大臣許可漁船もクロマグロ不正漁獲~気仙沼の流し網「第18一丸」を海保が摘発
気仙沼海上保安署が18日、漁業法で義務付けられている太平洋クロマグロの漁獲量の報告を怠った容疑で大目流し網の大臣許可漁船の船長を仙台地方検察庁に書類送検しました。
大臣許可船のクロマグロ密漁摘発は初
大臣許可漁船のクロマグロ不正漁獲の摘発は前代未聞です。同市内の業者を含む複数の流通業者が買い付けたもようです。
混獲が不可避とされる大目流し網によるクロマグロの不正漁獲は以前から漁業者や流通業者の間で話題になっていました。水産庁は大目流し網漁船の操業実態を混獲、放流した数量を含めて詳しく調査したうえ、しっかりした再発防止策を打ち出す必要があるでしょう。
漁業法違反(漁獲報告義務違反=6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)の疑いで摘発されたのは、地元気仙沼市在住の第18一丸(かずまる)の佐々木夫一(ゆういち)船長です。
不正漁獲は大小あわせ893本
気仙沼海上保安署の調べでは、2023年5月から2024年5月までの間に、クロマグロの小型魚5.7トン(757本)、大型魚4.4トン(136本)マグロを漁獲したのに、水産庁に報告しなかった疑いがもたれています。
第18一丸による未報告のクロマグロ漁獲の操業海域などは表(写真)の通りです。同保安署は昨年夏から内偵を続けていたようで、気仙沼魚市場から遠く離れた唐桑半島の小鯖漁港での陸揚げの様子も多数、証拠として撮影していました。
大臣許可の大目流し網漁船によるクロマグロ漁は、個別漁獲割当(IQ)対象になっています。水産庁が公表している2024年の漁獲割当管理原簿によると、第18一丸は大型魚3.2トン、小型魚1.1トンの割当を受けています。
水産庁は「見て見ぬふり」か
大目流し網漁船は混獲が多いのが特徴で、クロマグロも大量に網にかかることがあります。気仙沼漁港では以前から流し網によるクロマグロの不正出荷を指摘する声があがっていて、地元新聞でも正規の漁獲枠が小さすぎて混獲マグロの扱いに苦慮している漁業者の声が紹介されたりしていました。
水産庁も地元紙の取材にコメントしたりしていましたら、水産物を選択的に漁獲できず、何でも網に入れてしまう大目流し網がクロマグロの混獲管理・放流に苦労し、不正漁獲も横行していることを知っていながら、長い間「見て見ぬふり」を続けていたものと思われます。
混獲でも生きたまま再放流すれば、漁獲から除外することはできますが、死亡個体でも海洋に投棄したり、そのまま陸に揚げて漁獲報告をしないまま不正に販売したりするケースも多くあるとみられています。
昨年2月、青森県警が青森県大間町などの沿岸漁業者が地元流通業者を通じて大量に未報告クロマグロを販売して書類送検された後の出来事ですから、第18一丸からのクロマグロ出荷を扱った販売業者たちは水揚げ場所や数量から漁獲枠外のクロマグロである可能性を疑う必要があったはずです。
報告徴収で流通業者も調査を
今回、気仙沼海上保安署が摘発したのは漁業者のみですが、流通業者による不正への関与がなかったのか、水産庁の協力も得て、引き続き真相を解明する努力が求められます。
漁業法では国や都道府県は漁業者らに対して報告徴収する権限も認められています。青森県の大間マグロ不正漁獲の際は、取り扱った卸売市場や産地の出荷業者に対して、農林水産大臣や青森県知事が報告徴収したことがあります。
「900本近いクロマグロが出荷されていて、流通業者が不正に気付かないはずがない。気仙沼魚市場のブランドをぶち壊しにするような不正だ」(気仙沼市内の水産物流通業者)という怒りの声も出ています。
第18一丸の不正マグロを扱った流通業者のうち少なくとも一社は気仙沼魚市場を運営する気仙沼漁業協同組合の役員ではないかとする情報も地元では飛び交っています。気仙沼での不正漁獲に関しても、漁業者からマグロを買った流通業者らに対して水産庁は報告徴収などにより不正への関与を調べていくことも必要でしょう。
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