見出し画像

織田作之助はいいぞ!!!

事前にいう。私の中のオタクが抑えられず今回は少し長くなった。頑張ってくれ。

皆さん織田作之助をご存知か。

ご存知ない方はそのまま読み続け、ご存知の方はこれを読んでニヤニヤしてくれ。

織田作之助はいいぞ!!!!

織田作之助は簡単にいうと大阪出身生粋の関西人小説家のスーパーナイスなお兄さん。代表作は「夫婦善哉」。私のおすすめは「競馬」「ひとりすまう」。

織田作之助は太宰治や坂口安吾らと並んで「無頼派」と呼ばれて当時人気のあった作家なのだが今や太宰や安吾に比べて知名度がない。このままではいかん。遺憾。

私は織田作之助がとってもとっても大好きなのでみんなも知ろう。(理不尽なオタク)

[1,かっこいい]
まず織田は当時では背が高く色も白くてすらっとしていたらしい。有名料亭の板前だった父親はお客さんや周りからモテモテの男前。そのDNAがばちこん出てたらしく作之助も大層モテたらしい。服装も髪型もモダンで知的で少々人見知りだが陽気な所が愛されたのだろう。

そんな作之助の粋なエピソードを話しちゃおう。作之助の奥さんの一枝さん。色々あってカフェ(今でいうスナック的な所)で住み込みで働かざるを得なかった。そんな一枝さんに惚れ込んだ大学生作之助は2階にある一枝さんの部屋に梯子をかけて連れ出したらしい。ロマンチックすぎ。拍手喝采。スタンディングオーベーション。愛してる。
そんな一枝さん、ご病気で若くして亡くなってしまう。作之助はその後他の女と付き合ったり何だりするがいつも一枝さんの遺髪と写真を持ち歩いていたらしい。心の底で愛しているのは一枝さんただ1人だったのではなかろうか。

一枝さんの葬儀の日の織田の日記を添えよう。(一部私が読みやすく手を加えている)


8月7日
昨夜からの台風で雨がはげしい中を、妻の柩はわが家を出る。
午后一時半。
柩は痛痛しく雨に打たれ、秋を待たぬ一枝の花は今や散り尽くしてしまった。
最後の対面の時、化粧道具を入れたハンドバッグと人形とメロンと私の著書と、映画「還って来た男」のスチールを入れてやる。
メロンは一昨日病気見舞に貰ったまま食べずに終ったもの。
映画は私の著作が原作のもので、よくなれば一緒に見に行こうとたのしみにしていたもの。
今日B.K社の佐々木氏に放送物語の原稿を渡す約束だったが果せず。
放送物語は映画と違い病臥中にも聴けるため、早く執筆して一枝に聴かしてやろうと思っていたのに……この種の仕事は大半病がちな一枝を喜ばせるためだけに引受けて来たのであったが……。
今後その甲斐もなし。
妻なし子なしやるせなし。

(織田作之助 全集 8 講談社より)

[2,病と迫る死]
彼は三高、今の京大に入学した。彼は下町出身で、彼の地元から三高に進学する者が出るなんて前代未聞だったらしい。地元をあげてお祝いをしたとも。でも三高"出身"ではない。理由は彼の体を蝕む病。最後の最後、卒業試験の途中に喀血をしたことで無理矢理療養しなければならなくなったのだ。その悔しさ、むなしさ、つらさは想像にかたくない。病状が落ち着いてから復学したが彼はもうやる気がなくなってしまい退学した。


その後も病状は一進一退を繰り返す。彼の残した作品のほぼ全てが病と共に書いた。そしてその作品の半数は死ぬ前一年半の期間に書かれたのだ。織田には周りにももちろん彼自身も明確にはわからない「必ず訪れる近い死」というタイムリミットがあったのだ。彼にとっては睡眠さえ惜しかった。当時はまだ違法ではなかった目の覚める"クスリ"を直に腕に差し込んで煙草を咥えてひたすら原稿用紙とペンで書き飛ばした。
「自分の中の話をもっと書きたい!!」「読んでほしい!!」「面白い話を!!!」と迫り来る死を感じながらも全てを犠牲にして書いた作品たちをぜひ読んでほしい。


[3,軽快な作風]
先にいったように彼の作品は病の中作られた。しかし読めばわかる、彼の作品は暗くない。
彼の本質は「人を楽しませること」にあると思う。
落語のようなテンポのよさ。馴染みのいい生活感。軽やかな関西弁。人情話やちょっと甘い恋の話、しょうもない男と強い女の恥ずかしい話。勢いのある場面は息をつかせる間もない。病が出てきたとしてもそこへの陰鬱さを感じさせない。それは彼自身がそうであったのと同様に。
彼は雑誌のインタビューに答え、そのメモを記者から「訂正はありますか?」と確認されると話した内容をいくつか訂正をしたらしいが、かえって自分が間抜けに見えるようになおす節があったらしい。彼はより親しみやすく愛される陽気な"織田作之助"でありたかったのだろう。ある種の道化ともとれるが、それが徹底できたのが彼なのだ。

だからきっと織田が言われたいことは単純に
「おもしろかった!!!!」だと私は思う。
彼の悲しい部分、辛い部分、悔しい部分を知っているからこそその徹底された自己演出に泣きたくなる。君は1000%。

他にも語りたいことなど山ほどあるのだが今回はこの辺で。どうせまた織田について話すので。

織田は愛の深い作家だと思う。大阪を愛し、妻を愛し、周りを愛したから、書いた。より楽しんでもらうために、笑ってもらうために、心を動かしてもらうために、一心不乱に書いた。私はそういう彼のスタイルが自分自身のどこかにあるようにも思えるし、憧れもする。だから、大好き。

とにかく、織田作之助は、いいぞ。

あと読みはじめは「競馬」か「ひとりすまう」にしなさい。はじめに「夫婦善哉」を読んで四の五のいうな。あれは飛び値。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?