マガジンのカバー画像

水産業の成長のカギ

46
運営しているクリエイター

#クロマグロ

大臣許可漁船もクロマグロ不正漁獲~気仙沼の流し網「第18一丸」を海保が摘発

大臣許可漁船もクロマグロ不正漁獲~気仙沼の流し網「第18一丸」を海保が摘発

 気仙沼海上保安署が18日、漁業法で義務付けられている太平洋クロマグロの漁獲量の報告を怠った容疑で大目流し網の大臣許可漁船の船長を仙台地方検察庁に書類送検しました。

大臣許可船のクロマグロ密漁摘発は初

 大臣許可漁船のクロマグロ不正漁獲の摘発は前代未聞です。同市内の業者を含む複数の流通業者が買い付けたもようです。

 混獲が不可避とされる大目流し網によるクロマグロの不正漁獲は以前から漁業者や流

もっとみる
「金銭的にみて」誰が得をし、損をしたのか~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要②

「金銭的にみて」誰が得をし、損をしたのか~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要②

 前回、太平洋クロマグロの漁獲量配分について漁業者らと話し合いを始めるにあたって「水産庁は準備不足だ」と書きました。役所が持つ情報量と漁業者が持つ情報量に大きな格差があります。役所はクロマグロをめぐる諸事情について的確に判断できる情報をもっとたくさん用意して、公開する必要があるのに、十分に行われていません。

「現場の負担の重さ」めぐる議論が空回り

 例えば、針や網にかかったクロマグロを漁獲せず

もっとみる
「争いの種」をまく水産庁~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要①

「争いの種」をまく水産庁~太平洋クロマグロ漁獲枠の配分に監視が必要①

 8月21日、東京・新橋の民間の貸し会議室で水産庁主催による「くろまぐろに関するブロック説明会」が開催されました。オンラインでも参加できますが、雰囲気を感じるには会場参加が一番です。午後1時半からおよそ3時間。漁業者のほか、レジャーの釣り人からもたくさんの意見が出ました。その印象を含めて、大幅増枠が決まった2025年以降の太平洋クロマグロの漁獲量の配分のあり方について私見を述べておこうと思います。

もっとみる
地元有力販売業者が集荷し、販路を開拓か~気仙沼でクロマグロ不正漁獲②

地元有力販売業者が集荷し、販路を開拓か~気仙沼でクロマグロ不正漁獲②

 宮城県気仙沼市内の大目流し網漁業者による太平洋クロマグロの不正漁獲を気仙沼海上保安署が捜査していることを地元気仙沼の「三陸新報」紙が18日、一面トップで大きく取り上げました。筆者がおよそ一週間前、12日にこのnoteでお伝えした内容を確認した内容です。

 繰り返しになりますが、この漁業者は市内在住で唐桑半島の小さな港(小鯖漁港)でクロマグロを船から持ち出していたもようです。

 大型トラックに

もっとみる
気仙沼でクロマグロ不正漁獲~大目流し網漁船が混獲物を加工業者に販売か

気仙沼でクロマグロ不正漁獲~大目流し網漁船が混獲物を加工業者に販売か

 「第二の大間になるのではないか」――気仙沼の漁業関係者が憂鬱そうに打ち明ける。漁獲上限が決められている太平洋クロマグロの不正漁獲がもうじき明るみに出るというのです。

 資源が急回復している太平洋クロマグロの不正漁獲、不正出荷はいま、日本各地に蔓延しています。

違法漁獲、増枠交渉に悪影響も

 不正があまりに多いので、漁業を所管する水産庁や都道府県の水産部門は、裏付けとなる証拠が持ち込まれない

もっとみる
架空業者名で出荷・宮城塩釜港、漁協職員らにもバラマキ・茨城大津港~大型まき網船団による疑惑のクロマグロ取引

架空業者名で出荷・宮城塩釜港、漁協職員らにもバラマキ・茨城大津港~大型まき網船団による疑惑のクロマグロ取引

 やはりそうだったか。そう思わずにいられませんでした。日本一の生鮮クロマグロ水揚げ港である宮城県の塩釜港と、北部太平洋で操業する大型まき網船団の拠点の一つである茨城県の大津港を歩いて、市場関係者から聞こえてきたのは、水産庁、つまり国直轄で管理している大中型まき網漁業によるクロマグロ漁獲のごまかしが疑われる情報です。

 塩釜では市場の運営会社「みなと塩釜魚市場」が、地元の水産問屋の求めに応じて実在

もっとみる
生鮮クロマグロ水揚げ日本一・塩釜魚市場で架空名義取引、税務署調査で確認、漁獲報告漏れを指摘する情報も

生鮮クロマグロ水揚げ日本一・塩釜魚市場で架空名義取引、税務署調査で確認、漁獲報告漏れを指摘する情報も

 宮城県塩釜市の水産卸売市場営会社「みなと塩釜魚市場」が架空の名義による水産業者からの出荷を受け付け、販売していたことが明らかになった。税務署による税務調査で発覚し、実在しない業者の名義で出荷した地元の大手魚問屋も税務署から事情を聴かれているもようだ。

  塩釜は生鮮クロマグロの水揚げ量が日本一の漁港で、水産庁は今年3月、クロマグロ漁獲報告体制が適切かどうか現地を調査したことがある。かねてうわさ

もっとみる
資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ②定置網の混獲を国別上限の別枠に~韓国政府がWCPFCに働きかけ

資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ②定置網の混獲を国別上限の別枠に~韓国政府がWCPFCに働きかけ

 クロマグロがあふれかえっているのは日本の海だけではありません。お隣の韓国でも同様です。

「最近盈徳郡でマグロが1日500~1000匹ほど漁獲される。定置網にかかったマグロが死に、漁民は死んだ状態のマグロを海に放流するほかない」

 2022年7月28日夕、韓国の朝鮮日報オンライン版は慶尚北道盈徳(キョンサンブクド・ヨンドク)の海岸に数万匹の死んだマグロが見つかり行政当局が回収に乗り出した、とい

もっとみる
資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ①沿岸漁業者による放流の記録1906枚

資源急回復で海に溢れんばかりのクロマグロ①沿岸漁業者による放流の記録1906枚

 青森県から行政文書一部開示決定通知書が届きました。令和4年度(2022年度)まで直近5年以内の沿岸漁業者による太平洋クロマグロの放流状況を記載した行政文書の情報公開を請求していたのです。
 
 開示されるのは7つの文書で、合計枚数は1906枚でした。定置網漁業によるクロマグロ放流の記録は令和元年度(2019年度)から4年分、漁船漁業による記録は令和2年度(2020年度)から3年分ということです。

もっとみる
TAC対象のクロマグロ管理「投棄・自家消費分も漁獲報告は義務」と水産庁

TAC対象のクロマグロ管理「投棄・自家消費分も漁獲報告は義務」と水産庁

 太平洋クロマグロのように国が漁獲可能量(TAC)を設定している魚種のことを特定水産資源といい、漁業法では漁業者に漁獲報告を義務付けています。水揚げして魚市場で売ったものはもちろん、漁業者が自分で販売したもの、自家消費したものを含めて漁獲報告をしなければならないのです。

 昨年7月、気仙沼市魚市場で計量後に漁獲上限を超えたことがわかって船にクロマグロを持ち帰ったことが水産関係者に目撃された大目流

もっとみる
計量後、漁獲枠超過分を漁船に返す?クロマグロを船上解体・山分け~気仙沼市魚市場「大目流し網漁船」で発覚 

計量後、漁獲枠超過分を漁船に返す?クロマグロを船上解体・山分け~気仙沼市魚市場「大目流し網漁船」で発覚 

  資源管理の対象として漁獲量が制限されているクロマグロの漁獲量をごまかして消費したり、販売したりする行為が後を絶ちません。大臣許可を持つ大目流し網漁船が水揚げのため寄港した宮城県気仙沼港で未報告のクロマグロを船上でさばいて乗組員が山分けしたことが発覚しました。水産庁も当該漁船の所有会社に事情を聴く準備を進めています。

 この漁船は全長50メートルを超す大型漁船でマグロを獲ることを目的とした操業

もっとみる
クロマグロ漁獲隠し、青森県警が捜査へ~大間漁協などの出荷データ分析始める

クロマグロ漁獲隠し、青森県警が捜査へ~大間漁協などの出荷データ分析始める

「大間まぐろ」で知られる大間漁業協同組合に23日、青森県警の刑事が訪れました。クロマグロの漁獲報告義務違反での任意の捜査です。漁協所属の漁業者の2021年度分の出荷伝票などの提出を求め、持ち帰ったもようです。

 青森県は19日、大間、奥戸(おこっぺ)、大畑町の3漁協で2021年度の漁獲報告義務違反が60トンあったと県議会で報告し、警察にも情報提供していることを明らかにしていました。県警捜査は同じ

もっとみる
大間産マグロのヤミ漁獲、2021年度だけで60トン、産地偽装の疑いも~いまなお全容解明ためらう水産庁・青森県

大間産マグロのヤミ漁獲、2021年度だけで60トン、産地偽装の疑いも~いまなお全容解明ためらう水産庁・青森県

下北半島はIUU漁業の巣窟なのか?

 青森県は19日開かれた県議会農林水産常任委員会で大間漁業協同組合など3漁協の管内で2021年度中に合計59.8トンものクロマグロ漁獲が未報告だったと説明しました。ほとんどが「大間産」として出荷、販売されたものとみられます。

 3漁協とは大間町の大間、奥戸(おこっぺ)の各漁協と、むつ市の大畑町漁協で、いずれも下北半島にあります。下北半島がいわゆる違法・無報告

もっとみる
大間マグロの謎を解く④「捜査官」派遣で未報告が新たに40トン判明か⁉

大間マグロの謎を解く④「捜査官」派遣で未報告が新たに40トン判明か⁉

 2016年には長崎県・対馬、2017年には北海道・松前でヤミ漁獲が発覚したことがあります。当時は水産庁が調査を始めてから1~2カ月後には違反事実の概要を発表し、自治体や漁協に再発防止を約束させました。

 今回、青森県大間町で発覚したヤミ漁獲は、2021年9月から調査が始まっているのにいまだに違反事実が公表されていません。

 大間と対馬や松前との違いはなんでしょう?

 1つは、2018年にク

もっとみる