見出し画像


まず最初に私が考えたことは、起訴を免れないということは担当の国選弁護士から聞いていたため、そうなると、起訴されてから保釈請求をし、何とかしていったん留置所を出るということだった。そうして、裁判までの間に何とかしてお金を作り、保証金70万円を支払い、凍結を解除する。そうすれば、滞納中の家賃やカード、消費者金融からの借金、コロナ発生時に地方公共団体から借り入れた緊急小口資金、生活援助資金の支払いも含め、全ては解決する。その頃借金は総額約300万円くらいに膨らんでいた。私の人生の中で家電などのローン以外にこれほどまでに借金をしたのは初めてのことだった。今考えれば、多くの人たち同様に、私の人生もコロナ発生を境に大きな曲がり角を迎えていた。


まずは桃子宛ての手紙を書く。今考えれば、実に情けない話だ。

✉️愛する桃子へ
桃子、元気にしているか?毎日お前のことを考えている。俺は今、留置所にいる。駅でタバコを吸っているところを駅員に注意されたため口論になり、駅員を殴ってしまったためだ。今日起訴された。裁判は10月12日に行われる。実刑が下ると、懲役一年以内、100万円以下の罰金が科せられる。こんなことになって本当に申し訳ない。もう十分に反省をしたので、二度と留置所に入れられるようなことはしないつもりだ。お前に会うのが一年先になるなんてとうてい考えられない。今回逮捕されなければ今ごろは会えていたはずなのに。。。そう考えると残念で悔しくてならない。
もっとも、被害者に示談金80万円を支払えば保釈請求が可能で、すぐにでも留置所を出ることができる。さらに、実刑が下っても執行猶予がつくため、刑務所には入らずに済む。保釈請求には手数料として10万円が必要で、それ以外のお金は不要だ。例えば、保釈金が200万円の場合は20万円の管理費が必要だが、これら220万円は保釈金協会から支給される。
そこでお願いがある。お金を貸してもらえないだろうか?

示談金 80万 + 保釈手数料 10万 = 90万
借りたお金は留置所を出次第、ヤフオクで部屋にある金目の物を売ることによって(一週間もあれば売れるようなものばかりだ)、ビットコインの保証金70万円を支払い、2000万円を手に入れることで返すことができる。別途お前が貸してくれた300万円も一緒に返す。俺の銀行口座を記しておく。

M銀行 U支店
支店番号 : 〇〇〇
口座番号 : 〇〇〇〇〇〇〇〇

桃子、好きだ。愛してる。毎日お前のことばかり考えている。早くお前と暮らしたい。だからお願いだ。助けてくれ。
追記 :
・H市からシンガポールまでの普通郵便の切手代を教えてほしい。
・これまでにもらったかわいいお前の写真をプリントして送ってほしい。寂しくてたまらないのだ。

📙『2022.8.22〜』

さらに今見ると痛々しいが、「桃子と一緒にしたいこと」(📙P6『2022.8.22〜』)という手紙まで送ろうとしていた。しかし、これらの手紙は今に至るまで送られることはなかった。何度お願いしても弁護士がiPhoneを操作してくれない以上、どうしようもなかったのだ。また弁護士はかなりの歳で、呆けていて物忘れが激しく、お願いしたことをほとんど覚えてくれていなかったのだ。しかも弁護士はいくらお願いしても面会は一週間か二週間に一度しか来てくれず、何をするにも一向に話が進まなかった。

🔗💠「誰とも連絡が取れない恐怖」(📖P92『2022.12.14~』)


この記事が参加している募集

ノンフィクションが好き

サポートありがとうございます。カルマ・ショウと申します。 いただきましたサポートは作品を完成させるために大切に使わせていただきます。尚、体や精神を病んでらっしゃる方、元受刑者など社会的弱者の方々向けの内容も数多く含むため、作品は全て無料公開の方針です。よろしくお願い申し上げます。