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播磨陰陽師の独り言・第414話「ゲームで扱う数字」〈前〉

 ゲーム開発を仕事にしていた頃は、10進数を扱うのは少ない出来事でした。どちらかと言うと16進数と2進数ばかりを扱っていました。
 16進数と言うのは、0~9まで数えると桁上がりせず、A、B、C、D、Eと続いてFで終わる数字のことです。書く時は〈h〉をつけます。これは16進数を表す〈ヘキサ〉のことです。
 普通は2桁で扱うので00h~FFhまでで、10進数で256になります。
「256は切れの良い数字ですね」
 と言うと、多くの人は首を傾げます。
 しかしコンピュータには良くある数字です。
 2、4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、4096などと続きます。今もこれらの切れの良い数字は暗記しています。
 この数字を〈2のベキ乗〉と呼びます。数学的には冪指数《べきしすう》と呼ばれるもののひとつですが、専門的過ぎて、ほとんどこの言葉は通じません。
 昔のコンピュータは、この中の数字の色数で表示されていました。4096色とか聞いたことはありませんか?
 コンピュータの性能を表す数字もここに収まります。たとえばNintendo64とかは64ビット性能と言う意味です。
 ゲーム開発の最後は数字の確認作業です。厚さ5センチほどにプリントされた、ビッシリと16進数を印刷した紙・2セットを、左右に置いて、両手で一枚一枚めくりながら確認する作業です。この作業、慣れていない頃はキチンと一枚一枚確認していましたが、慣れてくると恐ろしいもので、ペラペラとめくるだけで分かるようになるのです。かなりの速度でめくっても、違いがあれば見落としてません。わずかな違い……たとえば、〈カンマ〉と〈テン〉の違いでも見分けられるようになります。ここを記号ではなくカタカナで書いたのは、パッと見、分かり辛いからです。
 仕事に慣れると言うのは恐ろしいもので、画面のどこかを指差すと、その座標を16進数で言えるようになっていました。また、一瞬、キャラ崩れするような現象も、どのキャラか言えるようになっていました。点滅するのは1/60秒だけなのですが、ハッキリと見えたのです。しかし、仕事が終わると、その能力はなくなりました。脅威の特殊能力……期間限定と言った感じですね。ゲーム開発の時は、誰にでもこの能力がつきました。締切に追われて覚醒した力なのかも知れませんね。後半へ続く。

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