【小説】神社の娘(第20話 葵、橘平を大いに利用し、橘平、友達の話をする)
「冷静冷静、いつも通りいつも通り、笑顔笑顔、デカい声デカい声…」
向日葵は通勤中の車内で呪文のように唱えていた。眉間に皺寄せ、苦い顔。呪いをかけているようだ。
土曜日、葵に抱き寄せられてしまった向日葵。職場の前の席に座る彼に、おかしな態度を取らないよう自分を落ち着けるのに必死だった。無視はお互いに利益のないことだった。今回は「いつも通り」を演じようと昨日の就寝前に決めたのだ。といっても、就寝は全くできず朝まで考え続けてしまったのであるが。
「主演女優賞、助演女優賞…」