟⑯
発症19日目:一般病棟⑰>


お風呂再び

入院後初めてのお風呂で気持ちが悪くなった3日前
それ以来のお風呂チャンスがやってきた!
今度こそ途中で動けなくならないように、私は対策を考えた。
「すべての動作で頭の位置を動かさない」
これができればなんとかなるはず。
今日こそは頭から足まで自分で洗いきる。

今回もお風呂までは看護補助さんに車いすで連れて行ってもらう。
最初のミッションは、頭を動かさずに頭を洗う。
ショートボブだが毛量の多い私の髪の毛は、シャワーでしっかりと流す必要がある。
左手でシャワーを持って、頭の左上に手首をあてて固定する。
頭の右側にシャワーがかかる。このまま右手で右頭部を洗う。
シャワーを持ち替えて今度は左頭部。
髪を流せたら、頭を動かさないよう目線だけ下を向いてシャンプーを手に取り泡立てて、頭につける。
両手で頭を洗う。気持ちがいい。
しかし、しばらく両腕を上げているとしんどさがやってきた。
もう少しきれいに洗いたいけど、ここは撤退。
頭を動かさないように、髪を濡らしたやり方で頭を半分ずつ流していく。
今日はトリートメントはあきらめる。
次のミッションは体を洗う。
すでにしんどいので、ボディーソープを手で泡立ててさっと全身を洗い終了。
なんとか、洗いきった。
頭を動かさないようにするには集中力がいる。腕を上げ続ける動作は疲れる。
洗いきる目標は達成したが、へろへろになって病室に戻った。
髪を乾かすのは戻ってから看護補助さんがやってくれた。
お風呂、まだまだ重労働。

作業療法士国島さん(仮)に相談だ

日常動作の困りごとは作業療法士の国島さん(仮)に。
お風呂で疲れてしまうことを相談した。
お風呂にはいろいろな動作が必要となるので、ひとつひとつ慣れていく必要があると教えてもらった。
例えば頭を洗うには、腕を上げる動作が必要。
まずは座って腕を上げる練習からやっていきましょうと話してくれた。
また、トイレで卒倒事件からまたトイレで倒れるのが怖いことも相談した。
国島さん(仮)はトイレで倒れるのは、消化器系の疾患の方や排便コントロールがうまく行っていない人にはよく起こることだと話してくれた。
しんどくなったら、まずはじっとして目を閉じて、今自分の体のどこがしんどいのか考えてみるといいと教えてくれた。
頭が痛いのか、おなかが痛いのか、それ以外なのか。
考えることができれば落ち着いてくるし、どう対処すべきかもわかってくる。
トイレで卒倒事件以来、私はしんどくなること全般が怖くなっていた。
卒倒した時は「どうしよう、どうしよう」と焦りと不安がMAXだった。
国島さん(仮)からの教えは私に盲目的に不安になるのではなく、自分の状況を確認すれば落ち着けることを気づかせてくれた。

おれの嚥下を見てくれ!

入院2日目から、私の鼻には常に経鼻のチューブがぶら下がっているが、これは定期的に交換をしてもらえる。
この日はチューブの入れ替え日で、朝のお食事が終わった後チューブを抜いてもらい、なんとお昼のお食事までチューブなしで過ごせることになった。
鼻にチューブが入ってない状態、最高!
私はこの状態になった時、どうしても試したいことがあった。
嚥下訓練だ。
現在、小さな氷を口に含んで首を左に向いて少し顎を引くことで、私はなんとか少量の水を飲み込むことができる。
ただ鼻から胃にチューブが入っているため、どうしてものどを通るチューブが嚥下の邪魔をする。
もしかすると、チューブがなければもう少しうまく飲みこめるかもしれない。
しかしこの日は言語聴覚士谷元さん(仮)のリハビリはお休みの日。
谷元さん(仮)はいないけど、この短いノーチューブチャンスを逃すわけにはいかない。
朝食後、声出しでのどを温めて、嚥下自主リハビリを開始。
氷を口に含んで溶かして左を向く、うつむいて飲み込む。
うん!チューブがあるときよりのどぼとけが上がりやすい気がする。
ごっくんのくんがやりやすく、のどを氷水が通るのもわかりやすい!
今!今!谷元さん(仮)にこの嚥下をみてほしい!!
やむなく私は、次回の谷元さん(仮)のリハビリの時に見てもらうために、この自主練の様子を動画に撮った。
のどぼとけが上がる様子が見えるように、飲みこんだ後正面を向いて「あー」と声を出し、のどに水が残ってガラガラしたりしていないかもやって動画におさめた。
今は経鼻のチューブがないと生きられないけど、チューブがない喉、やっぱりいいな。


ーー振り返って

作業療法士の国島さん(仮)はおしゃべりがとてもなめらかで、その言葉は音声記憶として頭の中に残りました。
1年くらいは私の中に脳内国島さん(仮)としていてくれて、しんどくなった時に頭の中でしゃべってくれました。
今は記憶が薄れてきてその声は聞こえなくなってしまいましたが、その教えは私の中でしっかり残っています。

そして、1週間前に嚥下音が出た以降も、嚥下訓練は私の最重要課題として言語聴覚士谷元さん(仮)によるリハビリが毎日行われ、日々少しづつ飲み込みの確度を上げていました。
そして来た、ノーチューブチャンス!
谷元さん(仮)に見てほしい!
私は当時幼稚園児のお母さんだったので、普段は子どもから「おかあちゃんみて!!」と1日に何十回と言われる立場です。
ちょっとしんどい位、何度も何度も言われていました。
でも、今回ちょっとわかりました。その見てほしい気持ち。
嚥下ができなくなった私は初めて見たものを親鳥だと認識するひな状態。
言語聴覚士谷元さん(仮)に自分の嚥下の成長を見てほしいと思いました。
全然飲み込めない時を見てもらっていたから、少しでもできるようになったのを見てほしい。
思いもよらず、見てほしい側の気持ちになれたのは新鮮でした。

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