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美術展観賞記録

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展覧会に行ったときの感想文。Instagramに投稿しているものと基本的には同内容です。
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#Photography

「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」(東京都写真美術館)

「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」(東京都写真美術館)

 戦前~戦後にかけて、小型カメラのライカを手に街に繰り出し、「ライカの名手」として名を馳せた木村伊兵衛。
 その写真は非常に軽やかなテンポに溢れるもの。肖像写真などでは比較的安定感がありますが、自らを「報道写真家」と自称したのはなるほどと。メインの被写体が中央で目立つ隅でカメラマンを怪訝に観ている人をトリミングしていなかったり、素材としての生々しさを残すところはある種報道的だと思いました。

 パ

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「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」(東京ステーションギャラリー)

「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」(東京ステーションギャラリー)

 安井仲治は戦前に活躍したアマチュア写真家。ただアマチュアと言っても、この時代に写真で生計を得ていた者はまだいません。安井は洋紙店勤務を続けつつ、20代ですでに写真展の審査員を複数務め、30代では新聞社主催の講演を行うなど、この道ではむしろ権威的な存在でした。
 20年と決して長くはないキャリアのなか、優しいソフトフォーカスのスナップショットや肖像写真に始まり、モホリ=ナジの影響を受けた前衛芸術的

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「中平卓馬 火-氾濫」(東京国立近代美術館)

「中平卓馬 火-氾濫」(東京国立近代美術館)

 ハイコントラストな白黒写真で知られる森山大道の「盟友」として知られる写真家、中平卓馬。森山との関係性は重要で、特に初期、都市の路上という舞台、モノクロ写真における「アレブレボケ」という、一見乱雑な写真を肯定する「理論」を共有していた時期もあります(今回の展覧会でも中平のポートレートなど、森山の写真も数点展示)。
 ただし、その「理論」が森山にとって座り心地が良かったのに対し、中平はそこからは離れ

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片山真理「CAVERN」(GALLERY ETHER)

片山真理「CAVERN」(GALLERY ETHER)

以前別のギャラリーで観た〈leave-taking〉(2021)〈possession〉(2022)を含む、ここ4年の作品を振り返る本展。自身で手縫いしたオブジェや義足を用いた演出的なセルフポートレイト、またインスタレーションの制作をされており、近年は「身体と作品の関係性、そしてそれらを取り巻く社会について」をテーマに作品等の制作に取り組んでおります。

初めて〈leave-taking〉を観たと

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