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『日本SFの臨界点 恋愛篇』読書感想。


『死んだ恋人からの手紙』
まず”金魚あくび姫”というニックネームが可愛い。
宇宙戦争に徴兵されたTTが送る、あくび姫宛の手紙は宇宙からの便りであるために時系列がかなりランダム。
読み進めていくうちに、
そもそも時間の流れって意味があるのか?
なぜ縛られて生きなければならないのか?
など色々な疑問が浮かんでくる。
”生きている間は最新進行形がその人だけれど、死んでからは時代時代における無数の個人が立ち上がってくる”
という亡き恋人TTの言葉が身体に残った石ころのようで、いつかまたどこかで思い返した時、きれいな鈴の音を響かせてくれそうな気がする。


『奇跡の石』
霞食う仙人の所業極まれたり。
超能力者って孤独なイメージがあったので、
超能力町民がみんなで力を合わせて町を守るという設定に新鮮味を感じた。
共感覚で言うとマヨネーズの味がした(嘘)
そんな冗談が言いたくなるくらい共感覚が欲しくなるお話。



『生まれくる者、死にゆく者』
少しずつ自我が生まれてゆく子供と薄れていく死にゆく者の対比が視覚的なのが面白い。

『劇画・セカイ系』
最終兵器彼女のシュウちゃんとちせを思い出し懐かしくなる。
心が壊れそうなくらいの恋しても成就するとは限らない。
その後も人生は続いていく。
まさに劇画。


『G線上のアリア』
伏線回収が美しい。


『アトラクタの奏でる音楽』
1人の歌い手の歌を聴衆に合わせてビート、リズム、音の強弱などを変化させるという実験はもちろん面白い試みだけれど、から恐ろしさも感じた。
そんなシステムが屹立してきたら自分を見失う人が大量発生することだろう。
けれど、それに淘汰されない人が新人類であり、進化するということか。


『人生、信号待ち』
不服に思われた状況が限りなく愛おしいものに変化していき、人生そのものになっていく。
心が温かくなるけど、ほんの少し悲しくて懐かしい。
この短編集で一番好きな短編。

『ムーンシャイン』
私には難解だった。
でも雰囲気は好き。
アニメにされたら少しは理解できるのかな〜
小説だとチンプンカンプンだった。


『月を買った御婦人』
SFかぐや姫。
年老いても思いを寄せてくれる人がいるというのが、年齢的にグッとくる。

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