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形而上エッセイ「分かる人にしか分からない話」

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2022年5月の記事一覧

努力と偽の幸せ

努力は尊い、たとえ結果が出なくても結果に向かって努力したこと自体が価値あることなんだとはよく言われることだが、果たしてわたしたちは、日常普通の生活において、それほど努力に価値を置いているだろうか。

たとえば、好きな人に告白したとする。好きで好きでたまらない人に、やっとの思いで告白したとして、しかし、断られた。そのときに、「断られたけど、告白したわけだし、『付き合う』という結果に向かって努力したわ

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生きるということは、「漫然と」生きるということ

髪が伸びてきたので、そろそろ切ろうと考えているのだが、この頃、髪を切るときに一抹の不安がある。それは、

ちゃんとまた生えそろうんだろうか?

というものである。いい年なので、そろそろ禿げてもしょうがないわけで、そのそろそろの兆候が、そろそろ見えてくるのではないか。

まあ、禿げたら禿げたでしょうがない、ということは、割と若い頃から思っていたことなので、禿げても割り切っていけるような気もするのだが

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不思議感覚とあなたの哲学

哲学らしきもの、カント哲学とか、実存主義とか、いわゆる、お勉強的な哲学もそれはそれで面白いのだが、そういうものを利用しなくても、哲学は今のこの場にちゃんとある。

人が何かを考えるところに現われるもの、何かを不思議と思ってその不思議を知りたいと思うところに出てくるもの、それが哲学である。

特にお勉強する必要はない。

子どもが、「ぼくも死ぬの?」と思って、死ぬってどういうことだろうと不思議に思っ

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差別をなくすためには言葉をなくす必要がある

生活していく中で、わたしたちは、日常的に差別を行っている。体の不自由な人、年老いた人、未熟な人、性的マイノリティ、外国人などを、自分たちとは違っていると認識して、取り扱いに差を設けている。

どうして差別を行うかというと、それは、違っていると認識するからなのだが、では、どうして違っていると認識するのかと言えば、これはなかなか興味深い問題である。どうして、わたしたちは、「わたしたち」と「わたしたちで

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哲学は役に立つのか

今ちょっとはやりの哲学だが、いったい哲学というのは、何の役に立つのだろうか。そもそも哲学とは何か。哲学は、物事の本質を考えたり、世界の真実をとらえようとしたりする学問である。で、それって何の役に立つのか。

結論から言ってしまうと、哲学は何の役にも立たない。世の中では、哲学は、すごくためになるよ、生き方が変わるよ、みたいに大変有用なものとして喧伝されているが、それはその哲学に関する本やサービスを売

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あちら側へ飛ぶための想像力

昨日、会社の健康診断に行ってきた。どうもこの健康診断というのが億劫で、2週間くらい前からカレンダーを見ては、「もうい~くつ、寝~ると、健康診断~、ヘイヘイ♪」と一人で歌っては、なんとかこの面倒な気持ちを紛らわせようとしては失敗していた。なんかの数値が基準値より上回っていたら面倒くさいからとちょっとは節制しようと思いつつも、特に何をするでもなく普段通りで昨日を迎えた。

診断のそれぞれの項目である、

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常識を手放さないことの重要性

変な考えが好きである。まっとうな考え、この世的な価値に奉仕するような考えは生活の役には立つのかもしれないが、どうも面白くない。先に書いた、「時間が未来から過去へと流れる」というような変な考えが、わたしの琴線に触れる。(まあ、これは、先の記事でも書いた通り、あるいはこの世的な価値に奉仕する考えの部類に入るのかもしれないが。)

ただ、好きではあるのだが、常識に照らし合わせてみると、あれ、と思うことが

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人はいつから死ぬことを許されるのか

この頃、芸能人の自死が相次いでいることで、日ごろ死について考えない人も、少しは考えるようになっているのではないか。「あの人はどうして死を選んだのか?」という問いは、「わたしはどうして死を選ばずに生きているのか」という問いにつながるところがあるはずである。

あなたはなぜ死を選ばずに生きているのか。

この問いに答えるとしたら、どんな答えが用意されるだろうか。

やりたいことをやるために生きている。

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時間は未来から過去へと流れる!?

時間は、過去から未来ではなく、未来から過去へと流れている!

……と言われて、「え、何言ってんの?」て思う方もいれば、近頃、ちょこちょこ聞く話なので、「あ、なるほど、あの話ね」と思う方もいるかもしれない。

過去の積み重ねが今を作っていて、それが未来を形作る、という考え方が従来の時間に関するものだったのだけれど、どうもそれは違うのではないか、未来に対するイメージが先にあって、そのために今が存在する

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